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勇者とか身に余る。  作者: うめほし
出会ったのは運命。
3/3

ふつうのピアスで悪かったな。

女神に舌打ちをしてすぐに目が覚めた。

身体に重みを感じて起こしてみると、慈々が私の脚を枕に眠っている。


── ずっと付いててくれたんか…。


幼子の寝顔に嬉しく思いながら髪を撫でた。


── ああ、そう言えば。


女神にステータスを確認しろと言われた事を思い出し、ごそごそと身体を探る。

するとポケットに硬いものが入っているのを感じて取り出してみた。


「スマホ…?」


見た目は、文明の機器そのもの。

しかし知っている通り電源をいれると、そこには見慣れない画面が立ち上がった。


名前:綺凜

年齢:5歳

種族:人間


ジョブ:侍Lv.1、錬金術師Lv.1


Lv.1

HP 54/54

MP 30/30


力:10

防御力:8

魔力:13

魔法耐性:10

スピード:16


装備

頭:なし

胴:なし

アクセサリ:ふつうのピアス


スキル

【一閃】Lv.1。素早い太刀筋で相手を一刀両断する技。

【破壊】Lv.1。錬金術の基本。物体を破壊する。

【錬成】Lv.1。錬金術の基本。破壊した物体を同質量同物質の別の物体に錬成する。

【鑑定】Lv.1。対象のステータス、スキルを鑑定する。無機物に使うとその価値や付加機能などを見ることが出来る。


オートスキル

【経験値上昇】貰える経験値が5倍になる。

【経験値配分】貰った経験値の半分の経験値をパーティーまたはテイム済みの魔物に分配する。自分の貰う経験値は下がらない。


アイテムボックス

Lv.Max

アイテムを収納しておく為のスペース。

装備:なし

武器:三日月宗近、正宗、虎徹、雷切

アクセサリ:なし

アイテム:なし


加護

【マーテリア】万物の神の加護。錬金術が使えるようになり、魔力による無機物の操作が可能。


── なるほどパラメータはともかく、女神様とやらの加護は使えそうやな。


画面をスクロールし、一通り見終えた所で画面を落とす。

女神は私の潜在能力を買っていたので、パラメータはこれから上昇させていくものだと考えていいだろう。

経験値という言葉が出てきた事でそれも現実味がます。

スキルに関してもそうだ。

ジョブが侍と言うのもいい。


「ん、…。」


さてこれからどうして行こう、と考え始めた時、慈々が眠たそうに目を擦りながら目を覚ました。

考えるのは、後にしよう。


「あ…、私…。」

「おはよう、慈々。」

「ごっ、ごめんっ!重かったよね?」

「大丈夫。」


重ねて謝る慈々に苦笑する。

もう一度大丈夫だと告げれば、ようやく謝るのを止めてくれた。


「綺凜、もう大丈夫なの?」

「うん。」

「そっか。よかったぁ…。」


安心したのか、へにゃりと表情を崩す慈々。


── 可愛すぎか。


飼い猫を撫でる気分で、頭を撫でると心地良さそうに目を細めてからハッとする。

私から距離を取って顔を赤くする彼女を残念に思いながら見ていると、


「とっ、父さまと母さまを呼んでくる!」


と言って、部屋から出て行ってしまった。


── もうちょい、撫でたかったなあ。


などと思っていると、腹の虫がぐう、と鳴った。

ずっと寝ていたからお腹が空いたのだろう。

しばらくその状態で待っていると、慈々が二人の大人を引き連れて戻って来た。

二人とも慈々と同じ様に角がある。


「綺凜、と言ったか。私は慈々の父で飛廉という。…具合はどうだ?何か食べられるか?」

「はい。とてもお腹が空きました。」

「そうか。直ぐに用意させよう。」


堅苦しい話し方だが、悪い人ではなさそうだ。


「綺凜、私は慈々の母で白安と申します。まだ体調は万全ではないでしょうから、万全になるまでゆっくりここで養生なさってくださいな。」

「ありがとうございます。」

「ええ。貴女が居てくれた方が、慈々も話し相手が出来て嬉しいでしょうから。」

「母さま!余計なことは言わないでください!」


白安はとても優しそうな人だ。

慈々はまた顔を真っ赤にして怒ってはいるが、満更でもなさそうである。

ずっとここに世話になる訳には行かないが、体調が万全になるまではここに居させてもらおう。


「お言葉に甘えさせてもらいます。」


そう言って頭を下げる。

二人は微笑んで、飛廉は仕事があると席を外し、白安は食事を用意させると出て行った。

残った慈々が、ベッド脇の椅子に座る。


「ねぇ綺凜、あんな所で何してたの?」

「…あんな所?」


慈々の質問に質問で返した。

何をしていたと言われても答えられないのだ。


「森。人間領からあそこまですっごく遠いのよ?」

「……。」


ここは、記憶喪失という設定にでもしておくべきか。

あのポンコツ女神め、こういう時の対処法ぐらい教えてくれても良かったものを。


── まあ、この世界の事も分からんわけやし、そう言っても違和感ないか…。


「分からん…。覚えてない。」

「……、そっか。」


慈々は悲しそうな顔をした。

記憶が無いことに悲しんでくれているのか、それとも同情しているのか、いずれにしても健気な子だ。


「慈々、ここは慈々の家なんやろ?」

「うん。」

「慈々の家ってどこにあるの?」

「鬼族の領土の、端の方。一番人間領に近いんだけど、それでも国境の森はすごく広いから、遠いんだけどね。」

「ふうん。」


鬼族、というのは慈々たちのような種族のことを指しているのだろう。

後は人間と、どんな種族の人達がいるのだろうか。


── こればっかりは経験した方がよさげやな。


それから食事を待つ間まで、慈々の話を聞いた。

彼女がある程度身分のある家の子であるのは分かっていたが、どうやらこの地域の領主さまの御息女らしい。

その領主さまである飛廉は、戦闘が得意な鬼族の中でも腕が立つらしく、以前は冒険者で、白安も一緒に冒険していたのだとか。

慈々はそれに憧れていて、将来的には自分も冒険者になって世界中を回るのだと話してくれた。


── 冒険者か…。世界が危機なら、そういう系の依頼も多いよな。


「それでね…、って綺凜、聞いてるの?」

「うん、決めた。」

「え?」

「慈々。私も冒険者になる。」

「本当っ?じゃあ、一緒に冒険しよう!」


── えっ、あー。そう来たか。


参った、慈々を連れていく訳には行かない。

私の旅は恐らく、普通の冒険者が行う旅よりずっと危険で、目的も大きい。

確かにパーティーを組むのも悪くはないけど、彼女がそれに匹敵する能力を持つかどうかも分からない。


「…慈々が、強くなったらな。」

「本当?絶対、ぜーったいよ?」

「ウン。絶対な。」

「約束ね!」

「うん。」


とりあえずの返事はこれでいいだろう。

慈々はもう一緒に冒険する気満々でいるが、彼女を危険な目に合わせたくないというのが本心。


── こんな可愛い子、傷物にしたら飛廉に殺されそうやしな…。


はしゃぐ慈々を見て、密かに冷や汗をかくのであった。

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