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寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


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60/122

寿綾乃という女 第3部 60

が、


 私が、そう思っていると、


 「…いや、そんなことはない…」


 と、即座に長井さんの言葉を、長谷川センセイが、否定した…


 「…そんなことはない…どうしてですか?…」


 長井さんが、むきになって、長谷川センセイに聞く…


 「…VIPの病室は、決まっている…」


 長谷川センセイが、断言する…


 「…どこの病院でも、そう…同じ…ホテルと同じで、病室にも、ランクがある…だから、諏訪野さんが、隠れているとしたら、ホテルで、言えば、スイートルーム…最上級の部屋だ…だから、そこを探せば、諏訪野さんが、見つかると、思う…」


 長谷川センセイが、説明する…


 私は、それを、聞いて、


 …なるほど…


 と、思った…


 たしかに、その通りだろう…


 仮に、諏訪野伸明が、この病院に入院していると、すれば、最上級の部屋…


 ホテルでいえば、スイートルームに匹敵する部屋に違いない…


 当たり前だ…


 「…でも…」


 と、長谷川センセイが、渋った表情になった…


 …でも、なんだろ?…


 私が、思っていると、先に、長井さんが、


 「…セキュリティーでしょ?…」


 と、笑って言った…


 「…セキュリティー?…」


 私が、声を上げると、


 「…その通り…」


 と、長谷川センセイが、肩を落とした…


 「…あそこは、セキュリティーが、万全だ…警備員も常駐している…だから、いくら、このボクが、五井記念病院の勤務医だからと、いって、入れるかどうかは、わからない…」


 長谷川センセイが、自信なさそうに、呟く…


 言われて、みれば、その通り…


 納得する…


 この病院の最上級の病室が、誰でも、気軽に入れるものでは、困る…


 最上級の部屋だから、この病院の病室の中で、一番、高額…


 一番、部屋の代金が、高い…


 それなのに、まるで、無料で、見学できるように、誰もが、簡単に部屋にやって来られては、困る…


 だから、警備員を常駐させ、誰もが、簡単に、病室にやって来られないように、しているのだろう…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そんなことを、考えていると、


 「…しかし、とにかく、やってみる…ほかならぬ、寿さんの頼みだ…なんとか、やってみる…」


 長谷川センセイが、宣言する…


 「…ありがとうございます…」


 私は、頭を下げて、礼を言った…


 そして、頭を上げると、長井さんが、ニヤニヤしていた…


 まるで、長谷川センセイをからかうように、ニヤニヤと、笑っていた…


 その顔は、決して、言葉には、しないが、


 …この長谷川センセイ…年下の美人に頼まれたから、無理して、安請け合いしちゃって…


 と、でも、言っている感じだった…


 いや、


 事実、内心、そう、思っているに、違いなかった…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、長谷川センセイが、突然、背後の長井さんを、振り返って、


 「…大人をからかうんじゃない!…」


 と、苦笑いを浮かべながら、一喝した…


 私が、長井さんを見ていることに、私の視線で、気付いたのだろう…


 が、


 叱られた長井さんは、悪びれることなく、


 「…ハイ…」


 と、ニヤニヤしたままだった…


 私は、それを、見て、ピンときた…


 もしかしたら?


 もしかしたら、この二人、まったくの他人では、ないのかも?


 ピンときた…


 そうでなければ、研修生の立場で、勤務医の長谷川センセイを笑うことなど、できることでは、ない…


 だから、ピンと、来た…


 そして、それを確かめるべく、


 「…お二人は、もしかして、お知り合い?…」


 と、聞いた…


 強く、聞くのは、おかしい…


 だから、さりげなく、聞いた…


 すると、


 「…気付きましたか?…」


 と、長谷川センセイが、照れたように、言う…


 「…姪です…」


 「…姪?…」


 「…姉の娘なんです…」


 長谷川センセイが、告白する…


 私は、それを、聞いて、思わず、まじまじと、二人を見比べた…


 どこか、似ているところが、あるか、どうか、見たのだ…


 が、


 しかしながら、共通点は、まるで、なかった…


 叔父と姪といっても、顔がまるで、似ても、似つかない…


 長谷川センセイは、長身のイケメン…


 そして、失礼ながら、長井さんは、まったくの平凡な顔立ちだった…


 身長も、大きくもなく、小さくもない…


 平均レベル…


 160㎝ぐらいだろう…


 だから、二人が、叔父と姪といっても、共通点がまるでなかった…


 似ているところが、まるでなかった…


 が、


 しかしながら、そういうものかも、しれない…


 血が繋がった実の親子や兄弟姉妹でも、なんら、似ても似つかない場合も、多い…


 まして、それが、叔父と、姪では、もっと、血が薄くなるから、余計に、似ていないだろう…


 私は、そう、思った…


 そして、そう思っていると、


 「…どうして、気付いたんですか?…」


 と、今度は、長井さんが、私に聞いた…


 だから、私は、笑いながら、


 「…距離感ですよ…」


 と、答えた…


 「…距離感?…」


 「…ほら、男でも女でも、例えば、夫婦と、兄弟姉妹は、違うでしょ? …同じぐらいの年齢の男と女が、いっしょにいても、どこか、違う…対応が違う…だから、夫婦か、兄弟か、わかる…」


 私が、説明すると、


 「…たしかに…」


 と、叔父と姪が同時に、呟いた…


 「…それは、違う…まるで、違う…」


 長谷川センセイが、同意する…


 長谷川センセイが、激しく、同意した…


 「…それに…」


 「…それに、なんですか?…」


 「…いやしくも、研修中の看護師の方が、勤務医のセンセイをからかうように、笑うことは、普通できないでしょ?…」


 私が、笑って言うと、二人とも、顔を見合わせて、照れた…


 同時に、閃いた…


 さっき、この長井さんが、言ったこと…


 つまり、長井さんが、研修中の身にも、かかわらず、長く休憩を取っていた…


 それは、前回、私が、ここを訪れたとき、この長井さんと、いっしょにいた、研修中の看護師の方が、仕事がキツいから、辞めたので、私も簡単に辞められたら、困るから、長い休憩時間をもらったと、言っていた…


 が、


 それが、本当か否か、悩んだ…


 本当か、否か、考えた…


 叔父が、勤務医の長谷川センセイなら、多少の融通は、利くからだ…


 普通は、無理…


 できないかも、しれないが、叔父が、勤務していて、彼女が、叔父の近くで、看護師をやっていれば、かなり、疲れているようならば、叔父である長谷川センセイが、優先的に休憩させるようなことは、できるだろう…


 そう、思った…


 が、


 さすがに、それを、口にすることは、できない…


 さすがに、それを、聞くことは、できない…


 だから、諦めた…


 聞くのは、諦めた…


 私が、そう思っていると、


 「…とにかく、やってみましょう…」


 と、長谷川センセイが、言った…


 「…待っていても、仕方がない…」


 「…」


 「…諏訪野さんを探してみましょう…」


 「…ハイ…よろしくお願いします…」


 私は、言った…


 そして、私が、頭を下げると、またも、長井さんが、ニヤニヤして、叔父の長谷川センセイを見ていた…


 「…それでは、診察を始めます…」


 いきなり、長谷川センセイが、告げる…


 私は、一瞬、驚いたが、当たり前のことだった…


 ここは、病院…


 五井記念病院…


 そして、長谷川センセイは、外科の勤務医…


 私は、患者だ…


 私は、ホントは、諏訪野伸明の居所を、探すために、この五井記念病院にやって来た…


 が、


 名目は、検査…


 あくまで、自分のカラダの検査=診察だ…


 だから、診察せざるを得なかった…


 当たり前だった…


 だから、


 「…わかりました…よろしくお願いします…」


 と、言って、頭を下げた…



 診察が終わり、診察室を出ようとした…


 「…それでは、寿さん…ちょっと、ボクなりに、頑張ってみます…」


 と、長谷川センセイが、別れ際に、私に声をかけた…


 私は、その声に、応じて、またも、


 「…よろしくお願いします…」


 と、頭を下げた…


 まるで、バカの一つ覚えだが、それ以外に、適切な言葉が、見つからなかった…


 だから、バカの一つ覚えだが、


 「…よろしくお願いします…」


 と、繰り返さざるを得なかった…


 そういうことだ…


 そして、その言葉を最後に、診察室を出た…


 診察室を出ると、ホッとした…


 実に、ホッとした…


 とりあえず、やるべきことは、やった…


 自分にできることは、やった…


 そういう気分だった…


 これは、例えて、みれば、高校受験や大学受験と同じかも、しれない…


 テストが終わり、受験した学校を出る…


 そのときの気持ちと、同じだ…


 そして、さらにいえば、


 …手ごたえは、あった!…


 と、言いたい…


 テストでも、恋愛でも、普通の人間ならば、反応は、わかるものだ…


 出来がいいか、悪いかは、わかるものだ…


 受験を例に取れば、受かったか、受からなかったかは、大抵、自分でも、わかるものだ…


 恋愛も、そう…


 受験と同じだ…


 自分が、好きな男や女に、


 「…ボクと付き合ってください…」


 「…アタシと付き合ってください…」


 と、頼んで、相手が、ビックリして、当惑していれば、それは、もうダメ!


 大抵は、無理だと思えば、間違いが、ない(苦笑)…


 それと、同じだ…


 だから、


 …期待していい…


 と、思った…


 …なんとかなる…


 と、思った…


 そのときは、思った…


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