第68話
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2017年5月27日午前7時15分。月井と今村はカウンターに届けられた食事を取り、幾分気が落ち着く。店内はそう人がいない。新宿の街は朝方静かで、月井たちも食事しながら、張り詰めがちな感情を収める。
ご飯と生卵、それに味噌汁と焼き魚、ちょっとしたおかずが一品付いていて、この手の定食は成り立っている。しかも廉価で。月井も今村も普段から食べるものには拘ってないので、空腹さえ凌げればそれでいいのだった。
食事を終えて、付いていた冷茶を飲みながら、しばらく一息つく。ずっと捜査本部に来ているので、心身ともに疲れてしまっている。この分だと、事件解決まで休みはなさそうだった。互いに新宿を捜査する人間として気を張っていた。岸間の個人的な事件捜査の意図はよく分からない。だが、月井たちもこの街には必ず事件を解決させるための手掛かりがあるものと踏んでいた。岡田を街のビジネスホテルで惨殺し、高木を水死に見せかけて殺害したホシはどこかにいるはずだ。
午前7時50分を回る頃、食事代を清算し、店を出、歩いていく。この街は規模が大きい。月井や今村を容易く飲み込んでいく。
歌舞伎町は朝で、一部の店舗を除き、静まり返っている。月井は立ったままタブレットを取り出し、キーを叩いて情報収集し始めた。今村も街の四囲に目を光らせている。辺りは夜間となると危険地帯なのだが、朝方は割とそうでもない。
今村がアイスの缶コーヒーを二缶買って月井に手渡す。
「ああ、すみません。……今村巡査部長、コーヒー飲みながら、目を光らせてくださいね」
「分かってますよ。……私も外回り慣れましたから」
今村が缶のプルトップを捻り開け、飲み口に口を付けて呷る。月井はタブレットを見ながら、情報を拾い続けた。互いに歩きながら、刑事としての職務をこなしていく。本庁も所轄もやり方があるのだ。特に強盗や殺人など、ただでさえ凶悪な刑事事件担当の捜査員はいろんなツボを心得ている。月井も今村も別のことをしているように見えて、実際息は合っていた。長年一端のデカとして、所定の訓練は受け続けてきているので……。(以下次号)




