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僕の部屋がアイテムボックスになった件  作者: ぎあまん


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外周探索から



 潮溜りに奇形げな魚を見つけた後も色々と正気を疑いそうなデザインの海産物がいた。

 背中に口があるカレイ? とか。

 吸盤が目になっているタコ? とか。

 喋りかけてくるフジツボ? とか。

 ケタケタ笑う蟹? とか。

 その蟹を手掴みして内部に引き込んでいく巨大な二枚貝? とか。

 チンアナゴみたいに空中に伸びていくウツボ? とか。


 あっ、ウツボは海鳥を捕食した。


 すっかりここに来たことを後悔するような光景が続いている。


「ええと、そういえば異界化とか言っていたような?」


 目な鯛を見つけた時に堂城さんが口にしていた言葉が『異界化』のはずだ。


「そうね。説明が必要ね」


 そう言って、堂城さんが教えてくれた。


「この世界には霊力や妖力というものがあるの」


 それは前に聞いたことがある。


「それらを持っていると、異界化ということができるわ。規模の違いがあるけれど、例えば心霊スポットとか事故物件とかいうものも異界化の一つよ」

「心霊スポット……」


 なんか急に安っぽくなった気がする。


「斜九字の結界は尾羽くんも体験したのだったわね? あれもそう」

「あ、ああ、あれね」


 あれは命の危険があった。


「結界というものにも色々あるけれど、要は力の持ち主の都合に合わせて簡易的な世界の書き換えが行われたということ。その力の源が霊力や妖力。おそらくだけれど、莉菜さんのアイテムボックスというものも似たような考え方のはずよ」


 なるほど。

 言われてみればそうかもしれない。


「ここはこの世にあってこの世にない場所、だからおかしなことも色々起きる。出現の条件が例の依頼の期間中だけなのでしょうね」

「でも、出現しているなら動力源みたいなのもいるのでは?」

「そこまで危険な存在ではないしょうね。その辺りももちろん確かめたのだし」

「ああ、なるほど」


 交渉時、堂城さんは何度も危険手当を話題にしていた。

 だけどフードスーツさんはその部分を認めなかった。


「もしも危険なことが起きたら、その時には存分に追加報酬を請求しましょう」


 堂城さんは黒い笑みを浮かべると、止めていた島巡りを再開させた。

 島は洋館以外に見るべきものは本当になかった。

 建物以外の土地は全て波で削り取られたかのようになっていて、船着場以外の場所は全て岩だらけ崖のみという状態だった。

 途中で方向転換するということもできず、ちゃんと一周して船着場に戻らなければ洋館に向かうこともできないという状況だ。


 なので、進んでいくしかない。


「あら」

「うわ」


 先を行く堂城さんがそれを見つけ、次いで僕もそれを見た。

 洞窟があった。

 崖の割れ目のような入り口があって、そこに岩礁の隙間を伝って波が出入りしている。


「洞窟ね」

「そうだね。え? もしかして、入るとか?」

「まさか、潮が満ちたらおしまいよ」

「だよね」


 ああ、よかった。

 調査のために入るって言われたらどうしようかと思った。


「もう大体わかったから」

「え?」

「?」


 僕が驚いていると、堂城さんが首を傾げる。


「真白、あなたはわかっているわよね?」

「え? あ、はい。なんとなくですけど」

「さすがは私の真白ね」


 ジャケットの隙間から顔を出した白蛇状態の真白に、堂城さんが身を捩る。


「そう。尾羽くんはわからないのね」

「はい、旦那様はわかりません」

「なに?」


 なにか僕が認識できていないなにかがあるらしい。

 まぁたぶん、霊感的ななにかなんだろうけど。


「……潮の流れが変わってきたみたいだから、そろそろ急ぎましょう。説明は後で」


 堂城さんにそう言われ、僕たちは洞窟の前を通り抜けていく。

 波と一緒に風が出入りしているのか、荒々しい笛みたいな音がした。


 船着場に到着し、置いておいた荷物を抱えて洋館に向かう。


「そういえば、随分と大荷物ね」


 僕が持ってきた荷物を見て堂城さんが言う。

 うん、いまさらそんなことを言うのは、船の中では真白に夢中だったから。


「そりゃあ、もしかしたら四日も泊まることになるんだし」


 着替えとかいるよね。

 あと、食料とか水とか。

 


「え?」


 食料という言葉で、堂城さんが固まった。


「いや、洋館だけど、中に人が住んでいるとは言われていないから」


 もし誰もいなかった時のために、保存が効きそうなものを見繕って弁当を作ったり、保存食を用意したりした。

 水も2Lペットボトルでたくさん。

 鍛冶修行で鍛えたおかげでそんなに重くないけど、けっこうな重量だ。


「え?」


 堂城さんはまだ現実に追いつけていない。

 交渉の時は、依頼内容の事ばかり詰めていたからね。

 横から追加質問するのもなんだかな〜と思って勝手に用意したんだけど。


 堂城さんの荷物は、たぶん着替えとかの普通のお泊まりセットぐらいだよね、あれ。


「まぁ、もしかしたら余計な気を回しただけかもしれないし」

「そ、そうね!」


 ちょっと気を取り直した堂城さんと洋館に向かって歩く。


 そして予想通り、洋館は立派な廃墟でした。


 

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