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男の甲斐性

さて、そうして…

ダリルさんは家を探している。


迷子ではない…勿論


婚約までして、宿屋住まいもなかろうと

手頃な家を買うことにしたのだ。


ラトゥール侯爵家の屋敷が、その気になれば

あるのだが…

侯爵家なので、再興を決めても

はいっ、今日から住みます…とはいかないし


侯爵家再興はまだ先のことと考えている。


そんな訳で家だが…


冒険者以外の事はあまり得意ではない…

ちょっと困っていた。

すると、思い付いたのが、ルート君だ。

確か家を買って母親を呼び寄せると言っていたはずだ。


ルート君は家を見つけるまでの間、

メリッサの家に厄介になっている。


ダリルさんとルート君という

不思議な取り合わせで、不動産屋に行く。


「あまり大きな家だと使用人が必要になるしなあ…」

「でも、小さいと子供が生まれた時に困りますし…」

「ルートはお母さんが、一緒に住むしな」

「ダリルさんは、そのうち侯爵屋敷が…」

「……………」

「……………」


二人共に、考えがまとまらない。

男の甲斐性なので、変な物件を掴む訳には

いかないのだ。


「大体…場所もどの辺にするか…ルートは考えてるか?」

「下町過ぎても、物騒ですし…でも、ギルドから遠いのも不便ですね…ダリルさんこそ、王都に詳しいのでは?」

「俺は七歳から寄宿舎で、あとは旅か、宿屋しか知らないんだ」

「僕も同じようなものですよ…」

「「……………」」


冒険者以外は、意外と世間知らずな二人だ…

不動産屋はベルナール侯爵ご推薦なので

信用できるはずだ。


「うーん、ご主人、冒険者ギルドから、あまり遠くなくて、買い物にも便利で、夫婦とあと何人か住めるような、おすすめの物件はあるか?」


とりあえず不動産屋に聞く。その調子だ。


「はい、では、こちらをご覧下さい」


ご主人は紙束を取り出し、テーブルに広げる。地図と物件の間取り図だ。

ふむふむと、二人共覗き込む。


「王都は古い街ですが、計画的に造られた街です。同じような場所には、大体同じ大きさで、間取りが少々違う建物がございます。」


なるほど…そう言うものかと。


「風呂は絶対に必要だな」

「寝室は三部屋以上ほしいですね」

「厨房には魔道具が置ける広さが要るな」

「書斎があれば…」

「小さくても庭はほしいな」

「冒険者なら装備の収納も…」

「収納は多い方がいいか」


なかなかノッてきたぞ…


「いくつかご希望の物件がございましたら

ご案内させて頂きます」


ダリルさんにルート君、頭を寄せて間取り図の紙束を見て…


「こいつは、良いんじゃないか?」

「これも良さそうです」

などと…いい感じに…5、6軒見繕う。

「では、ご案内させて頂きます」


不動産屋の馬車で出掛けて、内覧する。

どの物件も二階建てで小さな庭付き。


一軒目は、あれこれ言いながら…お風呂や厨房、寝室、書斎になりそうな部屋を見ていく

ダイニングやリビングもある。二人共うんうんと頷きながら確認する。

二軒目も、ふむふむ…部屋数は同じようなもので、少し間取りが違うかな。これはこれで良さそうだと話す二人。

三軒目は、ふーん…まあ、そうだな、いいんじゃないかなと。

四軒目で、うん…こんな感じか。

五軒目は、もう、疲れてきて…

六軒目には、もう…いいや…


不動産屋に戻る。

「如何でしたか?どの物件もすぐお住まいになれますよ」


疲労の色濃い二人…

値段は最初に見てある。大丈夫な金額だ…


「ああ…もう…面倒くさい。一軒目ので」

「…僕は二軒目で」


そう…同じようなものなら、大体最初の方が印象に残る…


お支払は即金で…

契約書に署名して…

登記簿みたいな物を貰う…


「では、鍵をお渡しします。これでいつからでもお住まいになれます。どうもありがとうございました。」


不動産屋を後にした二人…

日はもう、大きく傾いている。


「ああ〜疲れたな…なあ、ルート、面倒くさいってのは、ライラには内緒で頼むな」

「僕も…ちょっと…面倒くさいって…」

「ハハハ…よし、ちょっと飲んでいくか?

俺が奢るぞ」

「いいですね…行きます」


酒場のある方へ、夕暮れの雑踏に

消える二人…

こうして、ダリルさんとルート君は

自宅を手に入れた。


二軒の家が、ごく近所だったのは

言うまでもない…

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