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25話 本条黄色と本田赤哉と白川栞

 すっかり本条と覆ちゃんが校内公認の美男美女カップルとして名を馳せた頃に、めでたい知らせが舞い込んだ。赤哉が志望していた大学の一次試験に合格したのだ。十一月二十二日、水曜日のことである。

 赤哉はエスカレーター式の進学ではなく、県外の国立大学である帝都大学(ていとだいがく)への進学を目指している。赤哉は成績優秀で、たくさんの課外活動もしてきているから、という理由で、特別に進学コースの所属ではあるが、推薦入試の受験資格を獲得したのである。

「赤哉、おめでとう!後は面接だけだね、頑張ってね」

赤哉は優秀だ。きっと次の二次試験、面接もきっと合格を貰うだろう。それに引き換え私はどうか。赤哉と同じ大学に行こう、と思って、ずっと勉強はしているが、模試で良い判定を貰ったことは一度も無い。それどころか未だ、C判定からも抜け出せていない。現実が、じわりじわりと、私に押し寄せてくる。

「栞、次は栞の番だよ。大丈夫、俺が栞を不合格にはさせない」

赤哉の目は至って真剣だった。赤哉よりも私の方が、赤哉の一次試験合格に対して、浮かれた気分でいたらしい。

 浮かれているのは私だけではなかった。本条がデートの約束をしたとニコニコしながら報告してくるものだから、アッパーを決めてやった。図書館閉館後の業務中のことである。

「いやいや、他のクラスの皆さんには害悪にならないように静かに行くよ、勿論」

そういう問題ではない。こっちが人生を懸けて勉強に取り組んでいるときに、なんて話を持ち出すのかと、そういうことだ。全く本条は自分が賢いから、と言って、余裕を持ちすぎていると思うのだが。

「もう俺、AOで進学決まってるしね。これで遊びに行ったなんて知れたら」

「……え、そうなの?……えッ?!」

衝撃の事実だった。本条がもう既に進学する大学を決めていたなんて。しかもAO入試なんて、特進コースが嫌いそうな方式で。

「あれ、言ってなかったっけ。俺、萩原学院大学に行くんだ」

萩原学院と言えば、県内でトップを争う偏差値の高さと学費の高さで有名なあの私立大学ではないか。

「ま、マジか……」

ちょっと気落ちしたのは私の気のせいではない。嫌なことを聞いてしまった。もしかしたら進路が決まっていないのは少数派かも知れない。

「人のことなんて気にしないんだよ、栞」

「ひょあッ」

最近、赤哉が私の背後を取るのに長けてきた気がする。妙に脅かすのはやめてほしい。

「人は人、俺たちは俺たちだ。……大丈夫、栞は絶対に合格するから」

赤哉は根拠のない自信ばかり振りまいて、私を安心させるのだった。人の恋愛を心配している場合ではなかった。自分の心配をして、自分の為に勉強をして、そして赤哉と同じ大学に行かねばならない。私の中の苛烈な帝都大学との戦いが、火蓋を切ろうとしていた。

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