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僕の部屋がアイテムボックスな件  作者: ぎあまん


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そこに導かないで



 そして土曜日。

 学校が休みなので僕は自転車に乗って出かけた。

 目的地は、ダウジングアイが示す線の向こう。

 とはいえ自転車を走らせている間、視界で線にあっちこっちされたら迷惑なので、時々立ち止まってからダウジングアイを使って方角を確認するということを繰り返して進んだ。


 ダウジングアイの示す線は道とかを考慮してくれないので、何度か遠回りとかさせられたし自転車で行くには明らかに辛い山道に入ってしまったりした。

 とはいえ、鍛治修行で身についた筋力は腕だけじゃなくて足にも反映してくれているみたいで、坂道も苦労なく進むことができた。


 異世界食事による魔力の充実がステータスに影響している可能性もある。

 自分でステータスを確認できないからわからないんだけど。

 ただ、こっちで当たり前の感じに強くなっていないのはわかってるんだ。

 厳里兄の手やらを握り潰したけど、別に僕の体はゴリゴリのマッチョメンになっているわけじゃないからね。


 その辺りどうなっているのか確認してみたいんだけど、わからないんだよね。

 姉ちゃんには「成長してるみたいだし、その内に自分で確認できるようになるかもね」とか雑な感じに言われただけだし。


 ダウジングアイで方角を確認し、マップアプリを確認しつつ道なりに進んで行った結果……僕はなぜか巣馬子町に入り込んでいた。


「なぜ?」


 いや、待て待て……まだ慌てる時間じゃない。

 この道を進めば巣馬子町を通り抜けることになるわけだから、目的地はそっちかもしれないわけで……。

 県道に沿って自転車を進めつつ、分かれ道があるところでダウジングアイを使って方角を確認をする。

 ダウジングアイの示す線は、明らかに山の中へと向かっていた。

 その道は山に受け止められて先がない。

 そしてその先の住所は『巣馬子町立木』になっていた。


 オーノー。


 いや、まだ可能性はある。

 線は道なりに場所を示してくれているわけではないわけだから、本当の目的地は山の向こうという可能性もある。


「ええと、その先になると……」

「尾羽くん?」


 マップアプリをぐりぐり弄って確認していると、声をかけられた。

 びっくりして顔を上げると、そこには車から降りてくる一団がいた。

 その一人、僕に声をかけたのは柚木言子だった。


「柚木さん」


 知らないふりをして自転車を走らせればよかったかもしれないけれど、僕の手はスマホを握っていたし、向こうは完全に僕をロックオンして近づいてきていたしで……とにかく逃げるタイミングを逃してしまっていた。


「来てくれたんだ!」


 駆け寄ってきた柚木さんは、満面の笑顔で僕の腕を掴んだ。


「いや、偶然」

「またまた……ありがとうね」


 こちらの言い分を聞く気ゼロな彼女に捕まり、しまったなと思うがもう遅い。

 まさか、本当にタチキの秘密を探りに来るとか、しかもこんなに早くとか、思うはずもない。

 なにより、僕自身がここに導かれてしまうなんて思ってもいなかった。

 考えているうちに、車から降りてきた他の三人も僕のところにやってくる。


 運転手は車にいたまま……いや、走り去っていった。

 ここにいる誰かの家族とかか?

 運転できてるんだから当たり前なんだけど、年上に見えた。


「え? 誰そいつ?」

「自転車でここまで来たの? すげぇ」

「なに? 地元なの?」


 なんかガヤガヤと話しかけてくる。


「尾羽くん。仲間だよ」


 待って巻き込まないで。

 そう思うのだけど、柚木さんは勝手に僕の紹介をして仲間にしていく。


「いや、違くて……」


 と、言ったものの、こっちの探し物に関して説明する気になれない。

 まぁいいか。

 どうせ立木村の中には入らないといけなかったみたいだし。

 いやでも……どうせなら一人で静かにこっそりと潜入したかったなぁ。


 自転車はこの場に置いて、歩いて柚木さんたちと立木村に入ることになった。

 山の間の田園風景が広がっている。

 県道から分離した一本の道が山の麓に向けて伸びていき、その左右に家々が並び、少し離れて田園風景がある。

 とはいえ田んぼや畑の世話をしている人が少ないのか、雑草に埋もれてしまっている所があちこちにあった。


 柚木さんが連れてきたのは同じ2ーDのクラスメートらしい。

 女子は柚木さん一人。

 残りの三人は男子。

 三人ともが柚木さんを見ている。

 柚木さん狙い?

 なんなのお姫様的な立ち位置なの?


 とりあえず、変な敵対意識とかされたくないので、隙を見て三人にひっそりと声をかけた。


「言っとくけど、僕は柚木さんにその気はないからね。変な勘違いはやめてね」

「はぁ? そんなの気にしてないし!」

「俺だって、厳里が心配なだけだし」

「関係ないよ」


 絶対に関係がある顔でそんなことを言っている。


「じゃあ、なんでここにいたんだよ?」

「探し物があってうろうろしていたらここに着いたんだ。それより、そっちは誰か立木村に詳しい人はいないの?」


 僕のことは気にしないで欲しいので質問で方向修正を試みると、一人が立木村の説明をしてくれた。


「立木村というか、この周辺には古くから蛇神信仰があったんだ」


 と、メガネをかけた一人が言う。


「いまの巣馬子町全体を取り仕切っていた大地主のところにある昔話で……」


 昔、この地に大きな流行り病が起きた。

 大勢の人々が亡くなり、その中には大地主の家族もいた。

 そんな時、旅の僧がやってきて大地主に告げた。


「いま、この辺りに蔓延している病は池に住む妖物のせいだ。退治する代わりに私を崇めなさい」


 僧の顔は、まるで蛇のようだった。

 流行り病が治ることを条件に大地主が承諾すると、僧は件の池がある山へと向かった。

 程なくして集落全体に悲鳴が響き渡った。

 大地主が数人と確認に向かうと、そこにはたしかに巨大な蛙の死体があり、その側にあの僧がいた。


「約束は守られよ」


 僧はそれだけを告げると、大蛇に姿を変えて山の中に姿を消した。


「それから、蛇神の祠を作って祀ったそうだよ。後、その蛙には大きな角があって鬼蛙って呼ばれていたみたい。だからその池があるこの周囲は『鬼を断つ』で断鬼たちきって名前になって、戦後に立木って名前に変わったらしいよ」


 メガネの説明はそこで終わった。


「それなら、君たちはこれからどうするの?」

「とりあえず、その祠を見にいくつもりだよ」


 と、別に一人が自信満々に言った。


 いや、祠に厳里はいないと思うけど?

 なにしに来たんだろ、この人たち?


 厳里を探しにきた?

 タチキの秘密を暴いて堂城さん人気に泥を付けたい?

 ただの肝試し?


 わけわかんないな。

 

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