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三歳になりました

ようやく三歳になる頃、部屋を二階に移され、屋敷内の様子も大体把握した。


ドアノブに手が届くようになり、誕生日を過ぎたあたりで、一階にある書庫に入れた。


情報収集の時がきたのだ。


書庫は、扉と窓以外の壁に、天井まで届く本棚があり、部屋の中央にはテーブルと椅子があり、今の私には図書館と言える規模だ。


三歳の身長では、高い所の本は手が届かない

本棚の下から三段目までくらい。本棚用の梯子があったが、まだ危険だろう。


大人が取りやすい位置に有る、よく読まれるであろう本は、無理だ。

本棚の下段を見てゆく。

幸いなことに文字も読める。

これも祝福的なものなのか?非常に助かる。


読んでもらった事が有る絵本や英雄譚など、

子供が読むような本が並んでいる。


古そうな、あまり誰も手を付けていないような、本棚にそれは、あった。


【魔法入門】【魔術の基礎】等々。


あったんだ、魔法。


スマホ有ったら写メ撮って末っ子に送るところだよ。


もしかして、村から出たら、あの、青くて

ぷるっとした魔物とか、居るのかな?


いや、ゲームをして疑問に思ってたけど、普通の村人とかね、村から出られないよね?

剣とか魔法とか、使えない場合はどうするのかな?

何かレベル制とか有ってレベルアップとかしちゃうのかな?

魔王とか勇者とかなんか居たりして?


あ、いや、落ち着こう。

まずは、一番簡単で、子供にも読めるような

本を探す。基本的なことは、そんな本に書いてあるだろう。


【まほう✙すぐわかるまほうのてきせい】


仮名文字の本を見つけた。

とても古びた革表紙の、意外と分厚い本。

魔法。そうか、魔法はあっても、使えるかどうかが問題だ。


分厚い本の半分くらいの背表紙は箱のようになっている。

開いて見る。とても簡潔に、魔法は魔力が有る人が、魔力を使って行うこと。

魔力は生まれつきの物で、その魔力量も生まれつき決まっていること。と書いてある。


背表紙の箱のような部分に、少し濁った水晶にも見える、

宝玉?がはめ込まれている。


これに触れということらしい。

魔力の有る人が触ると光ると書いてある。

光の強さで魔力量も、触った時のだが、判ると。魔力量はその人の限界まで時間を掛け増えるらしい。ふむふむ。


何か緊張するな。いや、魔法ですよ魔法。

使えちゃったらどうしよう?

でも使えなかったらショックだし。


指先で、ちょっと、さっと触る。

今光ったような、光ったよね。

何か、押すなよ絶対に押すなよ的になってる。


深呼吸して、凄くドキドキするけど、


今度は、掌をそっと乗せてみる。

光った、光りましたよ。

濁った水晶みたいだったのに、

綺麗な虹色の光が、指の隙間から溢れている。



それからは、魔法、魔術、魔導と名の付く本を片っ端から探し出して、読む。


異世界転生、魔法くらい使えないと、やっていられませんから。

守護者さんの祝福が、多分これ?


ライラ•フォン•マルノー三歳、

魔法の力を手に入れた。



12月。アメリア母様が男の子を生んだ。

待望の跡継ぎ誕生で、屋敷中が喜びに包まれている。弟の名前はルシウス。


そのおかげで、心置きなく読書ができる。

書庫に来る人はほとんどなく、

たまにアメリア母様が、弟に読み聞かせる

絵本を取りに来るくらいだ。

まあ、三歳児が本を読んでいるとは

思われないし、

「あらぁライラお勉強?」

「うんおべんきょう〜」

微笑ましく見られているようだ。


さて、お勉強の結果だ。

この世界に魔法があることは分かった。

魔術師が貴重な存在で、遺伝することはないことも。

時たま魔法適性を持って生まれてくる人を、探し出して育てるようだ。やはり、私の祝福は、これだったのだろう。


伯爵家以上なら、普通お抱え魔導師が居るそうだ。

魔法適性を持った子供が生まれれば、お抱え魔導師に教育してもらえる。


しかし、私の周りには、師匠になってくれそうな人が居ない。


マルノー子爵家で魔法を使っている人は?

使用人さんたちの中には、生活魔法と言われる、ごく初級の、竈に火をつけたり、水桶に水を満たしたりできる人が居るようだ。


また、農民や商人のなかでも適性がある人

は居る。生活魔法という程度ならば、屋敷の

ある町にも数人居るようだ。


勿論とても重宝される。

例えばマルノー子爵家を庇護している、

マルノー家と、領地が隣接するレナート辺境伯爵家との間は、馬車で2週間近くかかる。

そんな旅に生活魔法が使える人が居れば、

水を大量に運ぶ必要がない。


レナート領内の街レナシスから、半年に一度隊商がマルノー領内にやって来るが、魔法が使える人が隊商か護衛の中にいれば、

二週間の旅に必要な量の水を積まない分、商品を少しでも多く積める。


魔法適性があるかどうか、重要問題なのだ。


王国中から、市井に埋もれた人材を、常に探し求めているらしい。


王宮には、筆頭魔導師以下人数は判らないが、魔導師軍団があるらしい。

大昔、戦争のあった時代には魔導師たちの人数や、力量で戦局が決まる。そんな話が、昔話や英雄譚にもあった。


絶えて久しく戦争の無い、今の時代は、王宮魔導師たちの仕事も変わり、王国中の魔導師や魔術師たちを見つけ、その力を悪しき事に使わないよう、探索し、監督することになった。


なるほど、確かに強大な魔導師が、悪事を試みたなら、英雄譚に書かれたような魔導師ならば、国をも滅ぼすかも知れない。


さて、私、ライラのお勉強だが、魔力があるのは判った。

で、どうするのか?

魔法は使ってみなければ、意味が無い。


幸い、弟も生まれ、家庭教師がいるが、まだ何かを勉強させられることもないし、書庫で大人しくしてきた。最近の私は、ノーマークだ。


さっそく実験開始。

庭に出てみた。

本に書かれていた詠唱呪文は、発音に自信がないため、他の本にあった、強いイメージで魔法を発動させる方法を試してみることにしよう。


右手を前に出して人差し指を伸ばす。

ちょっと照れるな、厨二病っぽいかも。


まずは火を、指先に点すイメージを。

身体の内で何かが動く感じがする。

伸ばした手に向けて集まる、力のような

ものを感じる。


ゴォォー


前髪ちょっと焦げたよ。


うん、火は危ないよね。

子供の火遊びは良くないね、うん。


じゃあ水を。水なら危険は無いよね。


シュパパパパー


高圧洗浄機かーい。


石造りの腰掛けが部分的にキレイになった。


どうやら制御が難しいようだ。

風、氷、雷、土は今日はやめておこう。あまり良い予感がしない。

聖属性の治癒魔法は試す対象がないし。


また書庫に戻って、制御について調べることにしよう。



魔法の制御には、まず自分の、魔力を感じ操る訓練を、地道に行うのが基本らしい。

魔力を身体の中に巡らせるような感覚を、どうにか覚え、暇があれば練習する。


まあ、大概暇ですけどね。

この訓練は、魔力量を増やす訓練にもなるそうだ。勿論限界がくれば増えないそうだ。


魔力が増加すると判るらしい。

わかんない

限界がきても解るらしい。

わかんない


時々庭に出て、火を点してみたり、水を出したり、氷を作って口にしてみたりする。

土で壁を作って元に戻したり、庭に入り込んだ野鼠を雷で痺れさせてみたりとかも。


何か、あまり役に立つ事は出来ていないな。

風は使い勝手が良い。

寝具に温風を使うとふかふかになるし、部屋の掃除にも使えるし

まあ、子供の遊びだね。



次の夏には、アリティア姉さんが、王都の学校に入学するため、セシリア母様とメリエル姉さんの領地屋敷滞在は短かった。


馬車で王都へ向かえば一月以上かかる。

レナート伯爵領のレナシスから、魔導飛行船で行く。

メリエル姉さんの入学の時も、そうだったらしい。

レナシスまで馬車で2週間。飛行船で王都まで5日。

この世界の移動は大変だとつくづく思う。


移動と言えば、移動系の魔法を本で読み、

試してみた。浮遊は重力に反発するイメージで、すぐできた。

他人から見られにくそうな、裏庭で、屋敷の屋根の高さまで上昇し、推進力をイメージして動く。これは、楽しい。


空を飛ぶのは人類の夢だし。何かに役立ちそうな気がする。


もうひとつは、転移。行ったことのある場所に瞬間移動する、誰しも夢みる魔法。

これは、行ったことのある場所が遠くにはないので、自信が無かったが表の庭から裏庭をイメージしたらできた。


しかし、表と裏の庭を行ったり来たりする。

あまり意味はない。

やっぱり、子供の遊びだ。


イリス姉さんとアメリア母様には、

「少し魔法が使える」

と打ち明けた。

竈に火を点けたり、水桶を満たしたり、

お湯を沸かす程度のお手伝いをして、

喜ばれている。


あまりやり過ぎると良くない気がして、

程々にしている。


父様やセシリア母様にも、魔法が使える

ことはすぐに知られたが、喜んでくれた。ホッとした。



四歳になり、屋敷のある町まで外出が許可された。

と言っても子供の遊ぶような場所ではない。


町には小さな商店や、鍛冶屋に、教会もある。

教会には優しそうな老年の神父さんと、

壮年のいつもにこやかな修道女がいて、

病院と孤児院も兼ねている。


神父や修道士は治癒魔法が使える人が多く、

田舎の教会に派遣されるには必須のようだ。

開拓や農作業で怪我をした人たちや、病気に

なった人たちが教会で治癒をうける。


さっそく修道女のサリアさんに、

「魔法が少し使えるので治癒を教えてくださいませんか?」

と言ってみた。

たかが四歳児なので相手にされないかと

思ったが、

「じゃあ一緒にみて治癒魔法を覚えましょう。治癒ができる人は大切よ」

にこやかに許可された。


その日は軽い怪我を治癒させてもらったりした。サリアさんの教え方は丁寧なので、イメージしやすく、ある程度はすぐできるようになった。魔法についても色々な話を聞いてサリアさんが私の初めての師匠になった。



両親にはあらためて教会の手伝いをする許可をもらい、

午前中は本を読み、

午後は治癒の実技をする。


サリアさんは治癒魔法はかなりの技量で、

領内の人たちから聖女様と呼ばれている。

他の魔法はどのくらいかと思い、聞いてみると、水と火の生活魔法が使えるそうだ。


魔術師の多くは何かの属性に特化していて、

たくさんの属性を一定以上操る者は非常に少ないらしい。


ふーん、そうなんだ。


転移や付与系が使える者は珍しいそうだ。

私はまだ存分に試していないので、何が得意か判らないが、

しかし火と水は最初から使えたし、結構やりたい放題だけど?


器用貧乏というヤツかも知れないけど。



治癒魔法は師匠が居るので、着実に腕が上がっている。

骨折の治癒に、毒の探知、解毒、病は、治癒を使う場合と、薬を使い治療する、薬師。医者のような人の出番がある。


治癒は、患者の治療力を魔法で助け、短時間で傷などは跡形もなくできる。

病の場合は、治癒力を高めるから良いように思うが、病の原因そのものを活性化してしまう恐れがある。


さまざまな薬草を使う薬師は必要なのだ。


ある程度の町や村には、教会の治癒使い、薬師、産婆さんがいる。


治癒については、サリアさんから、王都の治癒師に負けないと言われた。

それがどれほどのものか、私にはわからないが、褒めてもらうと、嬉しい。


私は、聖女様の、小さな助手になった。

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