005-『ヤブの矜持』
少年を追い、俺たちは街の奥へと踏み込んでいく。
「ここって....ヤバいんじゃあ....」
「大丈夫だ、索敵は機能している」
敵だらけに間違いはないが、周囲に魔術師の気配はないな。
充分に撃退可能だ。
俺たちは少年のいるらしい場所を見つけた。
そこは民家のように見えた。
扉に手をかける。
....鍵の類はないようだな。
「.....誰だっ?」
「すまないが、モノクルを返してもらえるか」
「な、なんでっ....!?」
民家に入ると、先ほどの少年がいた。
俺が片眼鏡を返してくれと頼むと、明らかに怯えた様子だった。
「すみません、私達は危害を加える気はないです。盗んだものを返してくれれば、すぐに退散しますから」
「だ...ダメ!」
「なら、仕方ないか」
人を殺すのは忍びないが、別にやってこなかった事でもない。
後で蘇生すれば済む話だ。
俺は肩に張り付かせていた医師の杖を取り出す。
それを見て、少年がへたり込んだ。
「ま、魔法使い.....! ごめんなさい、ごめんなさい!」
「ただ返してくれるだけでいい、他には何もしない」
魔術師が杖に手をかけるというのは、要するに銃を向けるのと同義だ。
少年が怯えるのは当然だろうな。
少年は震えながら、モノクルを差し出した。
俺はそれを受け取る。
「生活に困っているなら、もっとまともな仕事を見つけるんだな」
「環さん、そんな言い方....!」
「事実だろ」
この世界は優しくない。
だから俺は自分の待遇は自分でよくしろとしか言いようがない。
「違う! ご飯なら、自分で見つけられる!」
「どう違う?」
「......お母さんが病気で.....神殿への寄付金を見つけなきゃいけなくて.....」
ああ。
そういう理由か。
俺はモノクルをかけた。
魔力が集中しているのは......都市の中央から少し外れた場所だな。
感じるのは....後悔か?
まあ、それなら構わない。
まだ少し時間はあるようだ。
「いいぞ」
「え?」
「俺が治す、診せろ」
「でも.....」
「心配しなくても、カエルに変えたりはしない」
「.....しそう.....」
後ろでミカが言う。
俺を何だと思っている。
「法外な寄付金で治療をする奴らと比較されたくない」
医療とは正当な対価で初めて成立するもの。
治療の対価は確実に必要で、施しはしない。
ただ、取りすぎてはいけない。
言い値になるのは、蘇生の時だけだ。
死んだものを元通りにするなら、対価は青天井だからな。
「病院が人気になるわけだ」
俺は少年に続き、民家の奥へ向かった。
そこは、密閉された部屋だった。
本当は換気が必要だが、医療知識のない集落ではありがちの光景だ。
穢れたものは封じ込めるに限る。
「お母さん.....魔術師の人が治してくれるって」
「.....ダメ、ダメよ.....そんな怪しい人に....」
普通の反応だろうな。
魔術師は秘密主義で神秘的だ。
何が出来るか分からず、何をしてくるかもわからない。
「俺はタマキ、魔術師だが、決して貴方を害さない」
「信用できる....はずが....ゴボッ!!」
咳き込む彼女。
俺はこっそり俺とミカの頭に結界を張っている。
マスクの代わりだ。
「感染症、結核、肺の異常....考えられる要因は多いな」
「あなた....お医者様なんですか....?」
「そうでもあり、そうでもないと言える」
地球では医学のいも知らず、この世界でも回復魔法頼りで知識も合っているか分からない。
医者を名乗る事すら怪しいモグリだが。
「治療を始めよう」
やれることはやる。
多くの医者と同じく、それだけだ。
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