第105話
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2017年5月30日午後2時20分。月井たちは現場の捜査を再開した。部屋中を見ながら、些細な類の物証まで捜す。客室内には熱がこもっていた。エアコンを入れても、あまり利かない。月井も今村も額の汗を拭いながら、作業を続けた。
時折、窓から街を見渡す。新宿は一際混雑していた。繁華街はいろんな人間たちが行き交い、まさに魔の巣窟だ。様々な欲望が秘め隠されている。この街はずっと動き続けるのだ。人間が活動する限り。東京で一番賑わう場所はその分、危険も多い。そんなことを考えながら、また現場を黙々と捜査する。
刑事は何かと忙しく、暇なしで動く。月井も仕事しながら、考え込むことがあった。もちろん、他の捜査員もいろんなことを考えているだろう。共にいれば、それが手に取るように分かる。
事件捜査中は拳銃の携帯が認められていた。警察官もいつ狙撃などをされるか分からない。自分の身は自分で守る。当たり前といえば当たり前か?警視庁捜査一課の巡査部長刑事として、普通に考えることだ。
午後3時25分。職務を遂行し続ける。淡々とではあるのだが……。慣れると、現場捜査も苦痛がなくなる。だが、この時間帯以降は撤収が掛かり、現場を保存してデカたちは引き上げる頃だ。蓜島が、
「午後5時前には仕事を終えましょう。そろそろ限界ですから」
と言い、スパートを掛ける。月井も今村も、他の捜査員たちも頷き、作業を幾分手早くし始めた。デカもずっと仕事してるわけじゃない。時間が来れば、終わりになる。もちろん、警察官にとっては基本的に昼も夜もないのだが……。(以下次号)




