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寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


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寿綾乃という女 第3部 24

そして、そんなことを、考える自分に、驚いた…


 夫や子供が、欲しい…


 そう、切に願ったことは、これまで一度もなかったからだ…


 漠然と、願ったことは、ある…


 が、


 心底、欲しいと願ったことは、一度もなかった…


 これは、ひょっとして、私が、変わっているから?


 普通の女のひとと違っているから?


 正直、よくわからない(苦笑)…


 それとも?


 それとも、私が、なりすましだから?


 私が、寿綾乃のなりすましだから?


 だから、もしかしたら、それが、バレるのを、恐れて、結婚や、子供を産むということを、考える余裕がない?


 自分では、意識していなかったが、そうかも、しれない…


 それが、真実かも、しれない…


 それが、真相かも、しれない…


 が、


 本当のところは、わからない(苦笑)…


 自分でも、自分のことが、わからない…


 ただ、もしかしたら、もう長く生きることが、できないかも?


 そう、思ったときに、急に、夫や子供が、欲しくなった…


 これは、なぜか?


 考えてみると、それは、おそらく、決して、手に入らないから…


 決して、手に入れることが、できないから、欲しくなる…


 たぶん、そういうことかも、しれない(苦笑)…


 例えば、別段、モテない普通の男や女が、ある日、突然、スターになり、世間から、注目を浴びる…


 すると、どうだ?


 これまでとは、一転して、急にモテだす…


 要するに、相手を、選び放題…


 すると、男なら、誰もが、最初は、嬉しくて、あっちの女、こっちの女と、付き合ったり…


 あるいは、


 女なら、あっちの男、こっちの男と付き合ったりするが、すぐに飽きる…


 なぜなら、簡単に、手に入るからだ…


 これまでは、普通にモテなかったから、男女とも、異性にモテたいと、思っていた…


 が、


 それが、簡単にモテだすと、興味がなくなるというか…


 すぐに、お腹いっぱいになる(笑)…


 そういうことだろう…


 手に入らないから、欲しくなる…


 が、


 簡単に手に入るのならば、別段、欲しくなくなる…


 天邪鬼だが、誰でも、そういうものだろう…


 これは、芥川龍之介の小説の芋がゆと、同じだ…


 貧しい男が、腹いっぱい芋がゆを食べるのが、夢だと、言っていた…


 それを、聞いた有力者が、貧しい男の夢を叶えてやろうとした…


 そして、有力者の家に招かれると、大勢の人間が、大量の芋がゆを作っている光景を目の前にした…


 それを、見た貧しい男が、仰天して、まだ一杯も、芋がゆを食べていないにも、かかわらず、


 「…もう、お腹いっぱいになりました…」


 と、心の中で、音を上げた…


 それと、同じかもしれない…


 それと、似ているかも、しれない…


 手に入れられないから、欲しくなる…


 簡単に手に入るのなら、いらない…


 その気になれば、いつでも、手に入れることが、できるからだ…


 私にとって、夫や子供も、それと同じ…


 癌にかかるまでは、漠然と、欲した…


 が、


 あくまで、漠然と欲したに、過ぎない…


 具体的に、今すぐ、どうのこうのは、ない…


 それは、ナオキと、ずっと男女の関係にあったことから、わかる…


 男女の関係にあって、避妊をしたときも、あるし、避妊をしなかったことも、ある…


 が、


 妊娠は、しなかった…


 また、妊娠しなかったからと、いって、別段、それを、どうのこうのも、なかった…


 今、考えれば、子供が、欲しいわけでもなく、欲しくないわけでも、なかった…


 だから、結果として、子供ができれば、嬉しかったし、できなければ、できないで、なにも、思わなかった…


 まだ、若かったからかも、しれない…


 が、


 今は、違う…


 今は、心の底からと、いうと、大げさすぎるが、以前とは、比べ物にならないくらい、夫や子供が、欲しくなった…


 これは、私が、癌だから…


 余命いくばくもないから…


 それが、たぶん真相だろう…


 たとえ、癌でなくても、女は、もうすぐ33歳になる年齢ならば、自然と結婚を考えるものが、多い…


 なぜなら、女は、子供を産むからだ…


 それが、男とは、違う…


 男なら、50歳でも60歳でも、子供を作れるが、女は、違う…


 昨今は、四十代で、子供を産む女も増えたが、さすがに、それは、しんどいというか…


 嫌だ(笑)…


 大抵は、遅くても、三十代後半には、子供を産みたいと、思うのが、大半だと思う…


 昔は、子供は、二十代で、産み上げるのが、理想と言われていた…


 産み上げるというのは、子供は、二十代で、産み、後は、産まないということだ…


 が、


 昨今は、医学の進歩で、三十代は、おろか、四十代の半ばまで、出産が、可能となった…


 が、


 さすがに、四十代で、自然妊娠は、少ないだろう…


 だとすれば、お金がかかる…


 不妊治療は、お金がかかるからだ…


 だから、余計に早く、結婚して、子供を産みたいと願う…


 二十代では、まだ、そんなことは、考えるものは少ないが、三十代になれば、考えるものが、増える…


 出産が、切実な年齢になるからだ…


 だから、焦る…


 結婚するか、否か?


 子供を産むか、否か?


 一生、独身か、否か?


 女は選択を迫られるからだ…


 これは、男の比ではない…


 だから、焦るのだ…


 私は、思った…


 が、


 そう思うはずの私は、どうだろう?


 振り返ってみると、今も、言ったように、心の底から、夫や子供を欲しいと、願ったことは、一度もなかった…


 これは、一体、どうしてだろう?


 考える…


 すでに、色々、考えを挙げたが、まだ、挙げてない考えがある…


 それは、私が、美人だから…


 美人だから、その気になれば、夫や子供がどうにかなる…


 自分が、その気になれば、すぐにでも、相手が、見つかる…


 後は、子作りだけ…


 そう、思っていた…


 いや、


 言葉には、しないが、心のどこかで、明らかに、そう、思っていた…


 それが、私が、結婚に焦らない真相だろう…


 そして、これは、言い訳になるが、私に限らず、美人は、皆、同じ…


 同じように、思っている…


 その気になれば、男なんて、すぐにでも、手に入る…


 そう、心のどこかで、思っている…


 それが、真相かも、しれない…


 それが、真実かも、しれない…


 これは、男も女も、同じ…


 ルックスが、良く、生まれた者は、皆、同じだ…


 ルックスが、いいから、モテる…


 なにも、しなくても、異性が、寄ってくる…


 だから、自分は、選び放題…


 だから、自分が、その気になれば、すぐにでも、結婚ができる…


 ただ、これまで、自分が、結婚しなかったのは、自分に、その気がなかったから…


 その気=結婚する気がなかったから、これまで、結婚しなかった…


 そう、心の底から、思う…


 が、


 それは、おそらく、自分が、そう思っているに過ぎない…


 傍から見れば、イケメンや美人でも、性格が、良くなかったり、頭が、良くなかったりするのが、見ていて、わかるから、周囲の異性は、敬遠する…


 そういう例は、枚挙にいとまがない(笑)…


 また、本人が、思っているほど、ルックスが、良くない場合も、多い…


 さらに、仮に、イケメンや美人で、顔立ちが、良くても、雰囲気が、ないものも、いる…


 雰囲気=オーラが、ない…


 芸能人を見れば、わかるが、華やかな雰囲気を身にまとうことが、できなければ、注目されない…


 ちょうど、舞台で言えば、スポットライトを浴びるように、目立つ…


 その雰囲気=オーラが、なければ、いかに、顔立ちが良くても、思ったよりも、モテない…


 そういうものだ…


 そして、私は…


 私、寿綾乃、いや、矢代綾子は、どうだろう?


 考える…


 一体、今、挙げた例のどれに、当てはまるか?


 考える…


 いや、


 もう一つ、忘れていた…


 大切なことを、忘れていた…


 それは、年齢…


 私は、もうすぐ33歳になる…


 若い子から見れば、決して、若くはない…


 が、


 自分は、それほど、歳を取っているとは、思わない…


 誰もが、そうだろう…


 誰もが、同じだろう…


 そして、それが、態度に出る…


 それが、行動に出る…


 つまり、男も女も、自分が、オジサンや、オバサンになってきているにも、かかわらず、自分は、まだ若い…


 自分は、まだ、十分イケてると、思う…


 が、


 自分が、思うほど、周囲の者は、自分を評価しない…


 たしかに、顔は、いいけれど、オジサン…


 あるいは、


 美人だけれど、もう若くない…


 と、周囲は、皆、見ている…


 が、


 それに、気づかないのは、本人だけ…

 

 当の本人だけだ(笑)…


 そして、それは、私も同じなのかも、しれない…


 私、寿綾乃=矢代綾子も、同じなのかも、しれない…


 要するに、自分に甘い…


 甘い=評価が、高い、だ…


 自己評価が、異常に高くなる…


 そういうことだ…


 これは、何事も、同じ…


 モテ具合も、仕事も同じ…


 周囲の者は、たいした人間では、ないと、評価していても、自分だけ、自分の評価が、高い…


 そういうことだ(爆笑)…


 そして、あまりにも、周囲の評価と自分の評価が、違った場合は、陰で笑われる…


 そういうことだ(苦笑)…


 そして、それは、この寿綾乃も例外ではない…


 この寿綾乃=矢代綾子も、例外ではない、ということだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


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