祠バスターズ
お前、あの祠壊したんか!
そんなフレーズが頭の中で強制リフレインしている中、僕は堂城さんの顔を見た。
ひどく緊張した顔を浮かべている。
ネタを口にしていい空気感ではなかった。
そんな堂城さんに、立花さんが声をかける。
「お嬢さん」
「壊した連中のことは任せるわ。私は、支度をするから」
「わかりました」
立花さんは頷くと応接間を去って行った。
「尾羽くん、悪いけど後で送らせるから、ここにいて」
「それは、ありがたいけど……柚木さんたちはどうなるの?」
「責任を取らせることになるでしょうね」
「責任て……警察とか、学校とか、親を呼ぶとか?」
「そう聞こえた?」
堂城さんの僕を見る目は嘲笑めいていた。
そういう、常識的な話ではないと、その表情が暗に語っている。
「違うんだ」
「そういうこと」
ソファから立ち上がった堂城さんは深いため息を吐いてから、改めて僕に話しかけた。
「莉菜さんの弟だから無駄かもしれないけど、なにもしないでね」
「え? 待って、姉は一体なにをやらかしたの?」
本当に教えて欲しい。
なのにそのことは答える気がないという。
だったら匂わせもやめてくれよと言いたいんだけど、堂城さんはさっさと応接室を出て行ってしまった。
立花さんたちももういない。
たぶん、柚木さんたちを捕まえに行ったんだろう。
では、堂城さんはなにを?
考えてみたけれどわかるはずもなく、僕は待つしかなかった。
ダウジングアイをかけて姉の遺体の方向をたしかめてみたけれど、変わらない。
変わらないんだけど……。
じっと確認していると微妙な変化があることに気付く。
線は一本。とても濃い線が柚木さんたちが向かった方向に伸びている。
だけど、線の根本、ダウジングアイのグラス面部分で淡い線が花開くように伸びているような気がしてならない。
「堂城さん」
試しに探し物を堂城さんに変更してみるとよりはっきりとした線がこの屋敷の奥に向かって伸びていった。
「これってどういうことかなぁ?」
ダウジングアイを外しながら呟く。
一つ、推測はあるのだけれど、できればそれは現実であって欲しくないから言いたくない。
わけがわからない状況に困ったままでいると、堂城さんが戻ってきた。
巫女衣装に変わっていた。
「逃げなかったのね」
「逃げて付き纏わられる方が嫌だったんだけど」
こっちは同じ学校に通っているんだし、同じ市内住みなんだから、逃げたって限界がある。
とりあえず僕は無事っぽいんだから、ことの成り行きを見守った方がいいっていう判断だ。
「やっぱり姉弟ね」
堂城さんの硬い表情がわずかに綻んでいるような気がする。
そんなに似てるかなぁ?
「それで、なにをしに行くの?」
「祠の怒りを鎮める儀式をしないといけないの」
「ふうん。話の流れからして、堂城さんは祠に住んでいる蛇神様に気に入られていて、お嫁さんになっているとかいうのだったり?」
伝奇物だとなんかお約束な気がするんだけど……。
「ええ、そうよ」
認めちゃった。
「だから分家の娘だった私が本家に住むことになったの」
「ええと、じゃあ。その本家の人は?」
「東京で会社を営んでいるわ」
堂城さんが言った会社名は僕でも知っているような有名企業だった。
「蛇神様のおかげで栄えているってこと?」
「そういうことね。だからタチキは特別な場所なの。だから、尾羽くんもこれ以上は深入りしないでね」
「僕は姉を、場合によって姉の遺体を探しているんだ。それだけなんだよ。堂城さんは本当になにも知らない?」
「知らないわ。恩はあっても普段から付き合いがあったわけじゃないもの。ここに莉菜さんはいない。それはたしかよ」
そう言うと、堂城さんは応接室を出ていく。
「帰ってもいいけど、奥には入ってこないでね」
応接室の障子が閉じられ、廊下の向こうで堂城さんが外に向かう音が聞こえてくる。
「……できれば僕だってそうしたいんだけど」
一人になった応接間で僕は呟いた。
いや、柚木さんたちだけなら、知ったこっちゃないって話なんだけどさ。
だけど、姉の遺体に再変更したダウジングアイの反応は、やっぱりあの山の中に向かっているのだ。
たすけには行かないけど、この線があるいはこの山を通り抜けているのだっていう確証が得られない限り、入ってみるしかない。
「行くか」
ジャケットに隠していた妖刀・風魔魂を触り、僕も外に出た。
『強化ジャケット:【武器隠蔽】【防御力強化+3】【速度補正+2】』
『強化ズボン:【防御力強化+2】【筋力補正+1】【速度補正+3】』
今日着ているジャケットとズボンも僕が作った。
姉ほどじゃないけど、鍛冶修行のおかげか欲しいスキルを狙える方法もわかってきた。
もうちょっと+数値で上を狙いたいんだけどなぁ。
とはいえ、実感できる場面が少なくて、別にそんなにこだわる必要はないんだけど、それを言い出すとそんなもの作らなくてもいいじゃんとかになる。
そこは趣味というかこだわりの範囲になってしまうかもしれないけど……服とか下着とか自作できるようになったら強いよね!
しかも素材代は姉持ちという。
この調子で生活に役立つ魔法とかも手に入れたいよね。
魔法、使えるようになるかな?
ともあれ、いまは忍者になって行ってみようか。
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