あの子、可愛いよね(後編)
滋がそんなことを聞く。話の流れに任せて深い意味もなく訊ねたが、口にしてすぐ、弥生に言われた自分と安川とが似ている顔だという台詞を思い出して、まるで自分に興味があるのかどうか聞いているような変な空気を作ったと思い込むと、答えられる前に一人勝手に恥に顔を歪めて俯いてしまった。深沢は、ただ聞かれた質問を生真面目に受け止めて、
「そうですねぇ、確かに他の女子と比べても可愛いとは思いますけど、興味があるとかないとかと聞かれると、返事に困ってしまいますね」
そこには弥生が反応して、
「それはどういう意味よ。可愛らしいタイプじゃなくて美人で大人っぽい女性がいいってこと? それとも、もっと普通の女の子の方が落ち着くってこと?」
深沢は律儀にこれもしっかり頭で咀嚼する。ちゃんと噛むが、答えには困る。
「そうですねぇ、普通の子がいいのかな?」
彼自身の外見の作りは卑屈になるほど周りの男子と比べて見劣りするものでもないが、抜きん出て優れていると思えるでもない。彼自身がそれをよく自覚して、「中の上」の容貌を誇示することもない。平凡の中にいれば飽きてくるが、それでも結局行き着くところは平凡な人生であると身を弁え、難しい挑戦も控えて、時代の流れに逆らうでもなく乗りすぎるでもない生活を送ることに劣等感や不愉快を抱くこともない彼だけに、女にしても身分相応で良いと、いずれ巡りあう相手に大そうな夢を抱かないのであった。もし運命があるなら、そのうちやってくると気長に待つだけである。だが、まったく夢がないわけでもない。夢で生きることはなくとも、夢を見ることに罪はないと思って、身分不相応の相手を夢の中で求めて、夢を夢として楽しむ趣向は人並みにある。
「深沢君、弥生さんみたいなタイプはどう?」
先ほどの仕返しではないが、少しは弥生を攻め立てられるかと滋が聞くと、深沢はまじまじと弥生を見つめて品定めをする。問い責めていたときは調子に乗っていた弥生も、逆に見られる立場になると息詰まって威勢も失せる。
「な、何よ…」
しかし、深沢からすればモデルのような弥生も可愛らしい安川と同格で、松竹梅の松と見えれば身分不相応。
「いえ、綺麗な人だと思います。スタイルもいいし、こんな人が不思議な力を持って、この不思議な世界で自分たちを助けに来てくれていると思うと、そのたくましさとのギャップに驚かされます。多才というか、恵まれている人というのはとことん恵まれているんだなと思いますよ」
と、ませた褒め言葉を口にする。
「君、それは褒めすぎ。むしろ興味がないと言われてるようなものだから、お姉さんはちょっとショックよ」
続きます




