↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
94/122

寿綾乃という女 第3部 94

「…ナオキ? …ウソ?…」


 思わず、呟いた…


 まさか、ナオキが、出て来るとは、思わなかった…


 夢にも、思わなかったのだ…


 同時に、気付いた…


 この菊池リンが、私にナオキに会わせてやると、言ったことが、ウソではないことが、わかった…


 だから、思わず、菊池さんを見た…


 菊池リンを見た…


 菊池リンは、大柄なボディーガード二人に、カラダを掴まれて、まさに、今、外に放り出されんとしていた…


 それを、小柄な菊池リンが、


 「…放しなさい!…」


 と、怒鳴っていた…


 コントの続きだった(笑)…


 コント=お笑いの続きだった(爆笑)…


 目の前で。お笑いが、続いていた…


 「…一体、私を誰だと思っているの!…」


 と、菊池リンが、怒鳴っていた…


 が、


 屈強なボディーガード二人は、菊池リンの言葉をまったく意に介していなかった…


 だから、余計に笑えた…


 菊池さんには、すまないが、笑えた…


 すると、今度は、さらに、部屋の奥から、


 「…どうしました?…」


 と、言いながら、伸明が、出て来た…


 これも、また、驚きだった…


 まさか、伸明が、ここにいるとは、思わなかった…


 なにより、さっき、このボディーガードのどちらかが、


 「…いません…」


 と、答えていた…


 この菊池リンの、


 「…伸明さんは、いますか?…」


 と、いう問いかけに、そう答えていた…


 だから、伸明が、出て来たのは、驚き…


 まさに、驚きだった…


 同時に、伸明が、姿を現したことで、


 「…諏訪野さん…部屋を、お出になっては、困ります…」


 と、ボディーガードの一人が、言った…


 が、


 そのボディーガードに、伸明は、


 「…それは、すまない…」


 と、言い、それから、


 「…いや、聞いたことのある声なので、つい…」


 と、続けた…


 「…それは、わかりますが、諏訪野さんの身を守るのが、私たちの仕事ですから…」


 「…それは、わかっている…」


 と、伸明は、応じる…


 そして、


 「…二人とも、ボクの知人だ…なにより、寿さんは、この前、二人とも、会ったでしょ?…」


 と、言った…


 「…それは、お会いしました…」


 ボディーガードの一人が、答える…


 「…ですが…」


 「…もう一人の女性…リンちゃんは、今日、初めてだったって、ことでしょ?…」


 「…ハイ…」


 それを、聞いて、伸明は、

 

 「…彼女は、従妹の子供です…」


 と、言った…


 「…ボクの母親と、彼女の祖母が、姉妹なんです…」


 それから、菊池リンに向かって、


 「…ここに、ボクがいるのを、誰に聞いたの?…」


 と、優しく、問いかけた…


 「…それは…」


 「…それは?…」


 「…おばあさまです…」


 菊池リンが、答える…


 が、


 伸明は、呆気なく、


 「…ウソだな…」


 と、言った…


 「…ウソ? …どうして、ウソだと、わかるんですか?…」


 「…和子叔母様は、リンちゃんに、五井家のゴタゴタには、関わらせない…」


 「…」


 「…五井長井家か?…」


 初めて、伸明から、五井長井家の名前が出た…


 これは、驚いたが、ある意味、予想通りでも、あった…


 なにしろ、今、五井の本家と分家の五井長井家は、敵対している…


 そう、思ったからだ…


 が、


 それだけでは、なかった…


 なぜなら、部屋の奥から、今度は、和子が、現れたからだ…


 五井の女帝が、現れたからだ…


 和子の姿を見て、


 「…おばあさま…」


 と、菊池リンが、絶句した…


 まさか、この場に、和子がいるとは、思いも、しなかったに違いない…


 目をまん丸に見開いて、驚いていた…


 それから、和子が、


 「…リン…アナタだったのね?…」


 と、彼女、菊池リンに、向かって、言った…


 私は、意味が、わからなかった…


 なにを、和子が、言っているのか、意味がわからなかった…


 が、


 それを、当然、私が、聞けるわけがない…


そもそも、そんな雰囲気ではなかった…


 ピリピリと緊張した雰囲気だった…


 とても、私が、口を挟める雰囲気では、なかった…


 「…おばあさま…」


 と、菊池リンが、小さく呟く…


 誰が、見ても、菊池リンの分が悪かった…


 菊池リンの旗色が悪かった…


 それから、和子が、


 「…誰が、ここに来るのか、ずっと、待ってたのよ…」


 と、続けた…


 「…でも、まさか、それが、リン…アナタだとは、思わなかった…」


 「…」


 「…それは、どういうことですか?…」


 ナオキが、口を挟んだ…


 正直、私も聞きたいことを、聞いた…


 いや、


 私だけではない…


 おそらくは、和子と、伸明以外、ここにいる全員が、聞きたいことを、聞いた…


 いや、


 もしかしたら、伸明も、また知らないかも、しれない…


 和子以外、誰も、知らないかも、しれない…


 その証拠に、伸明も、また和子を見ていた…


 五井の女帝を、見ていた…


 つまりは、ここにいる、全員が、五井の女帝、諏訪野和子を見ていたのだ…


 そして、和子は、全員の視線に臆することなく、


 「…五井の裏切り者…」


 と、ゆっくりと、言った…


 「…裏切り者…」


 ナオキが、和子の言葉を繰り返した…


 そして、その言葉に、全員が、驚いた…


 同時に、凍えたというか…


 おおげさに言えば、震撼した…


 震えた…


 …裏切り者…


 などど、言う言葉は、普通、ドラマや小説の中でしか、聞かない言葉だからだ…


 だから、震えた…


 だから、震撼した…


 そして、和子の次の言葉には、もっと、驚いた…


 「…でも、それこそが、五井…五井の血を引いている証拠かも、しれない…」


 和子が、苦笑しながら、言った…


 が、


 笑いながらも、その顔は、誰が見ても、哀しそうだった…


 誰が、見ても、おおげさでなく、泣きそうに見えたからだ…


 そして、和子の顔を見て、菊池リンが、


 「…おばあさま…」


 と、言った…


 小さく言った…


 和子の顔を見て、とても、大きな声を出せる状態では、なかったからだ…


 だから、小さな声で、言った…


 そういうことだろう…


 和子は、


 「…誰が、この部屋にやって来るか?…それが、大事だった…」


 と、淡々と言った…


 あえて、感情を殺していた…


 私は、そう、思った…


 つまりは、それほど、ショックだったのだろう…


 菊池リンの裏切りが、ショックだったのだろう…


 が、


 菊池リンが、なにを、裏切ったのか?


 わからなかった…


 和子の言及がなかったからだ…


 そして、もう一つの疑問…


 孫の菊池リンを裏切り者と、呼ぶ一方、


  「…でも、それこそが、五井…五井の血を引いている証拠かも、しれない…」


 と、言った和子の真意が、わからなかった…


 だから、あえて、私は、


 「…意味が、わかりません…」


 と、言った…


 この騒動の部外者の私が、口を挟む権利は、ないと、思うが、あえて、言った…


 どうしても、聞きたかったからだ…


 すると、和子は、私を見た…


 私を見て、ゆっくりと、微笑んだ…


 そして、


 「…それは、そうね…」


 と、言って、笑った…


 それから、ボディーガードの一人に羽交い絞めにされている、菊池リンを見て、


 「…放して、お上げなさい…」


 と、命じた…


 途端に、まるで、軍隊の上司の命令を聞いたかのように、それまで菊池リンを羽交い絞めにしていたボディーガードは、素早く、菊池リンのカラダを放した…


 これは、まるで、軍隊か、なにかを、見るようだった…


 なぜなら、このボディーガードは、屈強な大男だったからだ…


 そんな大男に、命じるのだから、まさに、軍隊を、連想させた…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、


 「…こちらに、いらっしゃい…」


 と、和子が、言った…


 が、


 私は、動けなかった…


 和子が、誰に対して、言っているのか、わからなかったからだ…


 だから、動けなかった…


 しかし、すぐに、私の疑問に気付いたのだろう…


 「…リンと、寿さん…それに、伸明と藤原さんも…」


 と、付け加えた…


 それから、ボディーガード二人に、向かって、


 「…アナタたちは、申し訳ないけれど、また、ここで、見張りを続けて下さい…」


 と、命じた…


 和子の命令を、聞いたボディーガード二人は、背筋をピンと伸ばして、


 「…ハッ!…」


 と、返答した…


 まさに、軍隊だった…


 その軍人と見間違えるボディーガード二人を残して、私たちは、部屋の中に入った…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。