ワイバーンステーキ
学校の中が少し静かになり、僕としては嬉しい限り?
疑問系になってしまうのは、なにかが解決したわけではないということ。
姉の遺体にはなんだかとんでもない希少価値が付属して、しかもバラバラになっているという事実が確定してしまった。
僕はただ、姉の遺体を探したいだけなのに。
もしかしたらそうなのかなとは思っていたのだけど、それが本当になってしまうことが嬉しいわけではない。
面倒なんてできれば少ない方がいいに決まっているんだ。
学校から帰宅した夕暮れにアイテムボックスに入る。
アイテムボックスの整理をしながら、これからどうしたものかと考える。
一番近くの姉の遺体の場所は確定した。
清十郎さんの手元に残してしまったけど、堂城さんが見張っているのだからなくなったりはしないだろう。
それを全部探すのか?
途方もないことになってきたなぁ。
とは思うのだけど、それで諦めたかというとそういうわけではない。
バラバラというのが気に入らない。
揃っていないというのが気に入らない。
集められるだけ集めてしまいたい。
少なくとも、ダウジングアイで見つけられる限りは見つけたい。
その気持ちは止められない。
「ああもう、本当に姉ちゃんは整理が下手すぎる」
「なんでいま、いきなり愚痴られたの⁉︎」
「姉ちゃんが悪いから」
「ふうんだ! そんなアキヤはこれを喰らえ!」
そう言った瞬間、僕の前に山となって積まれたのは翼竜?
プテラノドンチックな姿のこれはワイバーンだと、リンクしている姉の知識が教える。
「これは?」
「移動中に大発生しているのを見かけたから退治してたの。皮と肉と嘴と尾っぽの剣骨っていうのに分けてね」
「ワイバーン……これって竜なの?」
「類別としては亜竜……竜っぽい別の生物だね。竜はどちらかというと精霊に近い存在だから。そうじゃないと竜の食欲で地上の生物が全滅しちゃうよ」
「なるほど」
空を飛ぶことに特化したワイバーンは全体的に骨と皮ばっかりで肉は少ない。
ただしそれはサイズ的には、というだけのことで、それでも一体で100kgとかの肉が取れる。
ひたすらに解体を続けていっている間もワイバーンは追加されていき、最終的に百体を超えた。
それをやり切った。
いつものことだけど、肉体の疲労がないのは不思議だ。
「血と内臓は?」
「心臓だけいるかな。後は食べられないし、使い道はないかなぁ。捨てといて」
「は〜い」
それはよかった。
内臓の処理って面倒なのよね。
捨てるで済むならそれに越したことはない。
廃棄は最初からあったゴミ箱に放り込めばそれで終了だ。
どんな理屈かわからないけれど、それに入れればどんなサイズのものでも簡単に消滅する。
ただし、姉の承認も必要なようでしばらくは箱の中に止まっていることもある。
その時の光景は、けっこうグロい。
なにしろいろんなものが本来では入らないだろうゴミ箱の中にみっちりと収まっているのだ。
その圧縮された光景は、表現が難しいがとにかくグロいことは間違いない。
というわけで放り込まれるワイバーンをひたすら解体していく。
ちなみに、ワイバーンの肉は可食だ。
また食材が増えた。
というわけで、今日はワイバーン肉でなにかを作ろう。
まずは肉の切れ端を焼いてみて塩胡椒だけで味見。
あっ、美味っ!
ささみ肉みたいにさっぱりとしつつ、適度な噛みごたえがあり、そして噛むと旨みがジュワッと溢れてくる。
このままでも十分に美味いな。
ううん、どういう風にしたらいいんだろう?
悩んだ末にステーキにした。
でかい肉ってそれだけでロマンだからね。
塩胡椒だけのものと、照り焼き風で焼いたものの二種類を僕と姉の二人分用意しておく。
後は真白用に一口サイズで切り刻んだものを作って、部屋に戻る。
学校に付いてこないで部屋で待っていた真白は、食事時には白蛇の姿に戻る。
たとえその前に、堂城さんにもらったスマホでヒーロー物を観ていたとしてもね。
普通に人間の食事も食べられるそうなのだけど、一緒に食べるよりも僕に食べさせてもらう方がいいらしい。
ううん、甘えん坊さんだ。
とはいえ、学校にいる間は部屋に放置していることになってしまうので、それぐらいのことは受け入れる。
「なんですかこれ! すごく美味しいです!」
「それはよかった」
ワイバーン肉がいままでのと違うことに気付き、真白は大興奮だ。
「はい、次」
「あ〜ん。これはなんのお肉なんですか?」
「秘密のお肉」
「もう、教えてください!」
「おかわりは?」
「いります!」
そんな風に真白の質問をやり過ごすけど、いつまで秘密にしていればいいのやら。
いや、いい加減なところで明かしたいのだけど、こうなると明かすタイミングが難しいな。
どこで話そうかなぁ?
いや、いま話しちゃうか?
真白がアイテムボックスに入れたらいいんだけど、食事が終わったら試してみようかな?
いや、どうかな?
それはともかくワイバーンステーキだ。
塩胡椒だけはすでに味見しているので、どんなものかは想像が付いている。
ナイフとフォークで切って大きめの肉を口に入れると、しっかりとした噛みごたえと旨みの放出がすごい。
なんか旨みでクラクラとするぐらいだ。
照り焼きの方は塩胡椒だけの淡白さを補っている。肉も少し柔らかくなっているし、照り焼きのタレの甘さと肉の旨みが合わさって、これまた美味い。
うん、満足だ。
「旦那様の用意してくれるご飯は、食べるとなんだか霊力が増したような気がします」
食べ終わったところで真白がそんなことを言った。
ううん、それは案外、気のせいではないかもしれないね。
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