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プロローグ 02



 私は人生で初めて、こんなに地位が高い人を見た気がした。

 マリーよ、いつの間に知り合っていたの? お姉ちゃん、マリーが怖くなってきたんだけど。


「さ、さ、さ、宰相ぉぉーー!? 相手が誰なのかお父さん知らなかったぞ!!」

「お父さまは黙っていてください。トルテ様、お座りになって下さい♪」


 おい、待て父よ。相手が誰か分からずに婚約を了承しようとしていたのか。


「なあマリー、いつの間に知り合っていたんだ?」


 あ、それ私も気になる。父よ、ナイス。


「身分を隠して少し平民のお祭りに遊びに行っていた時にです♪」


 ……平民のお祭りに行っていたこと、初耳なんだけど。


「僕も身分を隠していたんですが怪我をしていた時に彼女に助けて貰って、それから惹かれていったというか。身分を分かってからも同じ接し方に彼女に惚れたんです」

「トルテ様、そう直々に言われると恥ずかしいですよ♪」


 馴れ初めなんて聞いたつもりないんだけど。それに助けたのはマリーが相当な面食いだから平民でも貴族でもカッコよければ助けてるのよ…?


「えーと、そろそろ後宮について聞いても?」

「はい」

「あなた、宰相なんでしょ? なら王族に直々に婚約するので、と言った方が手っ取り早くない? でも派閥に関してはどうしようもないけどね……」


 手紙とか出すより余程効率がいい気がするんだけど……。


「元々、後宮に送り出す予定だったのはお姉様だったんですよ」


 ……ちゃっかりコイツお姉様って言ったよね? まだ私は認めてないんだからね! 妹を取られて悲しいとか、そんなことは全然!


「ですが殿下が面倒くさくて……。〝美人は飽きた。可愛い系の女を入れろ!〟と。資料を見ているとマリーという可愛い子がいたので指名したようです」


 話は分かった。分かったけど、惚気に一瞬聞こえたのは気の所為かしら?


「はぁ…そんなんで国は大丈夫なのかしら…? 頭が痛くなってきたわ……」


 もういっその事、殿下には一度痛い目にあわないといけない気がしてきた……。こういうのは一度経験しないと治らないからね。


「派閥を纏めるのも察するのもお姉様の方が上です。可愛いマリーには到底似合わない。ただマリーの方がコミニュケーション能力が高いのも事実です。まだ婚約発表もしていなかったのでマリーの方に指名が行ってしまいました。私の力不足です」

「トルテ様が謝る必要ありませんわ! 全ては私が可愛かったのが原因です!」


 もうこの2人嫌だああー!!! 彼氏がいなかった私に何か恨みがあるんですか!? 無いならちゃっかりイチャイチャしないでっ!


「……宰相様なら殿下に婚約すると一言いえば収まったのでは? 私が最初っから指名されればそれで済んだのに……」

「殿下は一度言ったら止まらず……今機嫌を損ねると近々ある重要なパーティーに出席しなくなる可能性があるので…念の為に。それに王妃もマリーの方がいいと」

「……殿下のご機嫌取りも大変ね。王妃様がなにか?」


 殿下が大変、面倒臭いのは分かった。だけど王妃様も絡んで来たのはどうしてかしら?


「特に理由は無いみたいです。マリーを選んだ理由は僕にも分かりません。ですが後宮に入る以上、王妃様にもお気をつければと」

「そう、覚えておくわ」


 こんな予定じゃなかったのになああ!! いつ帰れるか分からない生活をするよりのんびり家で過ごした方が安全に違いないのに……。マリーは大事な家族だし、同じ派閥の人たちも気になるから何とも言えない……。


「分かりました。何とかしましょう。ですが私だけでは不十分です。宰相様にもお力添えを頂けれると心強く思います」

「当然のことです。マリーの為なら僕に出来ることがあればさせて頂くつもりです! それにもしお姉様が人攫いにあいそうでも人攫いの人に武術でコテンパンに出来ると伺いました」


 マリぃぃ〜〜? 私はそんなに野蛮な女じゃないからねぇ〜?


「な、なんか悪寒が……」


 マリーも悟ったみたいだし、ここまでにしようかしら。


「エリシエナ・ディアリスタは宰相様に協力することを女神様に誓います」


 ドレスの裾をつまんでお辞儀をする。約束事はこうやってするのがこの国の伝統。簡単に約束は破ってはいけない、という意味合いもある。


「トルティスト・ミリジエーラは誓いを破らず最後まで守ることを女神様に誓います」


 男性は胸に手の拳をぶつけることで誓いをする。


「さ、誓い事も終わりしたのでお姉さまは化粧をしましょう!」

「え、今から?」

「二日後、化粧が駄目だったのが発覚したら困りますからね。事前にしておくのが大事なことだと思います」


 それもそうね……。


「準備も終わったみたいですから化粧室に行きましょう!」


 マリーに引っ張られて私は部屋を出て行った。




 ☆ ☆ ☆




「「お待ちしておりました。エリシエナ様」」


 おお、可愛い子には可愛い子が集まるのか。二人とも可愛い。


「お姉様をよろしくお願いしますね」

「「はい」」


 どうなることやら……。




 ☆ ☆ ☆




「完成しました。鏡を見てくださいませ」


 おおぉ!なぜだろう化粧の恐ろしさを改めて実感した。


「骨格とかは何とかなりませんが、流石双子ということもあってそこら辺の事情は問題ありませんでした。なので後は腕によりをかければ何とかなります」


 すげぇ、プロだ!プロがいる!

 今の私はマリスリー・ディアリスタにしか見えない。もう完璧だ!


「お姉様、そんなにマジマジと鏡を見ないでください。なんかこっちが恥ずかしくなってきましたわ」

「だって凄いだもん!」


 ……このやり取りをみているとどっちが姉なのか分からなくなる。


「これで後宮も安心ね。ティア、オリビア、後宮に入ってもお姉様を支えてあげて」

「「はい」」

「あとお姉さまは社交界に疎いところがあるのでそちらの方面もしっかり教育をお願いします」

「「畏まりました」」


 一瞬不穏な単語が聞こえたけど、私は鏡を見るのに夢中で聞き流してしまった。



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