第二十九 現在改稿作業中
三人称はいかがでしょう?
十月三十一
色々と修正しました。
冒険者ギルド。それは、あらゆるファンタジー作品に登場する機関である。ゲーム、マンガ、アニメ、ライトノベルなど、ジャンルの垣根を越えて冒険者ギルドは登場する。
そして、作品に登場する冒険者ギルドの大概の仕事内容は、ギルドに所属している人間に依頼を斡旋する事である。他にも、素材の買取だとか、酒場の様なのくっ付いていたり、道具の販売をやっている場合もある。
これは、現実の異世界であるこの世界でも殆ど同じらしい。
「この建物が冒険者ギルドだ」
「………ここまで予想通りだとは思って無かった」
「全員じゃ無いけど、荒くれ者の集まりみたいな所だからな。こんな感じなるのも仕方ないっちゃあ仕方ないさ」
コオリの視界の先には、なんともゲームとかに出てきそうな雰囲気の建物があった。内部からは微妙にドンチャン騒ぎを音が聞こえてくる。
「妙に騒がしいですけど、これも何時もの事なんですか?」
「あー、何かあったんだと思うぞ。普段は流石にここまで騒がしくは無い」
「何があったんだろうね」
「私は喧嘩に一票」
「クエスト明けの酒盛りに一票ですね」
「絡んでくる奴が居なけれりゃ良いが………」
「「「居たらご愁傷様という事で」」」
ドイランが懸念事項を口にすると、クルト、メイラ、セイムの三人が口を揃えてそう言った。 普通だったら薄情に聞こえるかもしれないが、意味的には絡んできた相手に向けたものである。
既にコオリの恐ろしさを体験している三人からすれば、絡んでくる様な奴にコオリが遅れを取るとは思って無い。
「お前等は中堅冒険者だろう………」
「関係無いわ。下手に関わってトバッチリ喰らう方が嫌よ」
「僕より強いんだから、心配するだけ無駄だと思うよ」
「むしろ、相手が憐れに思えるぐらいですね」
仲間のなんとも言えない台詞に溜息を付きながら、何かあったら自分が止めようと考えるドイラン。
そんなドイランの決意にまったく気付かず、ファンタジー作品の代名詞とも言える冒険者ギルドに感動しながら嬉々として入っていくコオリ。
「コオリ、本当に子供みたい」
「あー、マジで余計に絡まれそうだなアレ」
「半殺しに一票」
「流石にそれは無いだろ。でも一票」
「同じくですね」
「あの、コオリも流石にそこまで血の気は多く無いと思いますよ?精々、相手を威圧するぐらいかと………」
「どっちも似た様なもんだろそれ」
三人からの余りにあんまりな評価に、流石に見かねたライラがフォローを入れた。しかし、ライラもライラで、内容が穏やかじゃないのは変わらなかった。
そんな残念な風に話されていたコオリは、ドイランの予想通り、ギルドに入って直ぐに絡まれていた。
「オイ、ボウズ!此処はガキの来るところじゃねえ!」
「テメェみたいなガキが冒険者だぁ?冒険者はんな甘っちょろい仕事じゃねえんだよ!」
「メンドーくせぇなこの酔っ払い共………」
酔っ払いの勢いに頭を抱えて唸るコオリ。内心で、どう対処しようかを考える。普段だったら絡んできた相手は容赦なくぶちのめすコオリだが、この酔っ払い二人にそれをする事は躊躇われたのだ。
この二人、今はコオリに絡んでいるが、ギルドに入った直後はこんな感じでは無かったのだ。最初はコオリの事をお使いに来た子供、又は依頼を頼みにきた人間だと思った様で、とても気さくに話し掛けて来たのだ。少ししか話してないが、それでも悪い人間ではない事は会話から察する事が出来た。
しかし、コオリが依頼人ではなく冒険者志望だと知った途端、さっきまでの人の良さはなりを潜めて急に絡み始めた。どうやらこの二人、冒険者の仕事にかなりのプライドを持っているらしく、そんな二人からすればコオリは、『身の程を弁えずに憧れだけで冒険者に成ろうとしている巫山戯たガキ』と、見える様で気に食わないみたいだ。
コオリとしても、他人の価値観を押し付けないで欲しいと思う反面で、この二人の冒険者という仕事に持っている誇りには好感を抱いていた。
その為、コオリはこの二人をどう対処すれば良いのかを決めかねていた。
「なんとか言えやボウズ!」
「こんなんでビビってたら冒険者なんて務まんねえんだよ!」
「………マジでどうしよ」
周りに視線で助けを求めるも、面白そうにニヤニヤ笑っている者、目の前の二人の様に非難の目を向ける者、酒に夢中で気付かずにいる者と、助けは期待出来そうに無い。だったらとギルド職員の方に視線を向けるが、ドイランが冒険者同士の争い事には基本的に不干渉と言っていた通り、助けが出る事は無さそうだ。
「ガキ、身の程を知ったならとっとと出ていけ!」
「二度とギルドに来るんじゃねえ!」
「いや、こっちにも生活が掛かってるから、そう言う訳にもいかないんだが」
盗賊の賞金で幾らかの金は手に入れたが、やはり手持ちの素材を換金しないと心許ない。
「テメエみたいな、実力も無いガキが冒険者に成った所で死ぬだけだ!」
「俺も一応は戦えるぞ?」
「どうせ村一番の怪力とかだろ?そんなんで食ってける程冒険者は甘く無いんだよ!」
微妙に嫌な流れになってきたな、と内心で呟くコオリ。何と無くだが、この先の流れが読めてきた。
「んなに冒険者に成りたいんだったら、テメエの実力見せてみろや!」
「やっぱこうなんのか………」
予想通りの展開に、本気で頭痛がしてきたコオリ。しかも、ファンタジー小説で有りがちなテンプレと違って、絡んできた相手が下衆じゃないので対処に困る。
「俺の攻撃を防いでみろ。そしたら冒険者登録は認めてやる」
「冒険者登録するのに許可が、ん?………って、そうじゃん俺まだ一般人じゃん!受付さん助けてよ!!」
よく考えてみれば、コオリはまだ冒険者登録をしていない一般人だ。ギルドは冒険者同士の争い事には不干渉なのであって、相手が一般人だったら事情が違う筈だ。
そう思い、ギルド職員に助けを求めるが、
「馬鹿野郎!冒険者志望なんだから一般人の括りに入る訳ねーだろ!」
「いや屁理屈だろそれ!」
「やかましい!さっさと避けるか防ぐかしやがれ!」
理由になって無い屁理屈を言いながら、酔っ払いの一人が持っていた剣の柄を掴み、鞘から引き抜こうとする。得物はバスタードソード呼ばれる剣だ。
「はあ………」
相手の動きを見たコオリは、溜息を吐きながら男に近づき、最も有効な対処法を発動した。
「っな!?」
「流石に得物を抜いちゃマズイでしょ」
驚愕の声を上げる男。男の視線は、自らの剣の柄を握りぴくりとも動かぬ様に押さえつけている、コオリの片手に向かっていた。
剣を持った相手に対する最も有効な対処法。それ即ち、相手の得物を抜かせなければいいのだ。実行するのがまず無理な極論ではあるが、これが最も有効で、最も穏便な対処法なのだ。
「これで実力がわかった筈だ。さっきの攻撃、割りと本気だったろ?まあ、それは目をつむるけど。………で、まだやるか?」
酔い覚まし代わりの強めの威圧を掛けながら、暗に次は無いと仄めかす。
「お、おう。た、確かに実力は有るみたいだな。だったら文句は無え」
「あ、ああ。俺も歓迎するぞ」
二人はちゃんと隠された意味に気付いた様で、特に何も言わずに大人しく引き下がった。
「はぁ、まったく。勘弁してくれよ」
「あー、悪りい。かなり酔ってたみたいでな………」
「すまねぇ。ついカッと成っちまったみたいだ………」
「絡み酒が昼間っから飲むな」
「「申し訳ない………」
やはり、素面では良識の有る人間らしく、二人は素直に頭を下げて非を認めた。
「にしても、凄え威圧だな。一気に酔いが覚めたぞ」
「ああ。やっぱり見た目で判断するもんじゃないな」
「オイ、言ってる意味によってはさっきの続き始めんぞ?」
「「全力で遠慮する!!」」
コオリの威圧混じりの問いかけに、酔っ払てた二人は即答で拒否をした。
そして、その様子を後ろから見ていたメンバーは、
「おー、ライラちゃんの言ってた事が当たったよ」
「やはり、付き合いの長さが違いますね」
「流石は恋人。コオリ君の事を良く分かってるのねー」
「………〜っ!!」
コオリの行動を予想で当てたライラをからかって遊んでいた。
「あの予想が当たるのもどうかと思うんだが………」
ドイランは、あの予想は当たっちゃダメだろ、と思いながら小さな声でツッコミを入れていた。




