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寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


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23/122

寿綾乃という女 第3部 23

 諏訪野和子…


 五井の女帝…


 伸明の叔母…


 伸明の実母の昭子の妹だからだ…


 伸明は、五井家当主だが、実権は、和子にある…


 だから、五井の女帝と、和子は、世間で、言われている…


 「…和子叔母さまは、伸明さんに今、激怒しているの…叔母様が、伸明さんに、藤原さんのことが、どうなっているか、聞こうとしたら、さっさと、雲隠れして、連絡が、取れなくなっているの…だから、もしかしたら、寿さんのところに、伸明さんが、いるのかも、と、思って…」


 諏訪野マミが、私が、予想したことと、同じことを、言った…


 やはり、もしかしたら、伸明が、私の元に、いるのかも?


 と、探りの電話を、入れてきたのだ…


 それが、たった今、マミが、私に電話を入れてきた真相だった…


 あるいは、伸明が、私と、いっしょに、いないまでも、私が、もしかしたら、伸明の居所を知っているかも、しれない…


 と、考えたのかも、しれない…


 が、


 いずれにしろ、伸明が、どこにいるか、知りたい…


 それゆえ、私に電話をかけてきた…


 それが、真相だった…


 そして、それが、わかると、実に、ホッとしたというか…


 スッキリした…


 マミの目的が、わかったからだ…


 だから、


 「…マミさん…」


 と、今度は、私から、言った…


 「…なに、寿さん?…」


 「…私は、伸明さんが、どこにいるか、知りませんよ…」


 と、自分から、言った…


 マミが、聞きたいであろうことを、先に言った…


 「…さっきも、言ったように、伸明さんと、私は、そんなに、親しい関係じゃ、ありませんから…」


 …ただ、キスを一度しただけですから…


 と、付け加えたかったが、止めた…


 それでは、さすがに、しつこ過ぎる(苦笑)…


 まさかとは、思うが、さっきの話題をもう一度、繰り返すかも、しれない…


 キスをしたから、どうの…


 セックスをしたから、どうの…


 と、いう話題だ…


 お子ちゃまじゃないのだから、そんな話題は、もう嫌だ…


 繰り返したくない…


 私は、そう思った…


 だから、言わなかった…


 すると、マミは、


 「…そう…」


 と、力なく、呟いた…


 そして、


 「…やっぱり、寿さんでも、知らないか…」


 と、独り言のように、呟いた…


 が、


 私は、マミの


 …やっぱり…


 と、いう言葉が、気になった…


 だから、


 「…どうして、やっぱりなんですか?…」


 と、聞いた…


 聞かずには、いられなかった…


 「…それは…」


 「…それは…」


 「…ぶっちゃけ、寿さんが、伸明さんと男女の関係にないからよ…」


 「…えっ?…」


 耳を疑った…


 つい、さっきまでは、キスをしたとか、セックスをしたとかは、関係ないと、言った当人が、さっきとは、真逆のことを、言ったからだ…


 だから、耳を疑った…


 だから、


 「…でも、さっき、マミさんは、私が、伸明さんとキスをしようが、セックスをしようが、関係ないと…」


 と、言った…


 言わずには、いられなかった…


 「…それは、言ったわ…」


 「…だったら…」


 「…寿さんは、それは、距離感の違いよ…」


 「…距離感? ですか?…」


 「…そうよ…ぶっちゃけ、男も女も相手と、一度でも、寝ると、親密な関係になったと、思うでしょ? …だから、それ以前と比べると、なれなれしくなる…」


 「なれなれしく…」


 「…だから、ぶっちゃけ、寿さんが、一度でも、伸明さんと、寝ていれば、伸明さんが、寿さんに、連絡を入れたかも、しれないけれど、寝ていなければ…」


 後は、言わなかった…


 言わずとも、わかるからだ…


 私は、なんといっていいか、わからなかった…


 マミの言わんとすることは、わかる…


 わかるが、やはりというか…


 直接、同性でも、


 「…アナタ、あの男と寝たの?…」


 と、直球に聞かれれば、答えに窮す…


 まして、マミさんは、伸明さんの血が繋がった妹…


 母親が、違うから、腹違いでは、あるが、伸明の血が繋がった妹に他ならない…


 が、


 いかに、血が繋がった妹と、いえども、兄の伸明と、いっしょに、暮らした経験は、ないに違いない…


 あるいは、だから、直球で、


 「…伸明と、寝たか、否か?…」


 の話題に触れることが、できるのかも、しれない…


 そう、気付いた…


 これが、普通の兄妹なら、なかなか、口にできない…


 恥ずかしいからだ(苦笑)…


 が、


 マミは、伸明と、いっしょに、暮らしたこともない…


 だから、どこか、他人行儀というか…


 今も、


 「…伸明さん…」


 と、さん、づけで、距離を置いていることから、わかる…


 私が、そんなことを、考えていると、


 「…寿さん、今日は、ごめん…」


 と、マミさんが、電話の向こう側から、言ってきた…


 「…突然、電話をかけて…」


 マミが、続ける…


 要するに、用は済んだということだ…


 マミさんは、私が、伸明さんの居所を知っているか? 否か?


 そのために、電話をかけてきた…


 そして、その結果がわかれば、用済みというわけだ…


 だから、


 「…いえ、今日は、お電話ありがとうございます。マミさんと、久しぶりに、こうして、お話ができて、楽しかったです…」


 と、言った…


 半分、本音…


 半分、社交辞令だ…


 すると、それが、わかってか、わからないでか、マミさんも、


 「…こちらこそ、寿さんと、久しぶりに、話せて、嬉しかった…」


 と、電話の向こう側から、言ってきた…


 だから、


 「…いえ、こちらこそ…」


 と、繰り返した…


 すると、マミさんが、


 「…今度、会いましょう…」


 と、言ってきた…


 「…ぜひ…」


 と、私も勢い込んで、答える…


 が、


 これも、半分本音…


 半分、社交辞令…


 おそらく、マミさんも、同じだろう…


 そして、それを最後に、電話が、切れた…


 すると、途端に、ドッと疲れが出た…


 自分でも、ビックリするほど、疲れが出た…


 これは、自分でも、意外だった…


 なぜなら、相手が、マミさんだからだ…


 伸明の腹違いの妹のマミさんだからだ…


 私は、マミさんが、好き…


 マミさんも、私が好き…


 にもかかわらず、ドッと疲れが出た…


 これは、一体、どうしてだろう?


 自分でも、考え込んだ…


 自分でも、わけが、わからなかったからだ…


 そして、考えた結果、答えが、見つかった…


 それは、自分が、猜疑心が強くなっていること…


 だから、何事も疑って、かかる…


 それゆえ、疲れる…


 それが、理由だった…


 なぜだかは、わからない…


 なぜ、自分が、猜疑心が、強くなっているかは、わからない…


 が、


 もしかしたら?


 もしかしたら、私の死期が、近づいているのかも?…


 とっさに、気付いた…


 よくある種の動物は、自分の死期が近づいたことが、わかると、群れから、離れ、自分だけ、どこか、別の場所の行くと、聞いたことがある…


 要するに、死に場所を探すのだ…


 それが、直感でわかる…


 それゆえ、誰に教わったわけでもなく、そういう行動に出る…


 そして、もしかしたら、それが、私と同じ…


 私は、人間だから、死に場所を探すのではなく、ただ、何事にも敏感になる…


 小さなことにでも、過敏になる…


 小さなことでも、気になるようになる…


 そういうことだ…


 自分の死期が、近づいてきたから、神経が過敏になっているのかも…


 そう、気付いた…


 と、同時に、


 …来るべきときが、来た!…


 とも、思った…


 死ぬときが、来た!


 とも、思った…


 が、


 意外や意外…


 別段、驚きはなかった…


 これは、自分でも、意外だった…


 考えてみれば、私は、一人…


 一人ぼっちだ…


 夫も、子供もいない…


 だから、死んでも、困る人間は、誰一人いない…


 そう、思えば、楽…


 気が楽だ…


 が、


 同時に、ちょっぴり寂しくもある…


 やはり、私も、人並みの幸せというか…


 夫や子供といる生活がしてみたかった…


 と、


 心の底から、そう思う…


 自分でも、実に矛盾していると、思う…


 が、


 これが、本音…


 本音だった…


 まもなく、33歳になろうとする、癌持ちの寿綾乃=矢代綾子の本音だった…


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