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第五十四 事件後

前回の話で、ご都合主義が過ぎるのではというコメントが。

なので、言い訳みたいな説明を入れてみました。

取り敢えずこれで納得してください。

出来なくても、ご都合主義タグがあるので見逃してください。

誤字脱字の可能性大です。

リベオール教団の引き起こした騒動は無事終結し、その翌日。

事後処理の為にオルトから呼び出しをくらったコオリとライラは、冒険者ギルドへと続く道を歩いていた。


「くぁ……」

「まーた欠伸して」

「いや、眠い……」


全身から気怠げな雰囲気を醸し出すコオリに、ライラ小さく溜息を吐いた。


「昨日と今日で変わりすぎだよ、もう……」

「いや、だからこれが素だって」

「それは知ってるけどさあ」


コオリの返答に、ライラは何処か釈然としない様な声をあげる。

別にライラも緩い時のコオリが嫌いという訳じゃない。寧ろ真剣な時とのギャップもあって微笑ましいと思っている。

しかし、恋人のカッコいい姿をずっと見ていたいというのが乙女心というモノだ。

真面目な姿がたった一日でだらしなくなるのだから、恋する乙女としては文句の一つも言いたくなるだろう。


「せめてギルドマスターの前ではちゃんとしててよ?」

「ん……努力はする」

「そこは断言する!」


そんな風にライラにドヤされながら二人は歩き、暫くしてコオリ達は冒険者ギルドへと到着した。


「あ、二人も来たんですね」


コオリ達がギルドに入ると、丁度シェリルと出くわした。どうやらシェリルも事後処理の為に呼ばれた様だ。


「おはようございます、シェリルさん」

「どうも」

「おはようございます。コオリ君、ライラちゃん」


簡単な挨拶を交わした後、自然と話題は昨日の事件の事へと移っていった。


「調子はどうですか?コオリ君は昨日大活躍だったみたいですけど」

「特に何も無いですね。強いて言えば眠いくらいです」

「あはは。それは良かったです」

「聞いてくださいシェリルさん!」

「へ?」


コオリの言葉に朗らかに笑うシェリルであったが、急に詰め寄ってきたライラに目をパチクリとさせた。

困惑の表情を浮かべたシェリルは、ライラに何かあったのかと尋ねる。


「え、えっと、どうしたのライラちゃん?」

「コオリがまただらしなくなっちゃったんです。シェリルさんからも何か言ってください!」

「え、え?」


いきなりの事でオロオロするシェリルを見て、コオリはため息混じりにライラを咎める。


「アホな事言うなライラ。シェリルさん困ってんじゃねーかよ」

「うっ……ゴメンなさい、シェリルさん」


コオリに指摘されて罰が悪そうにするライラ。

その姿に苦笑しながらシェリルは首を振る。


「別に大丈夫ですよ、ライラちゃん。けど、せめてもう少し説明してほしいかな」

「……はい」


しょんぼりと落ち込むライラに、シェリルは笑いながら頭を撫でる。


「……なんか仲良くなってないか?」


その光景にコオリは首を捻る。シェリルがライラの頭を撫でるなど、昨日まではあまり考えられない行動だなと思ったのだ。


「仲良くなったんだ」

「はい、昨日の依頼で」

「ふーん」


二人が笑顔でそう言うので、詳しい事を追求するのは野暮だろうと判断する。

しかし、その判断はライラには不満だった様で。


「……聞かないんだね」

「突っ込んでそれが藪だったら、何が出てくるか分からんし」

「……」


ジト目を向けてくるライラに肩を竦め、そのまま視線を彷徨わせる。

すると、受け付けの奥から出てきた女性と目が合った。


「あ、もう来ていましたか。ギルドマスターがお呼びですので、こちらへ」


どうやら雑談はこれまでらしい。

ライラもジト目を止め、受け付け嬢に促されるままにギルドマスターの部屋へと向かう。


「待っていたよ」


コオリ達が部屋に入ると、そこにはオルトの他にエドムスもいた。どうやら既に来ていた様だ。

オルトは手振りでコオリ達に座る様に促し、全員が席に着いたのを確認してから話を始めた。


「さて、まずはご苦労様と言っておこう。君たちの活躍のお陰で大きな被害もなく教団の目論見を潰す事が出来た。冒険者ギルド・テイレン支部のギルドマスターとして礼を言う」


そう言って深々と頭を下げるオルト。

ライラは頭を下げられると思っていなかったのか、慌てて止めようとしたが、コオリにそれは遮られた。

組織の長としての礼なのだから、それを止めさせるのは逆に礼を欠く行為であり、体面上の問題もあるとコオリは判断したのだ。


「(お前元王女だろ)」

「(あはは……)」


コオリのジト目の追求にライラは目をそらす。元とは言えライラは王族だ。それなのに何故分からないとツッコまれて、ライラとしても頭を掻くしかない。

コオリは追求するだけ無駄だと思い、意識をライラからオルトに戻す。


「今回の出来事では司祭クラスの人間も捕まえる事が出来た。これは大きな功績だ。全員に報酬を上乗せ。白金貨五十枚が支払われる」


おおーとその場の全員が声を上げる。

上位冒険者のシェリルとエドムスや、隠れ財産を大量に所持するコオリとライラにとっては大した金額では無いが、それでも大金なのは変わらない。

そして、オルトは更に話を続ける。


「更に、教団のアジトの発見、儀式の阻止などの功績から、コオリ君には白金貨が二十枚追加される」


これにはコオリも少し驚く。コオリ本人としては、報酬か追加されるなど思ってもみなかったのだ。


「良かったですね。コオリ君」

「まあ、妥当な金額ではあるな」


上位冒険者のシェリルとエドムスは特に驚いていなかった。緊急依頼の経験があるから、特別報酬については知っていたのだろう。


「それにしても、本当に良くやってくれた。詳しい事は被害者たちから聞いたが、出来れば君の口からも聞いてみたい。構わないかな?」

「大丈夫です」


当時の状況を把握したいと言うのは、オルトの立場からすれば当然の事であるので、コオリが拒絶する必要は感じなかった。

取り敢えず、アジトでフレデリックたちの心を折り、無抵抗になった所でライラたちがやって来た部分まで説明した。


「……ふむ。幾つか質問があるのだが、良いかな?」

「どうぞ」

「まず、召喚陣を斬ったというのは本当かい?」

「ええ」

「参考までに聞くが、どうやって?」

「そんなに難しい事じゃ無いですよ。あの時の魔法陣は魔力で描かれてましたから、そこに魔力をぶつけて魔法陣の魔力を散らしただけです。斬ったのは、斬撃に魔力を乗せたのでそう表現しただけですね」


コオリがした事は一見難しそうに見えて、原理としては簡単なのだ。

例えるなら、インクで描いた絵に他のインクをぶちまけただけ。それで元の絵が分からなくなるのと同じ様に、魔法陣も効果を失い霧散したのだ。


「……成る程。要は魔法陣に魔法をぶつけて破壊するのと同じ訳か」


オルトが言ったのは一般的な魔法の対抗技術の事である。

魔法というのは、魔力を操作して術者の望む事象に魔力を変換する技術だ。なので、その前段階である魔力の事象変換の時に術者とは違う影響下の魔力が混ざると、事象の変換が出来ず魔法は失敗する。

コオリの飛剣は種別としては無属性魔法に分類されるので、オルトの言ってる事は間違っていない。


「では次だ。話を聞く限りの君の実力だと、儀式の直前なんて綱渡りをしなくて阻止できたのでは?そっちの方が孤児たちも安全だったと思うのだが」

「先に動くと教団が孤児たちを人質にとる可能性が高かったので。人質にされたら、助けるのは手間ですし」

「しかし、儀式の方法によっては孤児たちは殺されていたのでは?」

「死体で大丈夫なら襲撃の時に生け捕りなんてしないでしょうし、儀式の過程で殺されそうになったら、その時は全力で阻止してましたよ」

「それは絶対かい?」

「ええ。その代わり、アルフレッドたちの生死は二の次なりますけど」


コオリがあの時動かなかったのは、教団の情報と孤児の命、それらを踏まえての上で最良と思われる行動と判断したからだ。

孤児たちの命が第一だが、出来れば情報も獲得したい。あの時は孤児たちも捕まっていただけなので、直ぐには手出しをしなかった。自暴自棄にでもなられたら、それこそ何するか分からかったから。

勿論、儀式が孤児たちに被害をもたらすと判断したり、アルフレッドが何か手を出そうとしたした瞬間、直ぐに行動出来る様に気を張ってもいたが。


「つまり、即座に動かなかったのはどんな事態にも対応出来ると判断した上で、ギルドの利益を尊重したと?」

「ええ。あの時はまだそれだけの余裕がありましたから」


オルトは少しばかり考え、コオリの言い分に納得した様に頷いた。


「分かった。そういう事なら納得しよう」


オルトは粗方聞きたい事は質問し終えた様なので、今度はコオリが逆に尋ねた。


「所で、捕まっていた孤児たちはどうなりました?」

「ああ。彼等は他の被害者と同じ様にギルドの方で保護している。当日に捕まったから、他の被害者たちよりも衰弱はしていなかった。……まあ、それでも元々の環境故か、何人か危ない子もいたけど。それでも、直ぐに回復はするだろう」


どうやら孤児だからと言って不遇な扱いを受けている訳では無い様だ。

その事実に、コオリはそっと胸を撫で下ろす。


「そう言えば、コオリ君が主催する食事会に彼等は招待していると聞いたが」


ふと思い出した様にオルトがそう聞いてきた。

この質問にはコオリも目を丸くした。まさか、ギルドマスターがそんな事まで知っているとは思わなかったのだ。


「……良く知ってますね」

「ユルが騒いでいたからね」

「……ああ、それで」


気安いギルド職員の名前が出てきて、なんとなくコオリは納得した。


「場所をとってくれたシェリルさんには悪いですけど、流石にあの騒ぎの直ぐ後にやるのは……」

「まあ、そうでしょうね。私も同感です」


コオリが最も料理を食べさせたい孤児たちがそれどころじゃない状況なのだ。流石にそれではやる意味が無い。

シェリルも同じ様に考えたらしく、コオリの考えに特に文句も出なかった。


「ふむ……なら、ギルドでやるのはどうだろう」

「へ?」


オルトの提案にコオリたちは疑問符を浮かべる。

しかし、エドムス一人は何か気づいたらしく、ああ成る程と納得していた。


「エドムス君は知ってると思うが、緊急依頼が無事終えたら、関係者への労いやらなんやらを込めてギルドの酒場で宴会をやるんだ。その時、コオリ君が料理を振る舞えば良いんじゃないかと思ってね」

「いや、だから孤児たちが居ないとやる意味が」

「それは大丈夫。今回の件では孤児たちも関係者だ。それに、場所はギルドの酒場。まだ孤児たちを外に出すのは許可出来ないが、ギルド内部なら融通は利く」


ふむ、とコオリは考え込む。オルトの提案は一考する価値のあるモノだ。

確かに、このゴタゴタでは孤児たちに余裕は無いだろう。しかし、保護しているギルドの中ならどうだろうか?

冒険者ギルドというのは荒くれ者の集まりだ。それはある意味で最も偏見とは程遠い場所と言える。社会的な弱者の孤児も、街の酒場よりもギルドの方がよっぽどくつろげるだろう。

問題があるとすれば、荒くれ者の集まりなだけあってガラの悪い連中も多い事だが、今の孤児たちにはギルドの後ろ盾がある。難癖を付けられたとしても、ギルドが保護しているのだから心配する必要は無いだろう。……というより、そんな輩がいたらコオリが出張る。


「酒の席だし、君が心配している様な事はならないだろうさ。冒険者は呑んだくれの集まりだから、酒を与えていれば勝手に上機嫌になる。酒癖が悪い奴に関しても、空気をぶち壊せば周りの奴らにボコボコにされるの分かってるから、宴の席では大人しい」


オルトの補足にコオリは頷く。

特に断る理由も無いので、この話を受けようと思う。


「分かりました。それじゃあ、お願いします」

「了解だ。あ、材料費やその他諸々に関してはギルドが持つ。存分に振舞ってくれ。高レベルの料理スキル持ちの料理だ、期待しているよ」

「結局アンタが食いたいだけか!」


コオリのツッコミにその場の全員が笑い出す。

期せずして、コオリが宴の席で料理係になる事が決まったのだった。

さて、もう直ぐテイレン編?が終了する訳なのですが、テイレン編が終わったら一度更新を停止する事にしました。

あ、行き詰まったとかでは無いので悪しからず。

ただ単に、もう一つの作品である『主人公体質』と足並みを揃えようかと思ったのです。

突然の事で迷惑を掛けると思いますが、どうかご容赦を。

取り敢えず、『主人公体質』の方が20万文字を越えたらまた再開する予定です。

大体、一か月から2カ月ぐらいで再開すると思うので、どうか皆さん、また読んでください

みづどり


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