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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第二章

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冗談は言う物じゃない

 ギルドに行き、依頼達成の報告をする。



「セラさん。終わったっすよー」


「おかえりなさい、ショウさん」



 ニコッと笑って俺を迎えてくれるセラさん。あの屑どもに見習わせたいくらい出来た人ですわ。



「セラさん。ギルドマスターに会えます?」


「マスターですか? 何か用件でもあるんですか?」


「極秘でね……」


「わかりました。ちょっと待ってて下さい。今、呼んで来ます」



 セラさんはギルドマスターを呼びに奥の方へと歩いていった。俺がぼんやりとしていたらギルドマスターがやって来た。



「私になんの用だ?」


「ちょっと、セラさんと一緒に来て下さい」


「なっ、まさか貴様!! 娘はやらんぞ!!!」


「お父さん!!」



 セラさんに怒られて渋々ついてくるルドガーさん。本当、嫁と娘には弱い。俺は以前ルドガーさんと戦った地下へと向かった。あそこなら広いからアレを出しても問題はない。



「今から見せる物は驚くと思いますけど、あんまり大声は出さないでくださいね」



 俺は二人に注意をすると異空間から骸龍の死体を取り出す。



「………は?」


「これって……」



 二人は揃って同じような顔をする。やっぱり親子だな。リアクションがそっくりだ。



「厄災の骸龍エル・カローンですよ」


「小僧……私に魔法を撃て……」


「了解っす!」



 俺はルドガーさんに言われたとおり、喜んで魔法を撃ってあげた。直撃したルドガーさんは吹っ飛んでいく。すぐに立ち上がりこちらへと帰ってきた。



「少しは手加減をしろ、小僧!!!!」


「いや、魔法を撃てといったのはルドガーさんじゃないですか!」


「アホタレ! 軽くでいいんだ! あそこまで吹き飛ばす必要はないわ!!」



 俺とルドガーさんがそんなやりとりをしてるとセラさんがようやく正気を取り戻した。



「本当にあの厄災の骸龍なんですね…」


「小僧、お前が倒したのか?」


「俺が倒したには倒しましたけど、まあ一人協力者がいますけどね」


「そうか……どこでこいつと会った?」


「初心者用ダンジョンの帰還用魔法陣で転移した先です」


「それにしてもよく無事でしたね……確か推定レベル520って聞きましたよ」


「そんなにレベル高かったんすか!?」


「そんなことも知らんかったのか、小僧? こいつは御伽噺にも出てくるくらい有名な魔物だぞ」


「御伽噺は知ってましたけどレベルまでは知らなかったっす……」



 マジかよ……よく勝てたな俺!



 今回だけは桐谷に感謝しなきゃならないな。あいつがいなきゃ勝てなかったかもしれない。いや勝てなかった。



「それにしてもこいつをどうするかだ」


「そのことでルドガーさんに聞きたかったんすよ」


「売りに出せば確実に街は騒然とするぞ。仕方ない……私の知り合いに鍛冶屋がいる。そいつに頼むか……小僧、これは私が買おう。いくら欲しい?」


「じゃあ……セラさんで」


「えっ……あ、あの……私ですか?」



 ヒュンッと俺の首筋にルドガーさんの大剣が添えられていた。



 いつの間に大剣を……



「面白い冗談だ……私も笑って手元が狂ってしまいそうだ」



 殺される……目が笑ってない



「ハハハ、冗談ですよ…」


「そうか、そうか、すまんな。歳のせいで少し勘違いをしてしまった」



 ふぅ……ガチでやばかった。



 せっかく生きて帰って来れたのに首が身体と離れるなんて嫌だ。俺とルドガーさんが話してる時セラさんはというと軽くトリップしていた。



「でも……ショウさんが望むなら……私……ああっ! でも……まだ私達……ううん……別に……いいのかなぁ……」



 一人ブツブツと呟きながら身体をくねらせている。ルドガーさんがそれを見て俺に振り返る。その顔は不動明王のような顔だった。



「ショウ、覚悟しろ……」


「まだ死にたくない……」


「是夜阿阿阿阿阿阿阿阿阿阿阿阿阿!」



 今までと次元が違う!



「ショウさん……子供は何人欲しいですか? 私はやっぱり男の子と女の子の二人欲しいです……ああ! でも、まだ私達結婚もしていないのに気が早いですよね!! 私ったら何を……」


 一人妄想の世界へと行っていた。俺はセラさんが何をいってるか聞こえなかったががこれだけは言える。



 助けてと……



 その後、セラさんがこちらの世界に戻った時は俺が大剣で貫かれる寸前だった。セラさんのおかげで俺はルドガーさんに殺されずに済んだけど、今回はガチで危なかった。



 とりあえず報酬はエル・カローンの肉を貰った。



「そんなのでいいのか?」


「食べて見たかったっす!」


「お金でも良かったんじゃ」


「お金はたくさんありますからいいんすよ!」



 俺は二人にそう告げて宿へと帰る。



「ただいまーっす!」


「あら、おかえりなさい、ショウ君」


「ただいまっす! セリカさん!」



 俺は宿へと帰るとセリカさんが奥から出迎えてくれる。



 いいなぁ~こういうのって!



 俺が感動してるとドタドタと足音が聞こえて来てマルコが走ってきた。



「おかえりっ! ショウ兄!!」


「おう、ただいま!」



 マルコが俺に飛びついて来る。セリカさんはそれを見て微笑む。



「ねぇ! ショウ兄なんかして遊ぼうよ!」


「おっ、いいぞ! 何して遊ぶ?」


「マルコ、仕事は終わったの?」


「あっ……!」


「はあ~ショウ君と遊ぶのは仕事が終わってからいいわね?」


「はーい! ショウ兄待っててね」



 セリカさんにそう言われて、マルコは廊下を走っていく。



「じゃあ、俺は部屋にいますんで」


「ええ、わかったわ」



 俺はセリカさんに部屋に行くと伝えて自分の部屋へと入る。眠気が襲ってきたので少しだけ仮眠を取ろうと布団に潜り込む。



 少しだけ寝よう……



 寝ようと目を閉じたら、今度はマリーさんがやってきた。



「ショウ! 帰って来たんでしょ!」


「うわっ! なんすか!?」


「うわって何よ!!」


「いきなりノックもせずに入って来るからっすよ!」


「いいじゃないそれくらい! 私とショウの仲でしょう! それより買い物に行くからついて来て!」


「またですか……?」


「いいじゃないやる事ないんでしょ! それくらい付き合っても!」


「わかりましたよ」


「さっすがー! じゃあ早速行きましょ!」



 やや強引なマリーさんに連れられ街へと買い物に行く事になる。


「ぐっ……相変わらずですね」



 今、俺は大量の荷物を担いでいる。合計何キロあるか分からないけど身体強化をしなければならないくらい重い。



「やっぱり、ショウがいると買い物も楽だわ」



 マリーさん上機嫌だな……


 まあ、こんな美人と2人きりだから悪い気はしないんだけどね!!


 と言っても俺を都合の良い荷物持ちにしか見ていんだよなぁ……



 上機嫌なマリーさんの後ろを大量の荷物を抱えて歩いていたら、二人組のガラの悪そうな男がマリーさんに近付いてくる。



「ねぇねぇ君~今暇~?」


「買い物してるんなら、俺達も一緒に買い物するよ~」



 ナンパかよこいつら……


 てか、俺がいるんですけど??


 気付いてないの?



「こんな荷物持ち君なんかより俺らと買い物した方が楽しいぜ~!」



 確かに、誰から見ても荷物持ちをしている使いっ走りにしか見えない俺。だから、ナンパ男達はいけると思っているのだろう。



「あら、それならショウより強い所見してよ」



 へっ?


 何を言ってるんです?


 あれあれ?


 なんか二人組が僕の方に来てるよ?



「そうねぇ。ショウに勝てたら私を自由にしていいわよ……もちろんどんなことでもね……」


「うひょーマジかよ!! こんなガキ、さっさとブチのめそうぜ!」


「へへっ、悪く思うなよガキィ!」



 妖艶な仕草で挑発するマリーさんに鼻息を荒くした二人組が俺に襲いかかって来る。



 おいおい、俺は今荷物持ってんだぞ!


 しゃーないか!



 俺は飛び上がり二人組の顎を蹴り上げる。二人組は変な声をあげて浮き上がりそのまま地面に崩れ落ちる。



「ぐえっ!」


「ほげぇっ!」


「ふう……あっ……」



 気が付いた時には、既に遅し。マリーさんが買った服が地面に落ちる。さっき、飛び上がったせいで袋の紐が切れてしまったようだ。無残にも荷物が落ちてしまった。



「あーーーー!」


「すんません! マジすんません!」


「むう……仕方ない……ショウが奢ってくれるなら許す!」


「えっ! 元はと言えばマリーさんがあの二人を俺に仕向けさせたんじゃないですか!?」


「いいじゃない。細かいことは気にしない!!」



 結局、俺はマリーさんにおごる羽目になってしまった。金はあるし、大した出費でもないので素直に奢ったのだ。



 そのあと、俺達は宿へ帰り夕飯となった。夕飯を食べ終えた俺は風呂に入り部屋にもどるとマルコ、マリーさん、セラさんの三人が待っていた。



 その晩、俺達は四人でダウトをしたのだがやはり三人は姉弟だった。ポーカーフェイスが下手くそ過ぎる。俺は連戦連勝だった。

改訂済み

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