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第64弾
題名「価値観による害」
「歩くことをいとうわけではない。ただ、緩やかな変化に飽きてしまうだけだ。」
低音で届く声。きっぱりと言い切りながら、どことなくもの悲しい。
「なら、なぜ他人の善意を無駄にする。車は緩やかなものではない。」
中音の声が鋭く指摘する。
「いや、急速な変化はもっと嫌いだ。」
「それは‘今’にそぐわない。自転車でも探すつもりか。」
軽く笑みを浮かべる。
「そうだな。一番あう。」
「だが、‘今’にそぐわない。」
「だったら、どうする。」
「ふん。嫌でも車に乗るさ。今は夜だ。」
鋭く指摘する声があざけりに変わる。
「・・・・・。」
「緩やかな変化が嫌だと言って、急速な変化も嫌だと言うなら、間の速度の変化をとる。か。愚かな。歩け、緩やかなではない速度の変化を見つけつつ。」
星が明るい。不夜城の明かりが絶えて見えるほどに。




