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転生始めました

目が覚めた。

視界はあまりよろしくない。

何か身体の感覚も、違和感がかなりある。


人の気配が近くにある。話し掛けても大丈夫かしら?


声は出るのか?ちょっと緊張しながらの、


「ほんぎゃぁぁ〜」


は?今、何て?


「ほぎゃぁ〜ほぎゃぁ〜」


「最初は泣かなくて、心配したわ」

「そうか?元気な子だな。頑張ったな」


えっとー、赤ん坊?に、なった。多分。




とりあえず赤ん坊だ。身体の感覚もひどく小さい。手足も顔も、思い通りに動かない。

残念ながら、赤ん坊らしい。


できることは、無い。無いのだ。


父親らしき人は銀色の髪に藍色の瞳で、

肌の色は白人のような…武骨な感じもするが、整った顔立ちをしている。

母親らしき人は栗色の髪に緑色の瞳。やはり

白人のような、優しげで柔らかな雰囲気を持つ、美しい人だ。


日本人ではないようだ。

でも言葉は解る。赤ん坊なのに。

視界は天井か、覗き込む人の顔だけしか、

判らない。まだ首も動かない。

生まれて間もない赤ん坊だね。


天井は石造りとでも言うような感じ。

なんともレトロな雰囲気だ。


両親と思われる人たちの他にも、私のお世話をしてくれる人たちが居るようで、覗き込む顔の中には緑色や藤色の髪、赤い目や紫色の目の人など、様々な人がいて、どこの国なのか、見当もつかない。


服装も、少し見える襟元や袖口が、何と言うか、レトロな雰囲気で、かなり不安を覚える。


しかし、赤ん坊でいるのも、なかなかに大変だ。お世話するのは慣れているが、お世話されるのは恥ずかしい。

想像してみてほしい、いや、

想像しないで下さい。


私は、三人の息子たちを育てた。長男は結婚して、もうすぐ孫の顔が見られる所だった。

次男は結婚したばかりで、末っ子は、まあ、色々有って自宅警備員で、でもよく会話はして、優しくて悪い子ではなかった。


私は死んで、新たに生まれたのは解った。

あの守護者とか言っていた存在が、死んだと言い、消えそうな魂に送ると言って、赤ん坊になった。転生?とでも言うのだろうか?


考える時間だけは、沢山ある。

考える赤ん坊。赤ちゃんにもストレスが、

あるって、どこかで聞いたなあー。


ふと、思い出した。末っ子が話していた、

あれ、ラノベ?ネット小説?

主人公が転生するのが定番だとか言ってた。そうだ。

でも、赤ん坊から?

大体が異世界とか言う、中世のような所に

しかも、末っ子の話だと、剣と魔法の世界だとか。


子供たちが小さな頃は、よく一緒にゲームも

していたが、まるでゲームの世界のようなところ。


確かめるにも、まだ何もできないし、

守護者さんも、もう少し何か、ちょっと説明くらいは欲しかった。

しかし、今、現在進行形で赤ん坊だ。

どうしようもない。


最初に心配したことは、実は男の子でしたー

なんて場合だったが、それは大丈夫で、性別が違うという困難は避けられた。


首が動かせるようになった。

生後三ヶ月くらいか?


少し周りが見える。多分姉だろうと思う子供たちが、時折顔を見せるが、やはりレトロなファッションだ。


相変わらず、お世話をされるのは恥ずかしいが、あのまま歳を取って介護されるのと、変わりはない。覚悟を決めてお世話されよう。


私は赤ん坊として生きる覚悟を決めた。



覚悟を決めたからには、頑張った。覗き込む人たちには笑顔を、多分だが笑顔を見せる。


子育てを思い出し、手を差し伸べられれば

その指を握り、

「だぁー」

などと声を出し、沐浴も嫌がったりせずに、

可愛がられるよう、努力する。


抱きあげられれば笑顔を。

笑顔には笑顔が返ってくる。

うん、いい感じだ。


寝返りを覚え、ハイハイをするようになり、

私の居る部屋は柔らかい絨毯だけど、

廊下は石造りなのが判った。

多分痛そうなので、廊下には出ない。

時々扉を閉め忘れている。

奥さん不用心ですよ。

ハイハイをなめてはいけないのだ。


絵本を読み聞かせしてもらうこともある。

が、やはり初めて聞く話ばかりだ。




掴まり立ちを覚え、やっと二足歩行の視界を手に入れる。

人の膝くらいしか見えないけど。

窓の外が見えるまでにはどのくらい掛かるのだろうか?


季節は周りの人の服装で、なんとなく判るが

時間や暦はどんな測り方だろう?


歩き始めた頃、秋の気配がした。

多分一歳くらいになったので、私は秋生まれらしい。

教会のような場所に行き、洗礼を受け、屋敷の食堂で誕生日祝いのような事もしてもらった。


そう、屋敷なのだ。

外も少し見ることができたが、詳しくは分からなかった。

ただ、この家はかなり広い。

私はまだ誰かと手を繋ぎ食堂に行くくらいだが、部屋数も多いし平屋ではない。


質素ながらメイド服を着た人たちが何人か居るし、執事さんも居る。家庭教師まで、居るようだ。


これまでに把握した情報をまとめてみよう。


私の父はテオドール•フォン•マルノー子爵。

貴族って本当に居たんだ。

姉たちの母がセシリア、姉が長女メリエル、

次女アリティア、三女イリス。


そして、男の子が生まれないので、私の母

アメリアが第二婦人、要は妾になり、

残念ながら女の子の私が生まれた。

雰囲気的には、私の母も私も冷遇されていて、ということはないようだ。


本妻であるセシリアは金髪に紫の瞳。

ウェーブのかかった綺麗な髪で、貴族の妻らしい品の有る美しい人。

キリッとした立ち居振る舞いだが、恐そうではない。


姉たちは、メリエルは母親譲りの金髪に紫の瞳でおっとりした雰囲気。アリティアは金髪に藍色の瞳で、好奇心旺盛そう。イリスは銀色の髪に紫の瞳。私と五歳くらいは離れていそうだが、時々絵本を読んでくれる。


長女は二月で10歳になるらしい。

10歳になれば私たちが住む王国の首都、

王都と呼ばれる所にある、学校に入学するようで、

食事の時はその話題が多い。


暦や時間は分かりやすく、一週間が七日

一月は四週間固定で十三まで有り、一年は364日になる。

少し変な気分だ。

時間はどうやら24時間制らしい。

時計は高価な物なのか、父が懐中時計を持っている他は、食堂の壁に古そうな物が掛かっているだけだ。


まあ、まだ屋敷の中すべてを見たわけではないので、完全な把握はまだ先の事だ。


そうそう、私の名前は、ライラだ。



よちよち歩きをして部屋と食堂を往復するうちに、

冬がきたらしい。

二月にメリエル姉さんの誕生日がきた。

10歳。節目の年なので、ご馳走が出たが、

苺のショートケーキはなかった。


フルーツを使った焼き菓子があり、とても美味しかった。

甘いものは普段はあまり食べない。

砂糖が、多分高価なのだろう。


私はまだ会話ができるほど、話せない。

もどかしいが、焦っても仕方ない



少ししっかり歩けるようになった。


夏がきて、七月頃、セシリア母様とメリエル姉さんが、王都へ旅立った。

学校はどうやら九月始まりのようだ。

王都にもマルノー子爵家の屋敷があるらしい。


やはり、旅立ちは馬車だった。

いつの時代だろう?


私の誕生日は10月15日だと判った。誕生日祝いをしてもらい、めでたく二歳になり、片言で話せるようになり、嫌がられない程度に、話し掛けても大丈夫そうな人に話し掛ける。


まだ、魔法という言葉は聞かない。


それにしても、異世界転生?もう少し楽な状態で、できなかったものか。守護者さんは祝福を付けたと言ったが?


とりあえずは、我儘を言わず食べて、遊んで眠る。

耳はフル稼働で。


アリティア姉さんは九月生まれ、イリス姉さんは三月生まれだと判った。


五月から八月は学校の長期休暇で、セシリア母様とメリエル姉さんが、王都から帰って来て少し賑やかになる。


まあ、私はまだ幼過ぎて、家族の団欒の輪には、入っていないのだけど、耳だけ参加。



とても先の長そうな、転生生活が始まった。




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