羽田たちを追いかける弥生(後編)
そのうち川が見えてくる。左手に橋が見える。橋面、欄干、すべて朱色の木造りである。幅も高さも小さいが、川幅があるため長さはある。羽田たちはその橋の上で、一体のモンスターと交戦中である。敵は、二メートルはあろう木製の機械人形、その格好は武蔵坊弁慶とくる。顔だけ「ひょっとこ」だから、ふざけた作りである。得物は薙刀。機械仕掛け特有のぎこちなさが目立って、捌き方はお粗末だが、羽田たち剣術の素人が接近して仕留められるほど、出来が悪すぎる訳でもない。破壊力はあると見える。羽田たちはボーガン、弓矢と遠距離射撃をする。とはいえ機械仕掛けなら痛みもなく、前進、薙ぎ払いをやめようとはしない。敵の攻撃の度に、彼らは四方に散ってまた射撃。これを繰り返している。苦戦は苦戦ながら弥生の目から見ても、彼らも悪い動きではない。戦う男子に交じってボーガンを放つ二人の女子の姿もある。彼女たちも必死と動いている。二人とも戦場の兵士のように真剣な面をしている。さて、ここで男子との身体能力の差が出てしまう。弁慶人形の薙刀の柄の先が女子の一人の背中に当たってしまうのであった。彼女の身は飛ばされ、欄干を乗り越えて川へと落ちてしまう。
「やりやがったな!」
誰かがそう叫んでも、相手は木製の人形だから返事もない。川に落ちた女子は泳げないのか、気が動転しているのか、あたふたもがいて流されながら助けを求める。敵を目の前にして、どうすべきか判断できない羽田たちは、助けるとも、それ以上の攻撃をするともしない。見かねて弥生がすぐに川辺を走って流される女子を追いかける。
「なんとか岸まで泳いで!」
その声に、流される女子もバタバタと格好の悪い犬掻きで岸の方へと泳ぐ。弥生は先回りして、川に片足を突っ込み、手を伸ばして救出を試みる。見事その手を掴んだものの、足を滑らせ一緒に川の流れに呑まれてしまう。それでも弥生の判断、行動に鈍りはない。掴んだ女子の手を引きながら岸まで泳ぐ。
「あ~、助かった~」と、無事救出する。女子は、少し水を飲んでいるようで、咳き込んでいる。
「あの… ありがとうございます… 助けてくれて…」
「いいわよ、仕事だから。それより大丈夫?」
「あ、はい」
弥生は橋の上を睨むと、
「しかし、男子たち情けない…」とぼやく。
無事助けられたと分かると、羽田たちは戦闘を再開し出す。これがまた弥生には気に食わない。人命優先の自分たちとは考え方の根本が違う彼ら男子たちを見ていると、いっそ橋ごと燃やして、全員川へと落としてくれようかと、その手に炎を上げてしまう。
続きます




