第五十二 リベオール教団 中編
どうも、お久しぶりです。みづどりです。
我らの天敵たる不条理を乗り越え、ようやく更新を再開出来ます。
読書の皆様には、更新停滞していた事へのお詫びと共に、今後ともよろしくお願い申し上げたく思います。
尚、今回の話は本来だったら二部構成だったのですが、なんとなく三分構成にしました。
取り敢えず、今日明日じゅうに後編も更新する予定となっております。
あ、誤字脱字の可能性大です。
「ここか」
男たちを氷漬けにして放置した後、コオリは教団のアジトである廃墟に到着していた。
所々が崩れ、今すぐにでも倒壊してしまいそうな廃墟。ボロボロで人が使用しているなど思えないが、この下にルウの仲間がいる。
「皆、大丈夫かな」
不安そうにルウが零す。
「分からない。……けど、ヤバそうな感じはしないから、儀式自体はまだ終わってないかもしれない」
ルウを安心させる為、スキル『危険察知』によって得た感想をルウへと伝える。
「本当!?」
「待て落ち着け」
すぐにでも廃墟へと突入しそうなルウを宥め、勝手に行動しない様に抱え上げる。
「大人しくしなさい。先に行った所で捕まるのがオチだ」
「……でも、皆が心配。早く助けたい」
「気持ちは分かる。でもな、どう動いたって時間は変わらない。もうこの騒動は最終局面だ。どんな結果であろうと、終わりは直ぐにやってくる」
コオリがルウの仲間を助けるか、教団が儀式とやらを成功させるか。既に結果は二つに一つだ。小さな子供が一人先走った所で、身を危険に晒す以外には何の意味も無い。
だから落ち着けと、手の中の少女に言い聞かせる。
「それじゃあ行くぞ。とっとと助けだして、この馬鹿げた事件を終わらせる」
「……うん」
「しっかり掴まってな」
ルウがひしと抱き付いてきたのを確認し、コオリは廃墟の扉を蹴破った。
扉の砕ける音が響き、荒れ果てて積もっていた埃が舞う。
「……隠れないの?」
余りに堂々とした突入に、ルウがポカンと口を開けて聞いてくる。
「そんなに時間が無いからな。ついでに隠れる意味も無い」
この局面で時間を無駄に掛けるのは下策だ。
第一、隠密行動というのは秘密裏に相手の情報を収集する、もしくは危険を回避する為に取る行動である。
コオリにとってルウの仲間が捕らわれているという情報以外は特に興味は無く、態々コオリが回避する様な危険も存在しない。
現状ではコオリが隠密行動する必要など皆無なのだ。
「それに手っ取り早いだろ?」
「……何が?」
「ほら」
首を傾げるルウに、コオリは奥を指差した。
「オイ!今の音は何だ!」
「敵襲か!」
そこから出てきたのは見張りと思しき男たち。
それを目視で確認したコオリは、瞬時に手の中で幾つもの氷の礫を生み出し、
「探す手間が省けて、さ!」
投擲した。
「あがっぁ!?」
「ぎゃあぁ!」
「ぐあぁあっ?!?」
投擲された氷の礫は男たちの両肘両膝に見事命中し、関節を破砕する。
たった一瞬にして、男たちは一人残らず行動不能に追いやられた。
「すごい……」
不意打ちで行われた絶技にルウが目を見開いて驚愕する。
「そりゃあどうも」
当の本人は何て事無さそうであるが。
「よし、さっさと進むか」
呻く男たちを放置して先に進む。
するとルウがコオリの事をつついてくる。
「放っといて良いの?」
「手足砕いて行動不能にしたし、態々殺す必要も無いだろ。ギルドとしても情報源は多い方が良いだろうし」
ギルドマスターから生死問わずと保証されているが、コオリは出来る限り生け捕りにしようとしていた。
教団は各国から早急な壊滅を望まれている。かつては戦争まで引き起こした彼らの被害にあった国は多く、一部の権力者や悪人を除く大多数の人間が彼らを憎んでいる。
しかし教団は起こした事件に反して尻尾を出さない。出したとしてもその殆どがトカゲの尻尾、捨て駒だ。幹部などの重要な人物が捕まる事など皆無に等しい。
それ故に情報源となる人物は貴重なのだ。捨て駒の情報などたかが知れているだろうが、些細な情報だろうと欲しているのが現状である。それ程までに情報が無い。
「動いてる人数が人数だ。今回の騒動は教団側からしても大事な筈。だったら余り殺さない方が良い」
「何で……?」
「そこそこ内部に詳しい人物がいる可能性があるから。やたらめったら殺しまくって、その中に重要人物が居ましたなんて目も当てられないだろ?」
「……納得」
「まあ、流石に幹部とかは居ないと思うけど」
納得してもらった所で移動を再開する。
地下に本拠地があるとの事なので、床から伝わる振動に意識を向ける。
暫くすると、床を踏みしめた時の音が僅かに違う部屋を発見した。
「此処か」
この部屋が地下へと通じる部屋。
キョロキョロと周囲を見回せば、床の一部に埃を被っていない箇所がある。
近づいて調べてみると小さな穴があった。薄っすらと区切られた様な線も。
穴に指を入れて持ち上げてみれば、そこには地下へと続く階段が。
「見つけた」
階段の先は暗い。奥に鎮座する闇はまるで冥府の入り口だ。恐怖を掻き立て、先に進む事を拒ませる。
腕の中のルウがぶるりと震える。
「怖いか?」
「……ううん。この先に、皆が居る。怖がってなんか、いられない……!」
家族の為にと、怖がりながらも気焔を吐くルウ。その健気な姿にコオリは微笑みで答えた。
「そっか。だったら早く助けないとな」
「うん」
頷くルウの頭を撫でる。一瞬だけ身構えた様だが、今回は噛みつかれる事は無かった。徐々にだが心を開いている様だ
その事実に少し嬉しく思いながら、コオリは階段を駆け下りる。
階段はそこそこの長さの様で、感覚的に二十メートル程といった所だった。
「はい、到着と」
階段の下には地下通路があった。奥の方からは灯が見えているので、部屋か何かでもあるのだろう。
何故街の下にこんな場所があるのかと首を捻るコオリだが、壁や床をよく観察してみると表面が異常に滑らかな事に気づく。恐らく魔法によって作られた空間なのだろう。
態々ご苦労な事だとコオリは呆れるが、そういう組織なのだと納得しておく事にした。
逆にルウの方は、明確に仲間へと近づいた事によって勢い付いていた。
「この先に、皆が……!」
仲間は思う焦りと不安、そして元凶への怒りがルウの小さな身体から溢れ出ている。
ともすればコオリの腕を振り解いて特攻しそうな様子に、コオリは溜息を吐いてルウの頭に手を載せる。
「だから落ち着けって。ルウの仲間は直ぐに助けるから」
「でも……」
「でもじゃない。そんなんだと降ろすに降ろせないじゃないか」
「……このままで問題無いんじゃ?」
「ルウ一人だったら確かにそうなんだが、状況によってはルウの仲間も守る必要があるからな。人数が多くなったら流石に両手を使いたい」
守るべき対象が増えた状態で手を塞いでいるのは下策だ。手を塞ぐのは手数を減らす事を意味し、取れる手段が限られてしまう。
如何に巨大な力を持っていても、それだと突破されてしまう可能性がある。
これがその手のプロなら話は違うだろうが、生憎とコオリは何かを守りながら戦うという行為に慣れていない。経験があるとすれば龍モドキとの一戦ぐらいだが、それも戦闘の余波がライラに届かない様に立ち回っただけなので、予想される状況だと参考にはならない。
「全力出せればまた違うんだが、地下でそれやったら確実に崩れるし。ルウの身体も絶対もたない」
今までルウを抱えて色々とやってきたコオリだが、そこにはちゃんとした配慮があった。戦闘は身体に負担が無い様に魔法を主体としていたし、移動する時も極力揺れたりしない様に動いていた。
しかし、ここから先は戦闘になる。流石のコオリも戦いながらルウを気遣うのは難しい。相手の攻撃が当たるとかでは無く、単純にコオリの動きにルウがもたないのだ。
一応、魔法を主体にするという手もあるが、コオリの魔法の殆どは高威力の為に地下で使うと崩落の危険がある。地下に居る全員が敵ならば崩落など気にしないで使うのだが、ルウや孤児たちもいるのでそうはいかない。
「……分かった」
コオリの説明に納得したらしく、ルウは大人しく地面に降りた。
「分かってると思うが、どんな状況であっても突っ走らない様に」
「………ん」
「本当に分かってんかねぇ……」
微妙に頷くまでに間があった様に感じたが、まあ良いかと思い直した。
軽くルウの頭をなでてから、コオリは短剣と金剛杵を抜いた。
「さてと、それじゃあ行こうか」
膨大な魔力と闘気を滾らせ、コオリは灯の見える方へと向かう。
ルウもコオリの言いつけを守り、決して前に出る事無く付いてくる。
「アジトの割に、人が居ない……?」
上の廃墟と違って見張りすら現れない事に、ルウが首を捻った。
「まあ、何だかんだで結構な人数倒したからな。そう考えるとこんなもんだろ」
コオリとルウ、ライラたちも数十人単位で襲われた事を考えると、エドムスの方も同じぐらいの人数で襲われた筈だ。つまり、百人近い人数が今回の騒動で動員され、捕縛または殺害されている。
どんなに大事になっているとしても、この騒動は教団からすれば幾つある作戦の内の一つだ。どんなに人材豊富であっても、一つの作戦に動員出来る人数など限られている。
「それに今の所は一本道だし、上の廃墟に見張りを置けば大丈夫だと考えても不思議じゃない」
「……なるほど」
ルウに納得してもらった所で、コオリたちは灯の元へとたどり着く。
灯の先には良くある学校の体育館程度の空間が広がっており、
「おやおや、まさか此処まで来るとは思いませんでしたよ」
そこには黒い法衣を纏った集団と、二十人の武装集団が居た。
自分的に話が長いなって感じる基準って、七千文字ぐらいだったりします。
いや、それがなんだって話なんですけど。




