エピローグ
英雄とその妻二人一組の物語は、まだ多く残されている。それらを全て語る前に、一度話を閉じさせてもらおう。
少なくとも、一つだけは伝えらておきたい。
歴史は語る――
英雄とその妻は、幾多の苦難に見舞われながらも、幸せな家庭と街を築いたと記録されている。
◆◆◆
詩人は謳う。英雄譚の先にある営みの唄を。
二人の日々は続いていく。
愛した人だけをその腕に抱いて生きていけるのは幸せだろう。けれど、英雄にそれは許されなかった。
彼には愛した人が残した街と、彼に希望を見出した人々を背負って生きていかなければならなかった。
けれど、その旅路は孤独ではない。
肩を支え、時に背中を押してくれる人が居た。
金龍の都には伝説が残っている。
争いを調停した龍の身は橋となり、その角は聖剣となる。
眠りについた聖剣を引き抜いた英雄は、大地の繁栄にその身を捧げた。
やがて、役目を後の世代に引き継いだの後、彼らは眠りにつく。
――幸せに生きたと――
その痕跡だけを残して。
今でも、橋の南側には聖剣が大地に刺さっている。
その対岸――北の大地には、英雄の墓。そして、寄り添うように妻たちの墓が残っている。
《了》
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