第72話
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2017年5月27日午後1時2分。月井と今村は新宿の街を歩き続けた。ランチタイムの後で、オフィス街に人が戻ってきている。暑さと人いきれで何かと疲れてしまうのだが、歩いていった。月井が、
「この街も相変わらず混んでますね」
と言うと、
「ええ。新宿ってそんな場所なのは、月井巡査部長、あなたが一番よく知ってることでしょう?」
と今村が返してくる。
「まあ、確かにそうですね。私もここが長いもんで」
「警視庁捜査一課って、強盗・放火・殺人の捜査がメインの部署ですよね?」
「ええ」
「その中で、月井巡査部長は新宿の見張りを担当されてると?」
「そうです。一課でもずっと一線から外れてきました。下っ端ですから」
月井が本音を漏らし、軽く頷いて歩き続けた。今村も一言ではどうにも納得が行かないのだが、今現在捜査でバディーを組んでいるデカが言うことだから、素直に聞いておこうと思う。確かに警察官など、肩書などでは計り知れない事情がある。どうやらこの男も長年新宿の街にいるのだろう。今村にはそれだけしか分からない。
今村だって、新宿山手署刑事課のデカだ。事件捜査を担当していて、ある程度の年数が経つ。刑事がいろんなしがらみに捉われながら生きていることは十分知っていた。それに所轄は基本的に本庁や道府県警本部の捜査の援助をすることが多い。下に見られていることは分かっていた。互いに刑事として、いろんな思惑があったとしても……。
月井の刑事としての日常は謎に満ちている。今村はそう思っていた。普通の一課のデカなら、事件捜査にまい進しているはずだが、どうも街の見張りというのは、刑事として型落ちの感が否めない。詮索するつもりはなかった。まあ、本庁でも所轄でも下働きをし続ける警察官は大勢いる。一向に上に上がれないで……。それに今は任されたことをこなすだけだ。事件に直接的には関係ないようなことであったにしても……。
街は快晴だった。夏の都内は蒸し暑い。野外サウナのように……。(以下次号)




