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寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


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117/122

寿綾乃という女 第3部 117

久しぶり…


 実に、久しぶりだった…


 このFK興産に、戻ってきたのは、実に、久しぶりだった…


 が、


 私は、これから、向かうのは、社長室ではない…


 社長のナオキの近くで、社長秘書をするわけでは、ないからだ…


 だから、一目散に、会議室に向かった…


 臨時の取締役会が、行われる会議室に向かった…


 しかしながら、その途中で、FK興産の社員に、何人か、お目にかかった…


 ただ、会社の廊下を歩いているだけだったが、当然、FK興産の社内だ…


 FK興産の社員が歩いている…


 その中には、これも、当たり前だが、私を見知った社員がいて、驚いて、私を見ていた…


 あるいは、振り返って、私を見ていた…


 そして、誰もが、唖然とした表情になった…


 少しおおげさにいえば、本来、ここでは、会えない人間…


 もはや、いなくなったと、思った人間を、目の当たりにしたのだから、当然と言えば、当然なのかも、しれない…


 それに、なにより、自分で、言うのも、なんだが、私は、FK興産内で、目立っていた…


 なにより、社長秘書だ…


 社長のナオキの近くに、いつも、いる…


 いつも、寄り添っている…


 これでは、目立たないわけはない(苦笑)…


 また、自分で、言うのも、恥ずかしいが、私は、他人様より、ルックスが、いいので、余計なのかも、しれない…


 余計、目立つのかも、しれない…


 そう、思った…


 そう、考えた…


 同時に、そんなことを、言えるのは、あと何年だろうとも、思った…


 以前にも、言ったが、アメリカの大物司会者が、


 「…女は、40歳を過ぎたら、価値がない…」


 と、テレビで発言して、クビになったそうだ…


 これは、事実、正しい…


 女の私でも、正しいと、思う…


 いや、


 私に限らず、女は、皆、内心、密かに、思っている…


 要するに、ここで、言う価値とは、ハッキリ言えば、性的対象というか…


 …あんな女と結婚したいとか…


 …あんな女と、一晩でいいから、共にしたい…


 とか、言う下心…


 友人とか、仕事仲間を求めているわけではないということだ(笑)…


 だから、それを、思えば、私も、あと何年…


 あと何年、美人と呼ばれるか?


 いや、


 美人と周囲から、呼んでもらえるか?


 考える…


 考えさせられる…


 自分は、心の中では、美人のままだが、周囲の反応が、違ってくる…


 要するに、下心…


 それを、私を見て、感じるか、どうか?


 その違いだ…


 だから、自分では、いつまでも、美人のつもりでも、周囲では、すでに、対象外扱い(笑)…


 自分では、まだまだ、イケると、思っている…


 そんなイタいオバサンには、なりたくない…


 しかしながら、そうはいっても、すでに、32歳…


 ゴールは、近い(苦笑)…


 賞味期限切れの日は近い…


 なにより、困るのは、私が、かわいい感じの美人ではないこと…


 私は、芸能人で、言えば、元フジテレビで、今は、フリーアナウンサーの近藤サトさんのようなタイプの美人だからだ…


 だから、自分で、言うのも、なんだが、かわいくはない…


 目鼻立ちの整った正統派の美人(笑)…


 そして、目鼻立ちの整った正統派の美人の欠点は、歳よりも、老けて、見えること…


 近藤サトさんもまた、フジテレビに入社した頃…


 「…もしかして、中途入社?…」


 と、周囲から、からかわれたそうだ…


 つまり、実年齢より、数歳、上に見られる…


 それが、正統派の美人の欠点…


 あるいは、弱点とも、言える…


 数少ない例外は、歌手の河合奈保子さんぐらいだろう…


 彼女は、目鼻立ちの整った正統派の美人にも、かかわらず、可愛らしく愛嬌があった…


 しかしながら、これは、例外中の例外…


 めったにお目にかかれるものではない…


 だから、実は、自分で言うのも、なんだが、かわいい感じの美人に憧れる…


 愛嬌のある美人に憧れる…


 なぜなら、愛嬌のある美人の方が、賞味期限が、長いからだ…


 少なくとも、私の感覚では、5年は、長い(苦笑)…


 そう、実感する…


 そして、それは、そんな実例を見たことがあるからだ…


 ずっと、以前、当時、よく利用していたコンビニに、女優の常盤貴子さんを小柄にしたタイプの美人の女のコを、よく見た…


 私と同じく、近所に住んでいたのだろう…


 ときどき、会った…


 当時、彼女の歳は、二十歳ぐらい…


 ビックリするほど、キレイで、可愛かった…


 女の私でも、思わず、二度見、三度見、するぐらいキレイで、可愛かった…


 そして、一度だけだが、その常盤貴子さんに、似た女性が、そっくりのルックスの年上の女性といっしょにいたのを、見たことがある…


 私は、最初、その女性をお姉さんと思った…


 少し歳の離れたお姉さんと、思った…


 が、


 よく見ると、歳を取っている…


 おそらく、四十歳には、なっている…


 だから、母親…


 そのキレイで、可愛い女性の母親だった…


 しかしながら、よく見なければ、わからない…


 なにしろ、母娘が、そっくりだからだ…


 外見が、瓜二つだからだ…


 そして、若い…


 一見すると、実に、若い…


 実に、若く、見える…


 だから、彼女たちを見ると、つくづく、可愛らしさがあるといいなと、思ったものだ…


 四十歳を過ぎても、イケてる…


 正直、四十歳を過ぎても、賞味期限を切れていない(笑)…


 それほど、若くて、キレイだった…


 それほど、若くて、可愛らしかった…


 だから、憧れる…


 自分には、できないことだからだ…


 だから、憧れるのだ…


 私は、FK興産の会議室に向かいながら、そんなことを、考えた…


 そんなことを、考え続けた…


 つくづく、取締役が、似合わない…


 非常勤とはいえ、取締役になって、初めて、臨時の取締役会議に出席するにも、かかわらず、そんなことを、考えるとは…


 つくづく取締役の適性がない…


 そんな女だと、思った…



 そして、そんなことを、考えながら、送られてきた臨時の取締役会議の開催が、行われる会議室のドアを、開けた…


 勝手知ったる、なんとやら…


 この会議室は、これまで、何度も利用している…


 嫌というほど、利用している…


 私は、


 「…失礼します…」


 と、言って、会議室のドアを開けた…


 そして、会議室の中を見た…


 誰が、いるのか、見た…


 最初に目に入ったのは、ナオキ…


 藤原ナオキだった…


 FK興産社長の藤原ナオキだった…


 そして、次に目に入ったのは、伸明…


 五井家当主の伸明だった…


 これは、ある意味、驚きだった…


 なぜなら、五井家の当主である諏訪野伸明が、五井グループが、FK興産を支援するとは、いえ、わざわざ、取締役会に出席するとは、思わなかったからだ…


 なにしろ、FK興産は、従業員千人を擁するとはいえ、五井グループから、比べれば、吹けば、飛ぶようなチンケな会社…


 そんなチンケな会社に、五井家の当主たる、伸明が、わざわざ、やって来るとは、思いもしなかった…


 考えもしなかった…


 当たり前のことだ…


 規模で、言えば、五井の孫会社か、それ以下のチンケな会社…


 そんなチンケな会社に、五井家の当主が、自ら、やって来るはずが、ない…


 トヨタで、言えば、はるか、格下の孫会社か、その下の系列の会社に、社長や、会長が、出席するようなものだからだ…


 だから、驚いた…


 だから、ビックリした…


 そして、さらに、驚いたのは、伸明の隣に、和子がいたことだ…


 五井の女帝がいたことだ…


 一体、なぜ、この場に、五井の女帝が、いるのか?


 考えた…


 まさか、父兄の授業参観ではないのだから、伸明の様子を見に来たわけでは、あるまい…


 伸明は、頼りない…


 だから、この取締役会に出席した…


 そう、思った…


 そう、考えた…


 が、


 それは、最初だけ…


 最初だけだ…


 四十を過ぎた大の大人の男の動静を見張るために、この会議に出席するとは、考えにくい…


 当然、なにか、目的があるはずだ…


 そして、さらに、驚いたのは、その隣に、マミさんがいたことだ…


 伸明の妹であるが、血縁関係のない、妹のマミさんがいたことだ…


 これは、一体、どういうことだ?


 なぜ、マミさんまで、ここにいるのか?


 考えた…


 そして、率直に、それを、聞いた…


 「…あの…なぜ、五井家の方たちが、ここにいらっしゃるんですか?…」


 と、聞いた…


 誰にともなく、聞いた…


 独り言を呟くように、聞いた…


 すると、ナオキが、


 「…これから、臨時の取締役会を、するけれど、当社の規定では、必ずしも、取締役会に、取締役以外の人間が、出席しては、いけないと、いう規定は、ないよ…寿さん…」


 と、あらたまった口調で、言う…


 なにより、ナオキが、


 「…寿さん…」


 と、呼ぶのは、久しぶりだった…


 ナオキが、私を呼ぶのは、いつも、


 「…綾乃さん…」


 だったからだ…


 そして、それを、思ったとき、あらためて、この取締役会は、公的な場だと、思った…


 私的な集いではない…


 公式な場だと、あらためて、思った…


 なにより、私自身、会社で、ナオキから、


 「…綾乃さん…」


 と、呼ばれると、


 「…ここは、会社です…社長…寿と、呼んで下さい…」


 と、いつも、言っていた…


 ナオキは、私と二人きりになると、つい、気を許して、


 「…綾乃さん…」


 と、呼ぶ…


 それを、私が、


 「…社長…ここは、会社です…寿と呼んで下さい…」


 と、言うのが、定番というか…


 いつも、コントのようなやりとりを繰り返していた…


 だから、正直、たとえ、会社でも、ナオキから、


 「…寿さん…」


 と、呼ばれるのは、違和感があった…


 いや、


 違和感があり過ぎた(苦笑)…


 そして、同時に、ちょっぴり、寂しかった…


 ナオキから、


 「…寿さん…」


 と、呼ばれるのは、寂しかった…


 どうしても、そう呼ばれると、他人行儀に聞こえる…


 この場で、


 「…綾乃さん…」


 と、呼ぶことは、できないと、わかっていても、寂しかった…


 正直、矛盾するが、寂しかった…


 そして、そんなことを、考えながら、あらためて、この会議室にいる、人間を、見た…


 どんな人間が、この会議に出席しているか?


 知るためだ…


 五井家の面々が、3人…


 そして、社長のナオキ…


 私…


 他に、4人…


 そのうちの二人は、これまで、通り、FK興産の古参社員…


 他の二人は、面識がない…


 おそらく、銀行関連の取締役だろう…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、私が、そう思っていると、


 「…寿さん…席について下さい…」


 と、ナオキに言われた…


 どこか、緊張した表情で、言われた…


 私は、その言葉で、あらためて、ここは、取締役会だと、認識した…


 顔なじみの面々が、多いので、驚くと同時に、どこか、緊張感がなくなった…


 しかしながら、ナオキのその表情から、緊張感が、蘇ったというか…


 当たり前だが、ここは、取締役会だと、認識した…


 と、同時に、なぜか、マミさんが、席から、立ち上がり、会議室の全面の脇の方に、移動した…


 そして、いきなり、マイクを握り、


 「…これから、FK興産の臨時取締役会を開催します…」


 と、宣言した…


 そして、すぐに、


 「…今日の議題ですが、まずは、最初に、取締役社長、藤原ナオキ氏の解任を決議します…」


 と、宣言した…


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