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拒否すれば死ぬので異世界に来たら、待っていたのは戦力になる駄目神様3人でした  作者: 聖帝エラー
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

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プロローグ

【異世界で英雄として働きませんか?】


 そんな怪しげな求人広告へ勝手に応募させられていた高校生――嵯峨楓。


 突然送り込まれた面接会場で彼を待っていたのは、異世界の英雄を外部委託で確保する神々と、世界を救う力より虫取りを優先する自称主神オティヌスだった。 


 契約期間は6かたぶん

 住居、食事補助、初期装備あり(たぶん)

 ただし、勤務先の安全は保証されない(大体あってる)


 胡散臭い契約を結ばされた楓は、頭がパーのポンコツ(オティヌス)を筆頭に三人のポンコツ疫病神を押し付けられる。

 この物語にヒロインはいない(たぶん)


・虫が主食の頭がパーの主神

・駄目男製造機の自称美女神

・うっかりスキル発動機


“今ならスーパー“アレ”な特典貰えるよ!”


 詐欺紛いの広告通りに厄介者をチート特典と押し付けられながら、彼らが落とされたのは、過去の大災害によって現代世界と異世界が融合した、別世界線の日本。


 現代都市の隣には異世界の大地が広がり、人間と異種族が暮らし、魔法と科学が同じ世界に混在。

 到着早々、街では新たな災害が発生し、魔物が人々を襲っていた。

《空から虫取り網を構えて降ってきた主神は、羽虫を追った勢いでワイバーンを撃墜》

《母性の暴走した女神は、正体不明の魔物にまで食事を与え、保護しようとする》

《転送先を間違えた女神は、反省するより先に無自覚に騒動きずぐちを広げる始末》


 世界が崩壊するよりも楓のSUN値崩壊の危機である。


 楓は警察や武装部隊と協力し、崩壊する街から住民を救いながら、好き勝手に行動する神々の監視役まで引き受けることになる中で、楓は世界から脅威認定され始める。


 現場で起きた馬鹿騒ぎから余計な部分だけが削られ、警察や政府へ届いた報告は、楓を書類上データ上で別人へ作り変えていく。


 複数の高位存在を率い、自らは決して力を見せず正体不明の少年――。


 本人の知らないところで世界中から警戒されながら、楓は今日も女神たちへツッコミを入れ、拾い食いを止め、婚活査定から逃げ回る。


 これは、残念すぎる女神たちと共に現代と異世界の融合世界へ放り出され――なぜか様々な勢力から世界最悪の存在として恐れられていく物語。


 今なら読者にも“スーパー“アレ”な特典”が貰えるよ!!

 シリアス要素満載という言葉が形骸化したハートフル馬鹿コメディーお届けします。


【アウトソース】


 “業務”の“一部”を、他の“業者”などへ“業務委託”すること。


 “アウトソーシング”


 ──ウェブリオより──


 これを異世界モノへ当てはめるなら、業務の一部を、他の“異世界の人間”などへ委託することになる。そこへ神様が仲介業者として挟まった結果、俺のノートパソコンには次のような求人が表示されていた。


『異世界の期間英雄・期間使徒専門求人情報サイト』


※選考会参加報酬・召喚祝いとして、SRスーパー“アレ”をプレゼント!!


※選べる三つの特典!


【宿泊費無料】【食事補助】【四属性の初期魔法から一つプレゼント】


※初期装備品は現地で支給されます。


※赴任旅費および初期必要経費は、現地通貨で支給されます。


 どこかのソーシャルゲームが、広告制作費を惜しんで求人CMへ転用したような宣伝文句だった。


 中でも目を引くのは、SRスーパー“アレ”である。目玉特典なら名前くらい明かしてほしいところだが、伏せ字にすらなっていないせいで、内容ではなく怪しさだけが最高レアリティに到達していた。


 宿泊費と食費も、普通の求人なら福利厚生に含まれるものだろう。それを召喚特典として大きく掲げているあたり、異世界では屋根のある場所で眠り、毎日食事へありつくだけでも課金要素になるらしい。


【待遇】


 契約期間6カ月満了の際、各種報奨とは別に、日本円で100万円を支給します(規定あり)。


 契約更新時には、慰労金が支給される場合があります。


 半年で百万円なら、月額へ直すと約十六万六千円。宿泊費と食事補助を含めれば高校生には魅力的かもしれないが、業務内容には魔物の討伐が含まれている。


 命懸けの英雄職と考えれば、計算するほど夢がなくなった。


【各種手当】


 討伐手当・赴任手当・クエスト遂行手当・危険手当などを、通常報酬とは別途支給します(たぶん)。


「たぶん?」


 そこだけは黙読できなかった。


 法律上の注意書きより小さな文字で、雇用する側の自信まで縮んでいる。危険手当が出るかどうかを、派遣される側と一緒に神様まで祈る制度なのだろうか。


※上記内容は、召喚先の国家および地域によって一部異なる場合があります。


※受取期限を過ぎた報酬は失効します。


※派遣先ごとの死亡時補償、契約解除条件、帰還条件については、選考会場で担当官へご確認ください。


 命に関わる三項目だけが、揃って選考会場へ送られていた。説明を省いたのではなく、担当官へ責任ごと預けたらしい。


 画面の最下部まで探しても、電話番号やメールアドレスは記載されていない。代わりに『よくある質問』『お問い合わせ』『選考会で相談する』という三つのボタンが並んでいた。


 試しに『よくある質問』を開いてみた。


『契約途中で辞退できますか?』


『選考会場で担当官へご確認ください』


『契約満了前に帰還できますか?』


『選考会場で担当官へご確認ください』


『SRスーパー“アレ”とは何ですか?』


『選考会場で担当官へご確認ください』


 よくある質問ではなく、選考会場へ誘導するための道案内だった。


 問い合わせフォームへ『死亡時の補償について』と入力してみても、待たされることなく同じ趣旨の回答が表示された。


『派遣先および契約内容によって異なるため、選考会場で担当官へご確認ください』


 お問い合わせとは、回答を得るための機能だと思っていた。このサイトでは、選考会場へ客を追い込むための一方通行らしい。


 説明を聞くには、まず世界を越えて担当官へ会いに行かなければならない。面接のために海を越える求人は存在するだろうが、質問への回答を聞くために異世界へ来いという会社は、少なくともまともではない。


 アルバイトを探していた俺のメールアドレスへ、そんな案内が届いたのは十分ほど前だった。


 件名には『英雄適性が確認されました』と書かれていたが、適性を調べられた覚えはない。迷惑メールとして消すつもりが、本文に俺の名前が記載されていたため、気味の悪さに負けてリンクを開いてしまった。


 高校生の俺に、六カ月間も異世界で英雄を務める余裕はない。学校を半年休めば、留年以前に失踪者として扱われ、魔王より先に家族と警察が動く。


 現実の派遣求人なら、十八歳以上を対象にしているものも多い。高校生へ魔物討伐を斡旋する業者が実在するなら、先に討伐されるべきなのは求人を出した側だろう。


 英雄になりたいと願った覚えもなければ、スーパー“アレ”や、支給されるかもしれない危険手当へ命を賭ける気もない。怪しいサイトは閉じるに限ると判断し、ノートパソコンの蓋へ手を伸ばした時だった。


 触れてもいないキーボードが淡い光を放ち、画面へ表示されたエントリーシートへ文字が入力されていく。


 氏名、生年月日、住所、学校名に続き、緊急連絡先や家族構成、過去の病歴、利き腕、視力まで、俺が教えた覚えのない個人情報が次々と空欄を埋めていった。


 画面の隅には、個人情報を本人の同意に基づいて取得すると書かれている。肝心の本人は、同意するかどうかを検討する段階にすら到達していない。


「いや、怖いな」


 電源ボタンを長押ししても画面は消えず、コンセントを抜いても入力は止まらない。バッテリーを外そうと本体へ手をかけたところで、今度はノートパソコンそのものが持ち上がらないことに気づいた。


 机へ接着された形跡はない。それなのに、パソコンだけが世界の中心へ指定されたように微動だにしない。


 両手で掴み、力任せに引くと、動いたのは机の方だった。


「そっちが動くのか」


 机の脚が床を擦り、俺は椅子ごと後ろへ転がった。抗議の声にも騒音にも興味を示さず、パソコンは粛々と俺の人生を異世界へ発送する準備を進めている。


 やがて自動入力が止まり、三つの項目だけが残された。


『保有資格』


『特技』


『志望動機』


 住所も病歴も勝手に調べたくせに、志望動機だけは本人へ考えさせるつもりらしい。個人情報を盗み出せる技術があるなら、やる気に満ちた高校生を捏造するくらい簡単だろう。


 試しに『応募していません』と入力する。今度は素直に表示されたが、僅かな間を置いて文字が消え、代わりの文章が入力されていった。


『志望動機:新しい世界で自分の可能性を試したい』


 本人の回答を採用する気がないなら、志望動機欄など最初から用意しなければいい。自由意思を奪っておきながら、応募書類の体裁だけは守りたいらしい。


『契約期間中は責任を持って職務へ取り組みます』


 取り組むと答えた覚えはない。


『協調性:やや難あり』


 抗議したいところだが、たった今のやり取りだけを証拠にされると、こちらが不利だった。


 画面右下では、登録の進行状況を示す棒が伸び始めている。応募の取り消しボタンは見当たらず、表示された選択肢は『前向きに検討する』『選考会で相談する』の二つだけだった。


 後ろ向きに拒否する自由は、最初から用意されていない。


 もう一度問い合わせフォームを開き、『応募していないので取り消してください』と入力する。数秒後、見覚えのある文体で回答が返ってきた。


『ご応募ありがとうございます。応募後の辞退については、選考会場で担当官へご相談ください』


 問い合わせ内容を読む機能は搭載されていないらしい。死亡時補償の質問も、回答ではなく担当官へ投げただけだったのだろう。


 どうにか止めようとキーを叩くが、今度は入力そのものを受け付けない。電源も切れず、机から引き離すこともできないまま、登録の進行状況だけが俺の意思と無関係に百パーセントへ近づいていく。


 九十八、九十九と数字が増え、俺に残された選択肢だけが減っていった。


『エントリー完了』


 画面中央へ色鮮やかな紙吹雪が舞い、軽快な音楽が勝手に鳴り始めた。本人の意思を完全に無視しておきながら、俺の人生に新しい門出が訪れたことだけは盛大に祝福している。


「何一つめでたくない」


 その直後、ディスプレイから白い光が溢れ出した。


 目を閉じるより早く、身体が椅子ごと床へ沈み込む。足元が消えたわけでもないのに、胃だけを自室へ置き去りにするような浮遊感に襲われ、机へ伸ばした指先も何にも触れなかった。


 壁や本棚が、白い光の向こうへ遠ざかっていく。


「せめて家族へ連絡を――」


 最後まで言い終える前に、俺の意識は途切れた。



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