GWの予定
「というわけさ」
「そんなことが」
アイテムボックスでのことを話すと真白は驚いていた。
「真白が心配していたのって、やっぱりそれだったの?」
「ええと、たぶんそうです」
親子丼をスプーンで食べながら真白が頷く。
「ましろとしてはあのバイトでなにか不都合があったとしてもお守りできるという自信がありました。ですが、帰るまでの間にどうしても取りきれないものがあったのです」
「ふうん」
それがあのエクトプラズムだったのかな?
「ましろが未熟なだけなら父様や母様にお願いすればいいのですけれど、依頼を持ちかけてくる相手が相手なので、あるいは取りきれない業を旦那様に背負わせてしまったのではないかと心配になってきて……」
それで落ち込んでいたっていうことか。
「ちゃんとそう言ってくれたらいいのに」
「勝手に話を進めて、それでやっぱりダメだったかもなんて」
「ああまぁ、言い出しにくいよね」
でも、やっぱり説明は大事かも。
「今回は姉のアイテムボックスが優秀だったからなんとかなったけど、次からはちゃんと説明をちょうだい。それでリスクを共有しよう」
危険の存在を知ったからといってなんとかできるとは限らない。
ぶっちゃけ、大半がなんとかできないかもしれない。
そもそも、姉の遺体を探すという行為がすでに一般人には及びもつかないリスクを呼び込んでいる。
だけど、知らないままというのはやはり良くないと思うんだよね。
「あと、僕はずっとこんな感じだから、もしも真白がこんなのは嫌だっていうんだったら」
「それは絶対にないです!」
ビシリと真白が断言した。
「ましろは旦那様と添い遂げるのです!」
「ああ……うん、ありがとう」
口の周りに出汁卵とご飯粒が付いていなかったら、惚れていたかもしれないね。
とりあえず口元を拭いてあげた。
そんなこんなでその日が終わり、翌日は学校に向かう。
「おはよう尾羽くん」
「あ、おはよう。堂城さん」
先に教室に来ていた堂城さんに朝の挨拶をされた。
以前なら堂城さんの方から声をかけられるなんて絶対にあり得なかった。
だが堂城さんにとって僕は『憧れの人の弟』で『愛娘の夫』だ。
自分から挨拶をする価値はあるらしい。
つまり僕にとって、堂城さんは『義母』ということになる。
同い年の義母とはこれいかにと思ってしまうけれど、それが事実なんだから仕方ない。
とはいえ戸籍上ではいまだに他人ではある。
これって異類婚になるんだよね?
戸籍上での僕は永遠の独身男性であることが確定したのか。
まぁ、結婚に夢とか希望とかを抱いていたわけじゃないから別にいいんだけど。
「そういえば尾羽くん、もうすぐゴールデンウィークね」
「うん? ああ、そうだね」
堂城さんがまさかの会話を続けてきた。
この場合の裏の意図がどこにあるかを僕はすでに知っているのだけど、話を盗み聞きしているクラスメートたちはそんなこと知らない。
周囲からの視線の圧が明らかに増した。
俺は聞き耳を立てられているのを意識しながら、鞄の中身を机の中に移動させていく。
「もしよかったら……それはなに?」
何かを提案しようとしていた堂城さんは、僕の手にあるものを見て瞳を険しくさせた。
「なにって……」
手にあるものを見下ろして、そこに入れた覚えのない封筒があることに気付いた。
だけど、封筒そのものには覚えがある。
無味乾燥な白い封筒。
「これは……」
と言いかけたところで堂城さんは身を乗り出してその封筒を取って行き、その中身を広げた。
教室の空気がざわッとした。
『あの堂城さんが、尾羽くん宛の手紙を奪って読んでいる⁉︎』
『これってもしかして……アレ?』
『え? まさか……』
『でも、もしかして……本当に?』
無音の会話が教室中を行き交い、そしてなぜかそれを僕まで共有できてしまう。
これは一体、どういう能力の発露なのだろうか?
「……話があります」
中身を読み終えた堂城さんはすっくと立ち上がると、僕の手を取って教室の外へと引っ張っていく。
途中で出会った担任に、「学校内にいますのでお気になさらず」と言い、担任は「わ、わかったよ」とわかっていない顔で素直に応じている。
完全に貫禄負けしていた。
先生、そこは教師として止めて欲しかったよ。
そして連れて行かれたのは、旧茶道部室。
畳のある部屋で二人正座で向かい合う。
真ん中には、あの封筒の中身。
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いつもニャンゴト・サービスをご利用いただきありがとうございます。
さて、本日は尾羽様にお仕事のご依頼がありましてお手紙差し上げさせていただきました。
仕事内容『GWを利用した短期調査』
報酬『情報(以前にご提案いただいた案件に関係します)
指定期間『5月3〜6日』
お返事はこの手紙の前で口頭にていただくことができます。
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この間の真白の提案を考慮したとてもありがたい内容であるのだけれど、どうして学校の鞄に忍び込ませたのか。
前にみたいに玄関に置いていてくれたらよかったじゃないか。
「さあ、説明しなさい。どうしてこんな危険な存在に目をつけられているのかしら?」
堂城さんの冷たい視線が僕に突き刺さる。
以前に斜九字のナメクジ妖怪たちを凍えさせた霊気が溢れて、旧茶道部室に満ちようとしている。
とても寒い。
凍るか喋るかの二択を迫られて、僕はどうしたものかと悩んだ。
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