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寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


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50/122

寿綾乃という女 第3部 50

ナオキからは、連絡がなかった…


 いつまで、経っても、連絡がなかった…


 これは、意外だった…


 あまりにも、意外だった…


 こう言っては、なんだが、ナオキが、釈放されて、真っ先に、連絡が来る相手は、私…


 私、寿綾乃に他ならないと、思っていた…


 これは、うぬぼれでも、なんでもない…


 私にとって、一番大切な身内は、藤原ナオキだと、思っているように、藤原ナオキにとっても、一番大切な身内は、私だと、思っているからだ…


 私、寿綾乃だと、思っているからだ…


 だから、いつまで、待っても、ナオキから、連絡がないのには、落胆した…


 同時に、焦った…


 焦燥感に駆られた…


 いくら待っていても、ナオキから、連絡がこないからだ…


 私にとって、ナオキが、一番のように、ナオキにとっても、私が一番のはずだ…


 それなのに、連絡が来ない…


 これは、どう、考えても、おかしい…


 いや、


 おかし過ぎる…


 私は、考えた…


 だから、自分から、行動を起こすことにした…


 自分から、連絡を取ることにした…


 私は、待っている女ではない…


 行動する女だ…


 ただ、待っているのは、性に合わない…


 性格的にできない…


 そういうことだ…


 だから、連絡することにした…


 ナオキのケータイの電話番号は、当然のことながら、わかっている…


 スマホに登録してある…


 が、


 スマホで、連絡しても、


 「…この電話は、電源が切られているか、電波の届かない場所にあります…」


 と、いう自動メッセージが、流れるだけだった…


 ナオキが、釈放されて、数日後、初めて、電話をかけたときが、コレだった…


 そして、それは、その後も、変わらなかった…


 日を置いて…


 あるいは、同じ日に、何度、電話をかけても、結果は、同じだった…


 ただ、

 

 「…この電話は、電源が切られているか、電波の届かない場所にあります…」


 という自動メッセージが、繰り返し流れるだけだった…


 私は、イライラした…


 こんな気持ちは、初めてだった…


 実は、私は、恋愛経験が、乏しい…


 っていうか、簡単に、ひとを好きになれない…


 だから、子供の頃から、


 「…キレイだ…」


 「…可愛いだ…」


 と、周囲に騒がれても、それに浮かれることは、なかった…


 そして、その理由も、またわかっていた…


 母のおかげだ…


 母のせいだ…


母の影響だ…


 母は、娘の私から見ても、美人…


 美しかった…


 だから、そんな母を、身近に見ていれば、とても、自分が、美人だなんて、お世辞にも、思えなかった…


 ハッキリ言えば、明らかに自分を超える美人が、目の前にいたわけだ…


 だから、できない…


 調子に乗ることが、できない…


 そういうことだ…


 そして、母は、いつも、私の置かれた状況が、わかっていた…


 私の置かれた状況を理解していた…


 当たり前だが、私と母は、顔が似ている…


 しかも、母の方が、美人…


 だから、美人が、周囲から、どう見られるか?


 あるいは、周囲から、どう扱われるか?


 痛いほど、わかっていた…


 なにしろ、自分が、美人だから、娘の私と、同じ経験をしているからだ…


 だから、身に染みて、わかっていた…


 それゆえ、田舎にいた、中学生時代には、恋もしなかった…


 母の影響がありすぎたせいだ…


 そして、もう一つ…


 身近に好きになる男がいなかったせいも、ある…


 いや、


 たぶん、それが、一番大きい…


 人生は、出会い…


 そして、それは、偶然が大きい…


 どんな大きな会社に勤めていて、周囲に自分と合う年齢の男が、数百人いても、好きになれる男がいない場合もあるし、真逆に、周囲に十人や、二十人しか男がいなくても、好きになる男がいる場合もある…


 つまりは、確率ではないということだ…


 人数が多ければ、必ず、誰か、好きになる男がいるはずと、誰もが、思いがちだが、決して、そうではない…


 確率が低い=人数が、少なくても、好きになる男がいる場合もある…


 私の場合は、それが、ナオキだった…


 藤原ナオキだった…


 ナオキとは、最初に会ったときから、違った…


 言葉にするのは、難しいが、すんなりと、ナオキを受け入れることができた…


 そんな経験は、皆無…


 それまで、一度もなかった…


 まるで、昔から知っている男のようだった…


 だから、そんなナオキと、私が男女の関係になるのに、さして、時間がかからなかった…


 これもまた、母の影響が、大きい…


 なぜなら、母が死んで、私は、ひとりぼっちで、都会に出てきたからだ…


 だから、母が、いなくなったことで、まるで、くさびが外れたように、自由になった…


 母というくさびが外れたことで、自由に恋愛ができるようになったと言えるかも、しれない…


 が、


 母が、死んでも、母の影響から逃れることは、できなかった…


 それが、私が、恋愛経験の少ない理由だ…


 私以上の美人の母は、美人が、世間で、どういう環境にあるのか、よくわかっていた…


 だから、娘の私に、それを、ことあるごとに、告げた…


 そんな環境のせいか、容易に、私は、ひとを好きになることが、できなかった…


 だから、私が、ナオキと出会って、すぐに男女の関係になったことは、奇跡…


 奇跡に近かった…


 だが、やはり、今、考えれば、今も言ったように、母が亡くなり、ひとりぼっちになったことが大きいかも、しれない…


 やはり、ひとりで生きるのは、孤独…


 どうしても、誰かと仲良くなったり、頼ったりする…


 それは、ちょうど、学生でも、社会人でも、一人暮らしを始めた、人間は、そう…


 男も女も、そう…


 同じだ…


 一人だから、つまらない…


 会社でも、学校でも、そこにいるときは、いいが、家に帰っても、一人では、孤独…


 一人では、つまらない…


 だから、男女とも、彼や彼女を作る…


 一人では、つまらないからだ…


 例えば、実家にいれば、家族が、いるから、彼や彼女を作らないような者でも、作る…


 そういうことだ…


 だから、私も、それと、同じ…


 同じだった…


 私も、また、孤独だったわけだ…


 そして、ナオキと、暮らした、もう一つの理由…


 それは、母の遺言だった…


 私の従妹、本物の寿綾乃は、大金持ちの血を引く娘だった…


 だから、私に、寿綾乃になりすませと、母は、言った…


 従妹の綾乃になりすませば、お金が入るからだ…


 金持ちの娘だと、知れば、金が、入るからだ…


 だが、同時に、母が、言ったのは、強い男を見つけなさい、という遺言だった…


 強い男というのは、ケンカでは、ない…


 ケンカ=腕力ではない…


 強い男=知力、あるいは、財力だ…


 本物の寿綾乃が、金持ちの一族と知れば、必ず、妨害する者が、出てくる…


 それまで、その存在を知らなかった者が、いきなり、現れて、


 「…私は、○○さんの娘です…財産の一部を下さい…」


 と、言えば、誰もが、仰天するからだ…


 また、もし、そんなことがあれば、全力で、それを、排除しようとするだろう…


 母は、それを予見したのだ…


 だから、私を守る強い男を見つけて、味方にしなさいと、遺言した…


 なにがあっても、自分の味方になる男を見つけなさいと、厳命した…


 そして、そんな男は、上京して、あっけなく見つかった…


 それが、ナオキだった…


 藤原ナオキだった…


 出会った当初のナオキは、まだ海の者とも山の者とも、わからない人間だったが、私は、この男に賭けることにした…


 なにより、私は、ナオキと気が合った…


 これが、大事…


 一番、大事だった…


 どんなに、イケメンでも、どんなに、有能でも、自分と合わない人間は、ダメ…


 これは、誰でも、いっしょだろう…


 これは、誰でも、同じだろう…


 男も女も、同じだろう…


 いや、


 老若男女問わず、同じだろう…


 どんなイケメンや、美人でも、有能でも、同じ…


 嫌なものは、嫌だからだ…


 だから、それを、思えば、私にとって、ナオキは、僥倖…


 僥倖=偶然、知り合った奇跡のような存在だった…


 長身のイケメンで、有能…


 まさに、絵に描いたように、優れた人物だったが、いかんせん、女癖が悪かった(苦笑)…


 あっちの女、こっちの女と、女の間を渡り歩いて、挙句に女に振り回された…


 要するに、ナオキは、長身のイケメンで、女にモテるが、長続きしない…

 

 おそらく、性格になんらかの問題があったのだろう(爆笑)…


 だが、私とは、うまくいった…


 私とは、ウマが合った…


 これは、偶然?


 偶然に過ぎない?


 あるいは、必然?


 私とナオキは、いつか、どこかで、出会うことが、決まっていて、出会ったに過ぎない(苦笑)…


 神様が、あらかじめ、そう決めていたに過ぎない?


 私は、運命論者じゃないから、最初から、ひとの運命が決まっているか、どうかは、わからないが、やはり、私は、ナオキと出会うべく、出会ったのかも、しれない…


 私は、ナオキと出会ったおかげで、ナオキが、成功することで、私も、お金持ちになり、今では、億ションに一人で、住める身分になった…


 藤原ナオキなくしては、そんなことは、ありえなかった…


 藤原ナオキが、成功したことで、内縁の妻である、私も、良い生活ができた…


 それが、事実だった…


 それが、真実だった…


 だから、そんなナオキに出会ったことが、私の幸運…


 私の奇跡だった…


 だから、そんな経験をした私は、人生において、大切なのは、出会い…


 出会いに尽きると、思う…


 誰もが、生きている上で、どんな人間と、出会うか、わからない…


 だからこそ、出会いが大切…


 学校や会社に行っても、そのクラスや職場で、自分と合う人間がいるか、いないか、わからない…


 行ってみなければ、わからない…


 だからこそ、出会いが、重要…


 偶然、自分と合う人間と出会えたことが、なにより、重要だ…


 私にとって、ナオキは、そんな存在だった…


 出会いは、偶然だったが、結果は、最高だった…


 が、


 そんなナオキからは、まだ連絡がない…


 拘置所から釈放されたにも、かかわらず、まだ連絡が来ない…


 だから、私は、不安だった…


 どうしようもないほど、不安だった…



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