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第29弾
題名「桜酒」
淡き残り香を知っていますか。それはとても儚くあるのです。
人差し指を黒髪にうもらせ、耳の上にのせる。その耳にはサファイアが小さく揺れていた。
周りに花があふれ、香りにおぼれていく。
サファイアに太陽は通り、影に色がつく。桜色の上に小さな烙印。
季節の名を尋ねることはしない。空の色も、風の流れも、人が名付けたままに、存在を示している。だからこその花酒。
歌がつむがれ、人々の手が揺れる。ひらひらと。咲かぬ花はなしがごとく、散らぬ花はなしとばかりに、ひらひらと。
黒髪を背に流して、黄色みがかった肌に、水色の布があう。透明な爪の連なりが布を握る。
鮮やかな桜のふぶき。菜の花に菫、桃と橘、木蓮に梅、描く手はなめらかな曲線をもつ。
魅せられて、夢思い。淡く儚き桜酒。




