012-『盛大な歓迎』
数時間後。
魔物の群れを何とか追い払った俺たちは、山を登っていた。
ミカの機転が無かったら、もう少し長引いていたかもしれない。
咄嗟に魔物避けを職業技で作成したのだ。
アレは魔物のフンを使うからな、死体の肛門を掻っ捌いたんだろう。
「な、あ...こっちでホントに合ってんのか?」
「ああ」
俺はとりあえず、情報を集めるべく集落を探した。
探知魔法は、この先に人間百名弱の集落があることを示していた。
「飛行の魔法使ってくださいよ」
「アレは緊急用だ」
ミカに苦言を垂れられるが、ダメなものはダメだ。
四人を浮かすのにどれだけ労力が必要だと思っている。
医者に空を飛ばせろと頼むのはなんたる暴挙か...まあ、俺もノリがいい時は飛ばすが。
単純にゴードンを浮かすのが嫌なだけだ。
魔力の消費が激し過ぎる。
ちなみにゴードンは体力バカなので、俺が両手で持ち上げないとまともに持てないような鎧を何枚も重ね着して全く疲弊した様子を見せていない。
疲れているのは俺と、特にミカだけで、アルトラインも足取りは軽い。
「船室でじっとしてると体が鈍る。こういう運動も、たまにはいい」
「油断するな。大規模夢幻界なら、三日が限度だぞ」
過去に何度か巨大な地脈の夢を蘇生してきた俺の勘だ。
二日、もしくは三日でこの夢は終わってしまう。
「分かってるぜ、斥候の真似事でもするか?」
「要らん、索敵に引っ掛かればすぐにわかる」
俺はふと、背後を振り返る。
山を登ったからこそ、かなり分かりやすくなった。
穀倉地帯とは何だったのかと思わせるほどに、森しかない。
やはり、これは過去の光景だろう。
王国が開墾に精を出して、数十年前に立派な穀倉地帯へと生まれ変わったというからな。
肝心なのは、何故過去の風景が投影されているかだ。
そうそうある事ではない。
「見ろ」
「人の痕跡か...」
その時、ゴードンがある場所を指差す。
木の枝に、糸が巻き付けてある。
何に使うかは知らないが、周辺に人は住んでるな。
「これは...」
「鳴子罠だ、絶対に集落があるな」
地面に紐が張ってあった。
これに足を引っ掛けると、おそらく警報が鳴るのだろう。
地面に魔力を伝わせると、罠もあるが...こちらは魔物用だな。
「足元に気をつけろ」
「分かってるとも」
暫く歩くと、集落が見えてきた。
酷い様相だ、村を囲む柵は何度も壊された跡が見えている。
俺たちは柵を越えて、村の中へと入っていく。
すぐに、水を汲んでいる女性を見つける。
声を掛けようとした時、向こうが先に気づいて、
「キャアアアアアアアア!」
悲鳴をあげて、尻餅を付いた。
何だ、この反応は。
俺が口に指を当て、黙れと伝えると、女性は黙った。
しかし、駆けつけて来た男が俺たちを見て、武器を構えた。
よくない流れか...こういう時、交渉が出来るほど俺も器用じゃない。
「あ...あんたら、何者だ!?」
「医師だ。遠くから、ここへ来た」
間違ったことは言っていない。
俺たちの集団を、俺は「故郷なき医師団」と名付けている。
医療関連のことができる人材は三人しかいないが、別に問題はない。
「医師だと...いや、ありがたい。怪我人だらけなんだ」
「そうだろうな...俺たちも事情を聞きたい、中へ入れてはくれないか?」
「待ってろ、村長に聞いてくる。...マイラ、君はここで待っていてくれ」
「はい、あなた」
夫婦だったか。
ずいぶん若いように思えるが、この世界の村ならこういうものか。
マイラという女性は、その辺に腰掛けて休む俺たちに時折目を向け、すぐ逸らす仕草を繰り返していた。
暫くすると、村の奥から先ほどの男が駆け寄ってくる。
「あんたら、村長が許可した。茶でもてなすから、入ってくれ」
「分かった」
猫の手も借りたい状況なんだろうな。
俺は頷くと、仲間達に手で「ついてこい」と伝える。
こういう時、俺は口ではなくジェスチャーで伝える。
罠かもしれない時は、口で言うからな。
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