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ロートル冒険者の俺が聖女の養育者でいいのかよ? ――のちに辺境の英雄と呼ばれる男の話――  作者: 月見里 嘉助


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第0話 プロローグ:願わくば。彼女たちに幸せな記憶を

世界があった。

周囲には淡く柔らかい光が満ちている。

寒くもなく、暑くもなく、ちょうど良く、過ごしやすい。

一本の川が流れている。

水は澄んで、川底が見えるほど。

ゆっくりとした水の流れを上っていくと、湖にたどり着く。

その中央、小さな島が見える。

島へと白い橋が架かっている。


島の中央、純白の建物がある。

五つの白い柱で、美しい曲線の天井を支えている。

天井の内側は淡い青から深い青へとグラデーションしている。

そして金色の無数の粒が散りばめられている。

それは宇宙。

青は空を、金色の粒は星々を表している。

建物はそれほど大きくはない。

直径5メートルほどの円形。

その中央。

台座があり、水盤が置かれている。

その周りを五人の女性が取り囲んでいる。

みな、ベールを被り、長いローブを着ている。

姿かたちはよく似ている。

しかし、色はそれぞれ異なる。

白、黄、赤、紫、青だ。


彼女たちは水盤を見つめている。

水盤には地図……いや、世界が映っている。

山があり、川があり、平野があり、海がある。

雲がゆっくりと流れ、平野に影を落としている。


「……さて、此度も始まりのときとなりました。皆様、準備はいかがでしょうか?」


白の女性が落ち着きのある声で告げる。

他の女性たちは静かに頷いた。


「私はここへ……」


そのまま、白の女性が山岳地帯を指差す。


「なら、俺はここだな」


赤の女性は砂漠地帯を。


「私はこちらですわね」


紫の女性は海に浮かぶ島々を。


「私はここです」


黄の女性は実り多い平野の国を。


「それでは、私はこちらでしょうか」


最後に、青の女性は木々の生える森を選んだ。

彼女たちはそれぞれの場所を決めた。

そして、すうぅと、一人、また一人姿を消す。


最後に残ったのはやはり、青の女性。

水盤は彼女が選んだ森を映す。

徐々に近づき、木々の一本一本が見えるほどになる。

一人、男性が歩いている。


「願わくば、彼女たちに幸せな記憶を」


彼女の指がゆっくりと水盤の水に触れる。

水盤に波紋が広がり、映っていた風景は歪み、消えた。

ゆっくりと波は収まる。

しかし、水面は何も映していない。

いつの間にか、青い女性も消えていた。


白い建物には、誰一人おらず。

ただ静かに存在していた。


鳥が歌い、風が柔らかく吹いている。

花が咲き誇り、甘い香りが満ちている。

世界はまるで時間が止まっているかのように平和だった。


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