勘違い嫉妬
赤葉羽シキが転校生としてやってきた。
それはともかくとして、問題なのはシキの迂闊な発言のおかげで僕と堂城さんが付き合っているかのように思われたことだ。
おかげで、余計な嫉妬の視線が僕に襲いかかる!
「どうするかなぁ?」
旧茶道部の部室で昼食を食べながら、僕は途方に暮れる。
「放っておけばいいでしょう」
そんな僕に反して、堂城さんは動じていない。
いつものように、僕が撮った真白の写真を見ながらお弁当を食べている。
僕も弁当は食べてるんだけどね。
メインはコカトリス唐揚げと竜卵のたまご焼き。
普通のたまご焼きフライパンだと、竜卵一つを使い切るのにすごい時間がかかった。
アイテムボックス内で調理したから実質時間じゃなくて体感時間だけどさ。
だし巻きと甘い奴の二種類を卵焼きマウンテンができるぐらいに作った。
真白にも作ってあるから、今頃は食べているかな。
変な噂がある状態だし、それ以前からそうなんだけど、もちろんここにも二人だけでは来ていない。
厳里とか柚木とか、断鬼の蛇たちに取り込まれた人たちが一緒にいる。
「それより、次の莉菜さん探しはいつにするのかしら?」
「いや……夏休みかな」
また謎バイトで場所を教えてもらえたらいいんだけど、それがなかったらダウジングアイを使って地道に動き回るしかないわけだし。
色々条件を変えて、ダウジングアイが示す線の数を絞ろうとはしてるんだけど、それも難しい。
国内にも国外にそれなりの数があるみたいだ。
どんだけバラされてるんだ、我が姉よ。
「なまぬるい」
堂城さんが厳しい目で睨みつけてくる。
「そのようなことでは莉菜さんの全てが集まる日など一生来ませんよ。いますぐ探しに行きなさい。出資はしてあげますから」
「いや、大学までは行くつもりだから」
畳をダンダン叩く堂城さんには、僕はキッパリと宣言する。
自力で大学に行って親とは完全に縁を切る。
それが目前の野望だ。
異世界転生した姉の遺体がどれだけ特別な力を持っていようと、その方針を変える気はない。
「……意地になる気持ちはわかりますから無理強いはしませんが」
自身も親には思うところがある堂城さんは、僕の意を汲んでそれ以上は言わなかった。
「ですけど、お金がないから探しに行けないという理由だけは許しません。困ったらちゃんと義母である私を頼るように」
「……はーい」
僕が結婚している真白の母親が目の前にいる堂城さん。
なんか不思議だ。
「そういえば」
と、思い出した疑問を尋ねてみることにした。
「赤葉羽シキって、なんでこの街にやって来たのかな?」
そこのところをまだ本人から聞いていない。
ていうか、授業が始まったら、二時間目のときにはもう姿を消していた。
本当に、なにしに来たんだ?
「あの後、家の方に連絡が来ていたようです」
「連絡が取れる関係なんですか?」
「裏東京七区を支配する賀茂家は、現在でも日本の陰陽師を取り仕切る家です。もちろん堂城家のことも知られていますし、東京の家に出資もさせています。なにかが起きた際に回状を回し合うぐらいのことはしてきます」
回状?
また時代劇的な?
メーリングリストではダメなのだろうか?
いや、回状の方が雰囲気は出るな。
「ふうん。それで、なんて言ってきたの?」
「尾羽くんの関係した一件の責任を取らせ、赤葉羽シキは赤葉羽家当主の座を没収。地上勤務に回すため、その研修をこの地で行わせる、とのことです」
「当主の没収?」
「赤葉羽家というのは、裏東京の入り口である裏賀輪区を守護するために作られた家です。血統に意味はなく、相応しいだけの能力を手に入れた者にその座が与えられますので」
「そっか」
なんかすごい怪物ができあがろうとしていたからね。
それも仕方がないのかも。
「でも、地上勤務って、なにをするんだろ」
「それはもちろん」
「もちろん?」
「退魔師よ」
なんでもないことのように堂城さんは言った。
「退魔師って、退魔師?」
「そう。魔を払ったり退治したりする退魔師」
「いるんだ。そんな人たち」
「そう簡単に会えるようなものではないし、霊媒師とか霊能者とか言われている人たちとも少し違う。退魔師は成仏とか生やさしいことは言わない。まさしく退治することを前提に動く荒っぽい連中だから」
それは、シキには似合ってそうだ。
「でも、そんな仕事ってこの辺りで必要なの?」
「……あなた、この前斜九字と揉めたでしょうに」
斜九字というのはナメクジの妖怪が作った組織のことだ。
地元の妖怪ヤクザみたいなものかな?
「ああ、ああいうのに出張ってくるのね」
「そう。大人しくしていれば向こうも暇じゃないから手を出してこないけど、人間社会に手を出してくるようなら姿を見せることになったでしょうね」
「でも、斜九字はあれからおとなしいし」
「武闘派だった月丸を潰したのだから大人しくするでしょうね」
「それなら……」
やっぱり、シキの出番なんてなさそうだけど。
「大きな予兆はなくとも、小さな仕事はあるでしょうね。それにもしかしたら」
「もしかしたら?」
「なにかを企んで、暴れん坊を放り込んで来たのかもしれないし」
物騒なことは嫌だなぁと、そのときの僕は考えていた。
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