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第2弾

題名「ラブレター」


月は静かに沈んだ。ほのかに赤く染まって昇った満月が。

暁は白く、鳥の鳴き声が鋭く響く。

夏の月はさり、冬の朝がやってきた。


〈愛してる。でもね、あなたとは、友達のままでいたいの。〉

彼女からの返事は、嬉しく、哀しいものだった。僕は、彼女に答えた。

〈愛してくれるなら、友達を越えた付き合いをしたい。それは僕の望みだよ。前の手紙と同じように。でも、君が―紗夜さやが―友達のままを望むなら、僕は答えよう。わかった。と。紗夜を愛しているから。

 ああ、もしよかったら、わがままをひとつ聞いて欲しい。誰かと付き合いたくなったら、真っ先に僕に教えて欲しい。止めたりはしないから。〉

 紗夜からはすぐに返事がきた。

〈ありがとう。でも、わがままは聞けないわ。愛してくれるなら、毎週金曜日、午後7時に小学校のニレの木の下で会いましょう。〉

僕は涙しながら、嬉しさと愛しさに震え、すぐに答えた。

〈ありがとう。愛しているよ。だから、毎週金曜日、午後7時に小学校のニレの木の下へ行く。碧い“サファイア”を持って。〉


僕は手紙を投函した。家へと帰る道のりで、“サファイア”を握り、空を仰いだ。虹のような秋の夕焼けが、笑っていた。



「紗夜、来たよ。ほら、“サファイア”もあるよ。」

答える者はいなかった。午後7時の金曜日、小学校のニレの木の下通いは、もう習慣になった。20年も前の約束を、ずっと守り続ける俺を、馬鹿にする奴らは大勢いる。

『俺だって、何度やめようと思ったことか。だが、紗夜を愛してる心は、変わらなかった。他の女を愛しそうにもなったが、恋でいつも終わったんだ。』

ニレの木を見上げる。どこからか梅の匂いが漂ってきた。

「20年もずっと守り続ける男って、始めてだわ。皆、1年くらい経つと辞めていくのに。」

背後から、突然女の声がかかる。振り向けば、

「稀有な人。どうして、あなたは続けるの?」

 紗夜は、始めて会った時のように、白いワンピースに身を包んだ、大人でいた。

「まだ、紗夜、お前を愛しているのか、俺はわからない。だが、お前を忘れずに思い続けたことは確かなんだ。」

俺は紗夜を見つめながら、桜のように言葉を散らした。紗夜は微笑した。

「偶然とは言えたらいいわね。初恋同士、ずっと思いあっていたなんて。・・・運命と言うのかもしれないけれど。」


入道雲が伸びをしている。夕立がきそうだ。

「パーパー。パーパー。」

「どうした。深香芽みかげ。・・・お?パパにくれるのか?・・・ありがとなぁ。よし、半分こしような。」

深香芽がひまわりのように笑顔をさかせた。紗夜が縁側にやってきた。様子をみて笑う。

「パパからももらったのね?深香芽はいっぱい食べなかったかな?」

深香芽は首をいっぱいふる。燵淤たつおと紗夜はその動きに微笑む。


1年前の春、レンゲの花に包まれた結婚は、幸福の住処だ。



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