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寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


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52/122

寿綾乃という女 第3部 52

いずれにしろ、伸明に会わなければ、ならない…


 伸明に会って、真相を確かめなければ、ならない…


 なにより、伸明に会って、ナオキのことを、聞かなければ、ならない…


 これは、私の直観だが、伸明は、間違いなく、ナオキの居場所を知っている…


 ナオキは、拘置所を出て、どこかに、雲隠れした…


 ナオキが、拘置所を出て、どこかに、雲隠れするには、誰かの助けを借りなければ、ならない…


 そして、それは、普通に考えれば、ナオキが、拘置所にいたときに、接見した弁護士を通じて、行ったであろう…


 拘置所の中にいる、ナオキでは、なにも、できない…


 だから、連絡係ではないが、接見した弁護士を通じて、やりとりをするしかない…


 手筈を整えるしか、ないからだ…


 そして、そんな手筈を整えるのに、伸明は、もってこい…


 なにしろ、五井家当主だ…


 人脈など、腐るほど、あるだろう…


 だから、知っている人間を通じて、弁護士を派遣して、ナオキを助けた可能性が高い…


 その可能性が一番高い…


 そういうことだ…


 だからこそ、伸明に会わなければ、ならない…


 だからこそ、伸明に会って、ナオキのことを、聞かなければ、ならない…


 そう、思った…


 が、


 では、どうするか?


 現実的な問題が、残った…


 伸明のケータイの電話番号は、知っている…


 私のスマホに登録してある…


 が、


 いきなり、私が、伸明に電話をかけて、会いたいと言っても、会ってくれるか、どうかは、わからない…


 むしろ、会ってくれないのではないか?


 なぜか、そんな予感がする…


 別段、理由はない…


 だが、そんな予感がする…


 それは、なぜか?


 そう、思うのは、なぜか?


 それは、伸明が、私とナオキの仲を知っているからだ…


 以前、私とナオキが、付き合っていたことを、知っているからだ…


 伸明が、ハッキリと、私に、


 「…寿さんは、藤原さんと、付き合っていたんですか?…」


 と、聞いたことはない…


 が、


 しかしながら、私とナオキのやりとりを見れば、わかる…


 なんとなく、わかるというものだ(笑)…


 仲がいいと、いうのは、はた目から、見ても、わかるものだ…


 そして、どう、仲がいいのか?


 それが、問題だ…


 単なる友人同士なのか?


 恋人同士なのか?


 あるいは、兄弟姉妹なのか?


 それが、問題だ…


 が、


 これも、ジッと観察していれば、大抵わかる…


 とりわけ、どんなに仲が良くても、兄弟姉妹で、仲が良いのと、夫婦や恋人同士で、仲が良いのは、全然、違う…


 ジッと、間近で、観察していれば、わかるものだ…


 そして、問題は、私とナオキのように、かつて、恋人同士だった場合…


 あるいは、かつて、夫婦だった場合だ…


 この場合は、微妙…


 距離感が、微妙だ(苦笑)…


 以前、男女の関係にあったから、距離が近いのは、わかるが、それでも、今現在、すでに別れていれば、どこか、よそよそしいと、いうか…


 どこか、距離を置いている…


 が、


 周囲から見れば、親しい間柄であることは、一目瞭然…


 要するに、以前は、恋人同士あるいは、夫婦だったのが、今は、他人…


 だから、少しばかり、距離を置いている…


 そういうことだ…


 そして、それが、私とナオキの関係…


 以前は、事実上の夫婦だったが、今は、違う…


 が、


 それを、説明しても、伸明が、信じるか否か?


 あるいは、理解できるか、否か?


 それが、わからない…


 ぶっちゃけ、ウソをついていると、思われても、仕方がないからだ…


 だから、伸明が、私とナオキの関係をどう受けとっているかは、わからない…


 本当のところは、わからない…


 ただ、私から見ても、ナオキと伸明は、ウマが合った…


 二人とも、長身のイケメンだが、どこか、陰があるというか…


 要するに、陰キャラ…


 オタクなのだ(笑)…


 ナオキは、コンピュータおたく…


 だから、IT企業を創業した…


 そして、それは、伸明も同じ…


 伸明の趣味は、聞いたことがないが、やはり、オタクに違いない…


 だから、コンピュータおたくのナオキとウマが合うのだ…


 そして、だからこそ、伸明は、私に対して、

 

 「…寿さんは、藤原さんと、付き合っていたんですか?…」


 と、直球で、聞いたことが、ないのかもしれない…


 仲がいい、ナオキに遠慮したのかも、しれない…


 また、伸明の性格…


 生粋のお坊ちゃまだからだろう…


 決して、自分から、前に出るタイプではない…


 「…オレが…オレが…」


 と、前にしゃしゃり出るタイプではない…


 だからだろう…


 思っていても、口に出さない…


 態度にも、出さない…


 要するに、生まれがいいからだろう…


 他人を押しのけて、前に出ることが、できない…


 ハッキリ言えば、昔で言えば、お殿様というか…


 あくまで、自分は、誰かに紹介される立場の人間だからだ…


 だから、奥手…


 自分から、前に出ることができない…


 これは、誰にでも、わかりやすい例えで言えば、天皇陛下を思い浮かべれば、いい…


 天皇陛下が、誰かを押しのけて、前に出ることは、ありえない…


 あくまで、誰かに紹介される立場…


 伸明もそれと、同じ…


 伸明は、五井の天皇陛下だからだ…


 だから、前に出ることができない…


 そして、おそらく、そんな環境で、育ったせいだろう…


 それが、伸明が、前に出ることができない性格を作ったのだろう…


 そして、もう一つは、生まれながらの気質…


 おそらく、性格が、奥手なのかも、しれない…


 だから、私と付き合っても、せいぜいキス止まり…


 それ以上のことは、しない…


 あるいは、できない…


 なぜなら、相手が、嫌がるかも、しれないからだ…


 その嫌がるかもしれない行為を相手にすることができない…


 そして、それは、生まれながらの性格の良さにも、繋がる…


 要するに、相手が、嫌がることが、できないのだ…


 そういう性格で生まれ、そういう環境で、育ったのだろう…


 今さらながら、伸明のことを、考えた…


 そして、そう考えると、今さらながら、伸明のことが、心配になった…


 誰かに、騙されているのでは?


 と、心配になった…


 何度もいうように、五井家の当主が、五井記念病院に身を隠すのは、あまりにも、安易だからだ…


 そんなわかりやすい場所に隠れているのは、どう考えても、おかしい…


 いや、


 おかし過ぎる…


 だから、誰かに騙さていないのか、心配になる…


 「…五井記念病院に身を隠せ…」


 と、誰かに言われて、身を隠したのならば、その誰かが、なにか、目的があるのかと、邪推したくなる…


 そういうことだった…


 

 ならば、どうするか?


 考えた…


 五井記念病院には、簡単に行ける…


 が、


 伸明のいる病室に辿りつくことは、できないだろう…


 おそらく、伸明は、五井記念病院のVIPの病室にいるだろう…


 いわゆるVIP席…


 特別な病室に籠っているだろう…


 だから、私が、五井記念病院に出向いても、そんな大層な病室に近寄ることは、できない…


 だとしたら、どうする?


 考えた…


 すると、閃いた…


 誰かの紹介だ…


 誰かに紹介して、もらえれば、伸明に会える…


 問題は、その誰かだ…


 真っ先に、名前が浮かんだのは、諏訪野マミ…


 伸明の妹だ…


 が、


 マミさんは、この前、


 「…これ以上、五井に関わっては、危険…」


 と、私に警告した…


 だから、できない…


 マミさんを頼ることは、できない…


 なら、どうする?


 どうすれば、いい?


 誰を頼れば、いい?


 考えた…


 すると、あっけなく、一人の人物の名前が脳裏に浮かんだ…


 長谷川センセイだ…


 五井記念病院の私の担当医だ…


 長谷川センセイならば、伸明のいる病室を知っているに違いない…


 なにより、長谷川センセイは、五井記念病院に勤めている…


 五井記念病院の勤務医だ…


 だから、病院内部に詳しい…


 そして、もう一つ…


 長谷川センセイは、五井一族…


 五井西家の出身だと、言っていた…


 だから、適任…


 私が、五井記念病院に行って、伸明に会うのに、案内してもらう人物として、適任…


 これ以上ないほど、適任…


 まさに、うってつけの人物だった…


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