第十二話 俺と冒険者組合
シンジは何事もなく、スラム街に戻った。というか何かあったら、弾薬が切れているシンジは確実に死ぬ。
そうして、待望の遺物換金をするために、スラム街の冒険者登録センターに向かったが、そこでひと悶着起こった。
「おい! てめぇふざけてんのか!?」
「お前みたいなガキが、こんな遺物手に入れられる分けねえだろうが! 大方冒険者から奪ったんだろ。そんなものは買い取れない!」
「はぁ!? ふざけんなよ! お前なんか――」
カっとなって銃を突きつけようしたシンジを、イリスは慌てて止めた。
「馬鹿ですかマスターは。相手は腐っても企業の役員。殺したら都市に目を付けられますよ。それにマスターの銃には弾は入ってないでしょう」
『……そうだな。悪い。』
シンジは深呼吸して、もう一度役員にはっきりと自分の意見を伝える。
「いいか、これは俺が命がけで取ってきた遺物だ! そんなものに文句を言って買取をしないのなら、下層都市の冒険者組合の支部へ行く!」
「どうぞ、勝手にしな。そっちのほうが俺の手間も省けるしな」
そう言って役員はあっち行けと、ゼスチャーを出す。
シンジはその態度にもムカついたが、どうにか怒りをコントロールして踵を返し、登録者センターから出て行った。
『なにが登録者センターだ。ちっとも冒険者を相手にする気がないじゃないか』
「これは豆知識ですが、スラム街で冒険者になった人の八十パーセントは死にます。生き残った二十パーセントの内十五パーセントは、資産家のパトロンがついてます。所謂、可愛かった、かっこよかったから育てるといったペット感覚での冒険者登録です」
中層都市や下層都市から冒険者になって成功した! とういう話はよく聞く。だが、スラム街から冒険者になったという話を聞かないのはこういうためか。とシンジは納得した。
『じゃあ残りの五パーセントは?』
「スラム街から、実力だけで冒険者を始めた人です」
『……つまり俺は滅茶苦茶運がいい?』
「はい。私にあったことが、まず奇跡です」
イリスは言わなかったが、スラムから冒険者になる大半の人は、始まりの町周辺の弱いモンスターから倒して、スキルアップしていく人たちだ。
シンジが住んでいる所は、RPGで言いうところ中盤の町。
しっかり装備を整えなければ確実に死ぬ。
なので、自力で冒険者になった人はこの街には、両手で数えるぐらいしかいない。それだけ狭き門だ。
『そっかぁ、いや、それなら仕方ないかな。俺は特別過ぎるだけだし』
正確にはイリスの力なのだが、生まれて一度もよい意味で特別扱いされたことがなかったシンジには、何に変えても欲する言葉だった。
イリスは、この言葉がシンジの琴線に触れるとしっかり記憶しておいた。
「そうです。更に、怒りをコントロールしたのもさすがです。この後もこの類の輩はいくらでも出てきますから、安易に銃を抜くことがないようにしてください」
『そうか、いやーこのまま一流の冒険者になれるかな? なんつって』
ただ、このまま調子に乗らせたまま終わらせるイリスではない。
「何を言っているんですか? 射撃もろくにできない。遺物も売ったことがない。更には、お金も装備もない。そんなマスターが何偉そうなこと言ってるんですか?」
『……すいませんでした』
シンジの調子は急速に薄れた。
「それでは一流のマスターは、このセンター以外に売れるところを知っているんですよね。冒険者ランクを上げられられる場所もそうですが」
『……もう勘弁してください。分かりました。もう調子に乗りません。お願いですイリス先生助けてください』
「全く仕方ありませんね、ダメダメなマスターは。いいでしょう。教えて差し上げます」
シンジはもう言い返す気力はなかった。その代わり、イリスの力を借りずとも、いつか凄腕冒険者と呼ばれるよう努力しようと心に誓った。
シンジはイリスに連れられ下層都市に入る。そして、かなりの距離を歩く。
『あれ、これってもしかして東に向かっている?』
「そうです。マスターの元々住んでいた場所は都市の西部医療改造地区です。知らなかったんですか?」
『……いや、聞いたことないな』
この世界の常識は大方、六歳までに覚え終える。
しかしシンジは、六歳になって記憶を保持したまま意識が覚醒したので、この世界で生きていくには必要不可欠な情報以外は、丸ごと消し飛んでしまった。
シンジがこの都市に住んでるスラム街以外の住人が、必ず知っている知識を知らないのはそのためだ。
「では、改めて説明します。中層都市には壁があることは知ってますよね」
『あぁ、それは知っている』
「その壁の周辺はあるまとまった産業で構成されています。北部の都市防衛防犯区、東部の冒険者遺物解析区、南部の食糧生産改良区、西部の医療改造区、そして上層都市の企業本支社区に分かれています。マスターに関係あるのはこの東部区です」
『そこに行くと遺物買取してくれるのか!?』
「えぇ、正確には冒険者組合支部ビルですが。……ほら、あれです」
そこには馬鹿でかいビルが建っていた。
カケルだったころに、高いビルは何棟か見えたが、近くで見るとその迫力は一目瞭然だ。
「何ぼさっとしているんですか。いきますよ、マスター」
そういってイリスは、さっさとビルの中に入っていこうとする。
一人だと心寂しすぎるので、急いでイリスの後を追いかけた。
中に入ると、これが完全保存された遺跡だ! と言われても納得できるくらい近未来っぽくなっており、中には沢山の冒険者がいた。
「早く整理券を取ってください。抜かされますよ」
『……あぁ、悪い』
シンジは冒険者組合というものは、筋骨隆々なやつらが昼間から酒でも飲んでいるものかと思っていた。
実際は新人狩りとかもやられることなく、サイボーグや、普通の体形の人間も大勢いた。
整理券を取ってこようとしてほかの人間とぶつかってしまうが、何も争いは起きなかった。
『なぁ、イリス。冒険者ってなんかこう、気性が荒い連中が成るものじゃないのか?』
「確かにそういった人もいますが、その他にも、バトルジャンキー。死にたがり。借金を返すため。成り上がり目的。金。いろいろな目的の人がいます。マスターも気性が荒いってわけではないでしょう?」
『それもそうか』
話しているうちに、シンジの名前が呼ばれた。
「本日はどのような目的で」
「えっと、遺物の買取をしてもらいに来ました」
「……貴方はスラム街で登録されたようですが、何故そこで買取をなさらなかったのですか?」
シンジは話そうか戸惑ったが、イリスが話せとゼスチャーを送ってきたので話すことにした。
「あの……受付の人に全く取り合ってもらえなくて――」
「……わかりました。この紙をもって十三階の第七遺物買取センターに持っていってください」
「え? 何でダメだったのかとか聞かないんですか?」
「そんなことしている時間はありません。さぁ、どうぞ十三階に向かってください」
理由を聞こうとしたが、すげなく断られてしまった。
だが、そんなに突っかかってことではないので、おとなしく十三階に向かうことにした。
『お、あれか?』
「そのようですね」
シンジは十三階にまでエレベーターで行き、目的の部屋に向かった。幸い、わかりやすいように、でかでかと【第七遺物買取センター】と書かれている看板が掛けてあった。
『……あそこまで、でかく書かでなくてもよくないか?』
「見つけられなくて、他の所にもってかれると困るんでしょう」
『そんなもんか』
シンジはいまいち理解してなかったが、遺物というものは、伊達に超高額の値段がついているわけではない。
皆死に物狂いで探し、命を散らすに相応しい物だ。場所がわからない。そんなくだらない理由で他にもってかれる気は、冒険者組合にはさらさらない。それに、派閥争いにも重要なのでなおさらだ。
「えっと、第七遺物買取センターってこちらですか?」
「そうだけど何か用?」
シンジがノックすると中から、奥のほうでけだるげな返事が聞こえてくる
「遺物持ってきたんですけど……」
「――! どうぞ! 入って! 入って下さいお願いします!」
中からすごい勢いで白衣を着た女性が出てきた。眼鏡をかけ、少しやつれているようにも見える。その人が、さっきとは比べ物にならないくらい、声を張り上げた。
シンジは、半ばその勢いに押されるように部屋の中に入っていく。
中は大き目な椅子と、長机が一つ置いてあるだけの簡素な部屋があった。部屋の奥には【立ち入り禁止!】と大きな看板が掛かっている。
「さぁ! 遺物を! 早く遺物を!」
「は、はぁ」
シンジはまた、その白衣を着た人に押されそうになったが、自分が命がけで取ってきた遺物をそんなホイホイと見せるわけにはいかない。と思いとどまった。
「とりあえず、自己紹介してくれないか? じゃないと信用できない」
「そう? そんなことで遺物を買い取らせてくれるのなら、別にいいんだけど」
そういうと白衣の人は少し身なりを正した後、少し胸をはって自己紹介をした。
「私の名前は、ヒフミ。柳川重工業の孫娘って言ったところかな」
書いている途中に唐突な閃きは良くあります。ですが、それを組み込むと話の流れに支障が……
出来るだけ面白くしていきますね!




