20.やばい。城下は楽しいね。
「ごめんね。なんだか二人っきりになりたくて」
「ふ、二人っきり」
おぉぉぉぉぉ。これは確実シエル様を守るのは私だな。大丈夫安心して、私が誰一人、指一本触れさせやしない。貴方に怪我が及べば切腹する所存だ。まかせてくれ。
でも、なんでわざわざそんなリスキーなことするんだろう。お忍びとはいえ一国の王子様が護衛をまく意味とは……?
いつもはユスタやシエルの従者が二人の世界の外で見守っていた。図書館でも花園のときも、湖のときもずっと、少し離れた場所にいた。いなかったのは昨日一緒にキュウリ食べた時のみ。
「わかった!」
不敵な顔を浮かべたメイリーンに対し
「わかってないと思うなぁ」
と、いつものように天使が述べる
「シエル様!やっぱり色町に行きたいんでしょ!従者とかいると、そゆとこ行けないもんね!」
「ほらねぇ~」
なんだが僕こそわかってきたよ。とにこにこしながらシエルは続ける
「僕は明日帰っちゃうでしょ?メイリーンと二人っきりで誰にも邪魔される事なく過ごしたいわけ。わかる?」
繋いだ手に軽く口づけしながら
「思い出づくりってやつかな」
ふわりと微笑む
…………か、かわいい
何回みても愛らしい笑顔、何回されても照れる行為。コンボを決められたメイリーンは反撃の術をもっていない。一瞬にして全身に血がめぐった状態を落ち着け落ち着けと体に言い聞かせる事しかできない。
「わた、私も欲しいです。思い出。今日シエル様と二人っきり……嬉しいです」
正直な気持ちを一生懸命話す。目も会わせられられいのが心苦しいが、今目を合わしたら血圧上がりすぎて死ねる気がする。そんな勿体ない事できない。死ぬとしたら、今日がおわった後。なんて不吉な事を考えているとシエルもなんだか思案している様子。
カウンターが重いなぁ。これは二人っきりなの失敗か?僕自分を制御できるかな?
「……?さっきの武道大会の話ですか?シエル様出るんですか?」
「え?僕体術得意じゃないんだよねぇ。剣がなかったら腕、腕がなかったら歯で!という脳筋も僕の国の部隊にはいなくもないけどね、対面もあるし……王子が噛みつくってのは」
「そうなのですか?お姉様には噛みつけと教えてありますよ?短剣も扱えない、腕っぷしも弱い。それでは何かあったときに敵から逃げる術をもちません。なので肉を食いちぎるくらいで噛めと教えました」
「うーん。万が一にもそんな状況陥られたらメイリーンの国大部やばいと思うけども。女性はそれで良いのかもね。やっぱそう思うと僕ももうちょっと近戦術磨いた方がいいのかなぁ」
「あ、でしたら、私と稽古……!」
って何いってんだーーー!!!!!
あぶねぇ!やっちまうとこだった!私と稽古したらばれちゃうよ!いや、私も刀使いだから、体術とかはまだまだだから大丈夫か?こう、初心者です!的な?
ってなわけ!とりまゴマかさなければ
「結婚。結婚!そう!結婚してからで、いいのでは?区切りですもの!それまでは今の訓練をしっかりして……」
うぉぉぉぉぉぉ結婚とか何いってるんだぁぁぁぁ。日にちも決まってないのに。がっついてるみたいで。フォローが墓穴しかない!
「いいね。僕と結婚したら、一緒にやろうね」
なにぃ!向こうから誘ってくるとは!流石シエル様一枚も二枚もうわて!しかし、私はやるわけにはいかんのだ!
「いやぁ?その私は、下手ですし足手まといだと思うので遠慮しときますよ!それより、シエル様とい一緒にいる時間の方が大事かなぁって!」
メイリーンは先程から何の攻防か全くわからなくなってしまっているが、ここを切り抜ける事が大事なんじゃないかと思えてくる。
「一緒に稽古するんだから、一緒にいるでしょ」
ほんとだぁ!そこに気づくとは……!くっ……!これまでか?最早打つ手なしか?
「でも、メイリーンをあんまりからかってもかわいそうだし、そうだなぁ……」
「結婚したら、今よりずっと、もっと、僕との時間を甘く過ごしてくれるなら、足手まといと言い張る君を無理に誘ったりしないよ」
こ、ここで向こうが神の一手だと……!?ありがたし!これで『一緒に訓練』をきり抜けられる!
「約束します!結婚したら今よりもっとシエル様との甘いひととき、楽しみにして……ん?」
ちょーっとまって、メイリーン。待つのよ。今私なんて?
「約束だよ。メイリーン」
絡み合う小指。後輪が射すような笑み。天使様が神になられる瞬間なのだろうか。
メイリーンは何も考えられない。最初に出会った日と同じ。脳が熱く溶け思考が停止する。
言える言葉は只一つ
「はい」
小さな声でちょろいなぁと苦笑をもらした声。
メイリーンには届かない。




