表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/58

第五十三 リベオール教団 後編

ちょっと遅くなっちゃいました。

ごめんなさい。


誤字脱字の可能性大です。

黒い法衣を着た集団と、騎士の様な装備に身を包んだ男たち。

地下通路を抜けた先でコオリたちの前に現れたのは、臨戦態勢で待ち受けていた教団関係者であった。


「……これはまた如何にもな演出なことで」


王道、悪く言えばありきたりな展開に、コオリは一人嘆息する。

そんなコオリの反応には気付かなかったのか、法衣の集団の中から胡散臭そうな男が前に出てくる。


「お初にお目にかかります。私の名はフレデリック。リベオール教団の司祭の位階を授かる者でございます。以後、お見知り置きを」


フレデリックと名乗った男はそう言って一礼した。

簡単に自己紹介を始めた事にコオリは面食らうが、それ以上に驚く箇所が混じっていた事に気がついた。


「司祭か。教団は尻尾を出さない事で有名なんじゃなかったのか?」

「おや、よくご存知で。普段ならば計画の大半は下の者にやらせているのですが、今回は大切な魔の儀式。流石に捨て駒共には任せられないのですよ」


コオリの予想は外れてなかった様で、やはり高位の役職の者も充てがわれていたらしい。

司祭という位は地球の宗教では上から五番目の位である。リベオール教団の序列が地球のモノと同じかは定かでは無いが、それでも教団内部ではそこそこの立場にいる筈だ。


「さてさて、名を名乗られたら名乗り返すのが礼儀と言う物。私は名乗った訳でございますが、冒険者様のお名前も教えて頂けるでしょうか?」


コオリがフレデリックの立場について考察していると、そんな言葉が飛んできた。

一瞬偽名を名乗ろうかと考えるが、どうせ調べられているだろうと判断して普通に名乗る。


「コオリだ」

「コオリ様でございますか。素敵なお名前ですねえ」


軽薄な笑みを浮かべ、上っ面だけの敬語で世辞を飛ばすフレデリック。

まるで道化師の様なその態度は、より一層彼の胡散臭さを掻き立てる。


「それではコオリ様。この場所には一体何用で?」

「白々しい事言ってんじゃねーよ。テメエ等潰して捕まってる奴ら取り戻す為に決まってんだろ」

「皆を、返せ!!!」


フレデリックの態度にルウが痺れを切らし、今まででは考えられない様な大声で叫ぶ。


「ふむ、そこの薄汚い少女は……ああ。さっき生贄の為に補充した孤児たちの仲間ですか」


ポンと手を叩いて納得するフレデリック。

そんなフレデリックの反応に、コオリは一つ気になる事があった。


「補充だと?」

「ええ。生贄を集める部隊が何者かによって壊滅させられてましてね。それで急遽スラムから集める事になったのですよ」


予定通りに行かないモノだと嘆くフレデリック。


「不服そうだな」

「それはそうでしょう。生贄は召喚される魔獣への供物。計画の中でも最重要なモノの一つを事前に準備出来ないなど有ってはならない事です。……野盗に紛れ込ませたのは失敗でした」

「……野盗?」


最後のフレデリックの呟きに、コオリとルウがピクリと反応する。何となく身に覚えがあったのだ。

そんな二人の反応には気付かないで、フレデリックは嘆息しながら説明した。


「ええ。効率良く生贄を収集する為に部下たちを野盗へと送り込んでいたのですよ。その所為で運悪く野盗共と一緒に部下たちも討伐されてしまった様で。精鋭部隊を送り込んだですけど、どうも相手はそれ以上の凄腕だったみたいです」

「……」


フレデリックの話を聞く限り、その凄腕とやらは十中八九コオリだろう。どうやらルウを捕まえていた野盗たちの取り引き相手は教団だった様だ。恐らく、装備も連携の練度も桁違いだった男たちが、フレデリックの言っていた部下なのだろう。


(助ける理由が増えたか……)


孤児たちが捕まった理由の一端が自分に有ると感じたコオリは、尚の事助ける決意を固くする。

そんな風にコオリが内心で決意していると、フレデリックが話題変更とばかりにルウの事を見つめだした。


「それにしても、まさか仲間を取り戻す為に危険を顧みずにやってくるとは思いませんでした。いやはや、素晴らしいまでの絆、この場合は家族愛でしょうか?」


脱帽だと言いたげな様子で首を振るフレデリック。だが賞賛する様なセリフに反し、彼の顔に浮かぶのは嘲笑だ。


「薄汚い孤児たちにそんなモノが存在するとは驚愕ですね。仲間の為、家族の為。ああ、私ほろりと反吐が出そうです」

「……黙れ」

「血の繋がりもない、ただ弱い者同士が身を寄せ合ってるだけな薄っぺらな関係。そんなくだらないモノの為に態々命を捨てに来るなど、滑稽にも程がある」

「……黙れ」

「まあ、捨てにきた命は我々が有効活用してあげましょう。孤児なんて存在する価値など皆無なのですから、こういう時ぐらい役に立って欲しいですね」

「黙れ、黙れ、黙れ、黙れっ!!!お前たちみたいな奴らが、ルウたちの関係を、存在価値を、勝手に決めるなっ!!!」


仲間の事を侮辱され、激昂したルウがフレデリックへと飛び掛かろうと駆け出し


「待て待て待て」


その寸前でコオリに抱き上げられた。


「全く、飛び出すなってさっき言ったろうが。あんな安い挑発なんか無視だ無視」

「でも!」

「でもじゃない。どうせあの屑司祭の狙いは飛び掛かったルウを捕まえる事だ。人質にでもなったら助けられるもんも助けられないぞ」

「うっ……」


嘆息混じりにコオリに諭され、ルウは次第に大人しくなっていく。


「もう興奮するんじゃないぞ」

「……分かった」


大人しくなったルウを降ろし、軽く頭を撫でてからフレデリックへと視線を向ける。

その様子を見ていたフレデリックは、思惑が外れた事で残念そうに肩を竦めていた。


「おや残念。折角良い盾が手に入る所でしたのに」

「よく言うな。さして残念そうな顔してない癖に」

「まあ、掛かってくれば儲け物程度にしか考えてませんでしたから。むしろ上手くいきそうになって焦りましたよ」


性懲りもなく挑発をし始めたフレデリックに、コオリは呆れた表情になる。


「アンタ、こんな子供挑発して楽しいか?」

「ええ。馬鹿な子ほど可愛いと言うでしょう?」

「確かに言うが、こんな状況で使われる言葉じゃねーよ」

「良いじゃないですか。子供好きなんですよ」

「絶対嘘だろそれ」

「嘘じゃないですよ。小さな子供が絶望する時の表情なんて大好物です」

「黙れ変態」


恍惚とした表情で語るフレデリックにコオリはドン引きする。隣を見れば、興奮していたルウでさえ一歩引いていた。


「はあ……。何故誰もこの崇高な感性を理解してくれないんでしょうか」

「崇高じゃないからだよ。崇高って言葉の意味分かってんのかアンタ」

「分かってるからこそ言ってるんです。そこの少女の仲間が既に供物とされていると知った時の顔とかを想像すると、年甲斐もなく……おっと、これは失敬。失言でした」


「……え……?」


弁舌をふるう事に熱くなり過ぎたのか、慌てて口元に手をやるフレデリック。

しかし、一度口から出た言葉は戻る事はない。


「……皆が、死んだ?」

「……はあ、失敗しました。直前まで秘密にするつもりだったのですが」


やらかしてしまったと後悔するフレデリック。まるで悪戯がバレた子供の様に落ち込むフレデリックを、ルウが呆然と見つめる。


「……嘘だ」


信じられない、信じたくないと、小さな身体は語っていた。


「嘘じゃないですよ。あの孤児たちは既に生贄として儀式の糧となってもらいました」

「……嘘だ。皆が死んだなんて、そんなの嘘だっ!」

「この場に孤児たちがいない事ぐらい分かるでしょう?なんだったら、その時の詳細を今ここで語ってあげましょうか?」

「っ!?」


身を固めるルウの反応に気を良くしたのか、フレデリックは物語の読み聞かせる様に喋り始めた。


「いやはや、あれは傑作でした。薄汚い餓鬼共が痛いと叫び」

「……やめろ」

「許しを請い、激痛にのたうち周る姿は何とも言えない光景でした」

「やめろやめろ」

「そして言うのですよ。どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないの、って」

「う、うう……うああぁぁ!」


顔に愉悦を浮かべ、嫌がるルウに語り掛けるフレデリック。


「……もう、やめて……!」

「おやおや?聞かなくて良いのですか?貴女の仲間の最後を。もう二度とーー」


残虐な狂気をその身に宿した男は、幼気な少女へ更に言葉の刃を突き付けようとし、


「……おい、そろそろ黙れよ。この大法螺吹きの屑野郎が」


圧倒的なまでの殺意の乗った言葉が、逆に首へと突き付けられた。


「っ?!?!」


死ぬ、と。瞬間的にフレデリックはそう悟る。

魔法を唱えてる訳でも、武器を構える所か一歩たりとも動いていない少年に、一瞬にして首を落とされるという未来が見えた。

明確なまでの死のビジョン。濃厚過ぎる死の気配。魂そのものを揺さぶる様なコオリの殺気は、フレデリックの昂った狂気を真っ向から叩き潰した。


(何だ、今のは……?幻覚、だと?)


圧倒的過ぎる殺気を前にしても、戦闘職ではない彼にはそれの脅威を測る事が出来なかった。危険だと漠然と本能が訴えるだけであり、対峙している者が如何にヤバい存在なのかを察する事は出来ていなかった。

周囲に居た武装した者たちは、殺気を浴びた直後に最大限の警戒態勢をとったのだが、動揺するフレデリックはそれすら気づかない。

只々混乱する思考を振り切り、余裕そうな態度を演じ、内心の怯えを隠そうとする事しか頭の中に浮かばなかった。


「法螺吹きとは心外ですね。いつ私が嘘をついたと?」

「はっ、失言でしたの辺りから全部嘘だろうが」

「……ほう。何故貴方にそれが分かるのですか?」

「アンタ自身が言ってただろ。孤児たちを捕らえたのは、召喚した魔獣に供物として捧げる為だって」

「……確かにいいましたが、それが何か?」


ピクリと、フレデリックの眉が動く。

その反応をコオリは見逃さず、畳み掛ける様に言葉を紡ぐ。


「逆に聞くが、魔獣はまだ召喚されてないみたいだが、だったら孤児たちは何に捧げたんだ?」


立ち尽くすルウの頭を撫でながらも、コオリは鋭い視線をフレデリックへと向ける。


「ああ、魔獣はもう召喚してあるなんて戯言はほざくなよ?召喚出来て無い事ぐらい分かりきってんだよ」


コオリに睨まれたフレデリックは一瞬だけ身体を強張らせるが、取り繕う様に空咳をして、やれやれと肩を竦めてみせた。


「……どうやら確信しているみたいですね。何故分かったのですか?」

「一、既に魔獣を召喚しているなら大人しくさせておく理由がない。この場で暴れさせるか、街に放すなりすればいい。

二、魔獣なんて危険な代物が、俺の危険察知に引っかからない訳がない。

三、これが一番の理由だが、まだ儀式の途中な事ぐらい見りゃ分かる」


フレデリックと会話をしている間、黒い法衣の男たちは一言も話していない。コオリの殺気を浴びて尚、一度も動揺らしい動揺を見せる事など無かった。騎士らしい集団も、警戒するだけで決して動く事は無かった。

それはつまり、


「儀式はまだ途中。そこの法衣の連中が進行役で、武装している奴らが警戒と儀式の守護、アンタは時間稼ぎ。違うか?」

「……」


ギリッ、と。歯軋りの音が聞こえてくる。それはフレデリックか、はたまた他の誰かから発せられたのかは分からない。

分かるのは、コオリの予想が真実に近いという事である。

コオリに対する怯えも忘れ、フレデリックは静かにコオリの事を睨む。


「……鋭いというのも厄介ですね」


それはつまり、遠回しにコオリの予想を認めた事と同じである。


「……えっと、どういう事……?」


沈黙が周囲を包む中、ルウだけが状況についてこれないでいた。

そんな様子のルウに、コオリは簡潔に説明してみせる。


「つまり、あの司祭の言った事は全部時間稼ぎの出鱈目だったって事だ」


コオリの説明を直ぐに理解出来なかったみたいだが、次第にルウの表情は明るくなっていく。


「それって……!」

「ああ。ルウの仲間はまだ生きてる」

「あくまで「まだ」ですけどね」


先程までの絶望はなくなり、ルウの全身から安堵の思いが発せられた。フレデリックの茶々ですら、今のルウには効いていない。

その事実に、フレデリックは残念そうな顔をする。


「おや、つまらないですね」

「……皆が、生きてる。だったら、助けられる」


助けてみせると、そう全身で語るルウ。その瞳には、決して諦めないという苛烈な意思が宿っていた。

しかし、フレデリックはそんな彼女に嘲笑を向ける。


「残念ですけど、現実はそんなに甘くないですよ。……おい」

「はっ!」


フレデリックが武装集団の中の一人に声を掛け、その人物がフレデリックたちの後ろにある通路へと消えたのを確認してから、コオリたちの方へと向き直った。


「さて、と。そろそろ終わりにしましょうか」

「何だ?負けを認めて、大人しく捕まる気になったか?」

「まさか。残念ですけど、今回は私たちの勝ちですよ」


勝ち誇るかの様な笑みを浮かべ、フレデリックは語る。


「先程貴方が言った様に、私は時間稼ぎをしていました。間抜けにもそれに付き合ってくれたお陰で、もう直ぐに儀式は完了しそうです」

「そんなっ!?」

「まあ、私も鬼ではありません。散りゆく仲間の最後ぐらい、貴女に見せてあげましょう。だから、どうか絶望してくださいね」


負の感情を顔面に塗りたくった様な、どす黒い笑みを浮かべてフレデリックは言う。

丁度その時、奥の通路からさっきの男が戻ってきた。その後ろには更に五人の男がやってきて、車輪の付いた巨大な檻の様な物を引いていた。

その中には二十人以上の人間が閉じ込められており、その半数はまだ幼い子供、ルウの仲間の孤児たちであった。


「良いタイミングですね。さあ、感動の再会です!」

「皆っ!!」


檻の中の孤児たちもルウへと気づいた様で、驚愕の声が上がる。


「ルウっ!?何でこんな場所に!」

「早く逃げるんだ!!」


捕らわれて尚ルウの事を心配する孤児たち。


「嫌だ!皆を助けるんだ!!逃げるなんて、するもんか!」

「言うことを聞くんだルウ!!」

「嫌だ!」


ルウが檻の方へと駆け寄ろうとするが、そこにフレデリックと武装した男たちが割って入る。


「残念ですが、この先には行かせません。幾ら貴女が素早い犬系獣人だとしても、我らが教団の剣たる『暗黒騎士団』をすり抜ける事など不可能ですよ」


武装した男たち、暗黒騎士団と呼ばれた彼らは、一様に剣を構えて行くてを阻む。


「分かったならそこで大人しくしていなさい。そして見るが良いです。自分の仲間の死ぬ時を!」


そして、黒い法衣の男たちが一様に何かを唱え始める。

それに合わせ、大気中の魔力が鳴動する。徐々に魔力は禍々しさを増し、次第にそれが空中で光始めた。

毒々しい紫色、鮮血の様な赤、光すら飲み込む黒。幾つもの邪悪な色が混ざり合い、幾つもの記号を描き始める。


ーー魔法陣。


空中に現れたのは魔法陣であり、それが都合七つ。それらは不規則に回転し、重なり合い、球と為す。


「さあ、阿鼻叫喚の幕開けです!」


フレデリックが哄笑を上げる。黒い法衣の男たちもそれに続き、邪悪な言霊を紡ぎ出す。


「「「「邪悪にして無垢なる悪よ、我らの下へと現れ給え。その僕たる悪なる獣よ、我らの呼び掛けに、応え給え!」」」」


言霊に呼応するかの如く、空中の魔法陣が一層に輝きを増す。


「さあ、魔獣よ!供物を喰らい、地獄の景色を見せてくれ!」

「嫌だ、皆っ!!!」


しかし、ルウの叫びも虚しく、魔法陣は尚の事暗く輝く。

そして、


「はい、お疲れさん」


ーーバラバラに切り裂かれた。


「「「「……は?」」」」


その誰もが予想しえなかった光景に、コオリ以外の全員が間抜けな顔をする。生きる事を諦めていた者、仲間を逃がそうと必死になっていた者、仲間を助ける為に必死になっていた者、地獄を望んでいた者。その全てが、例外無く絶句した。

切り裂かれ、雲散霧消した魔法陣。その信じられ無い様な現実に暫し放心していたが、正気に戻ったフレデリックはそれをやったであろう張本人を怒鳴りつけた。


「き、貴様!一体何をした!」

「ん?」


魔法陣を切った張本人、コオリは、ショートソードと片手剣の氷装を展開した金剛杵を弄びながら、フレデリックの問いに答える。


「見りゃ分かるだろ。切ったんだよ」

「切っただと!?そんな、一体どうやって!?」

「別に難しい事じゃないだろ。モンスターハウスを経験した冒険者だったら出来る事だよ」

「モンスターハウス……?」


疑問符を浮かべるフレデリックに、コオリは淡々と説明する。


「モンスターハウスってのは、魔法陣からモンスターがわんさか出てくる部屋の事だ。モンスターを止めるには、吐き出してる魔法陣を壊すんだが、召喚だって似たようなモノだろ?」

「っ!?」


そう、別にコオリは難しい事はしていないのだ。ただ単に、モンスターハウスの魔法陣と召喚が似たようなモノだと当たりをつけ、【堕者のダンジョン】と同じ要領で出てきた魔法陣を『飛剣』で切ったのだ。


「アンタが時間が経つのを待ってた様に、俺も召喚する直前を待ってたんだよ」


だからこそ、コオリはフレデリックと会話をしていたのだ。孤児たちの安否を確認し、その上で最も手っ取り早く済む瞬間を待つ為に。


「馬鹿な!ならば、もし召喚が違う方法だったらどうするつもりだったのだ!?」

「戦ったに決まってんだろ」

「なっ!?」


コオリの解答にまたもや絶句するフレデリック。天災級の怪物と戦うと即答したコオリの事を、彼は理解出来ないでいた。

しかし、コオリは何てこと無しに言う。


「別にやろうとすれば天災級程度、一撃で倒す事ぐらい訳ないんだよ。ちゃんと対処出来る上で、儀式が終わるのを待ってただけだ」


余りに非常識な言葉。しかし、淡々と述べられた事により、それが事実なのだと直感的にフレデリックは理解した。


「ぐっ、ならば!やれ、暗黒騎士団の精鋭たち!目の前の冒険者を殺せ!!」


コオリの事を最大の脅威と認識したからこその命令。その行動自体は、無謀ではあるが間違って無い。

ただ、


「なあ、舐めてるのか?」


実行する事が出来ないだけで。


「「「「っ?!!?」」」」


フレデリックたちは恐慌した。尋常ならざる威圧感を前にして、彼らの中のあらゆる物がへし折れた。

直ぐにでも頭を地面に擦り付けたくなる様な重圧を感じ、恐る恐る彼らはその原因へと視線を向ける。

そして後悔した。


ーーそこには紅蓮の龍がいた。


勿論、現実に存在していた訳ではない。単にコオリから放たれるプレッシャーが、絶対強者の似姿を、紅き龍を幻視させたのだ。


【龍の威圧】


それはコオリが龍モドキから奪い取った、最強種の力の一端である。

その効果は、自分よりも格下の存在を強制的に威圧し、屈服させるという物。

コオリはそれを無意識の内発動し、フレデリックたちの心を折ったのだ。


「あ、ああっ……」


もはや其処にはさっきまでの狂気は無い。あるのはどうしようもない程の恐怖と、何故敵対してしまったのかと言う後悔だった。


「さて、と。それじゃあ、始めようか」


ゆっくりと、龍が動く。

意識が逃げろ、抵抗しろと叫ぶが、身体が言う事を聞かない。

そこにあるのは絶対的な強者と、抵抗すら出来ない弱者。


皮肉にも、最も原始的な悪たる力の暴力に、悪を是とする教団側が屈服するという形が、其処にはあった。

取り敢えず、これでハイライトは終了かと思います。

予定では、後二・三話ぐらいやって、テイレン編は終わりかと。

まあ、予定通りに行く事なんて皆無なんですけど

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ