1/81
第1弾
題名「死を捨てて」
もしも、だ。この命が永遠に続くのなら、私は生まれたことを後悔するだろう。自分ではどうしようもないけれど。
花が散る。季節の変わり目がやってきたのだ。早く過ぎ去ってしまえ、と、願い続けた季節がようやく変わる。なぜか悲しいけれど。
「八名、本当に行ってしまうの?」
涙ながらに高い声が、八名にかかる。すがりつく女に、悲しそうな視線が落ちる。
「耶奈、仕方ないんだよ。行かなければならないんだ。」
八名は、二度と、その姿をみることができなくなる汽車に乗った。
わかたれた二人に、残酷な運命が降った。しかし、それは幸福への始まりでもあった。
短い時間が、長くなった。
「やっと、百年。」
月日は、耶奈の姿を変えることはなかった。ただ、耶奈の周りが消えたに過ぎない。
「耶奈!耶奈!」
突然の呼び声。あの日、汽車に乗った八名の声が、耶奈の周りに届く。
「八名?なの?」
答えは小さかった。しかし、それはちゃんと、八名の耳に届いた。
季節は流れた。変わり果てた姿を手にしない代わりに、手に入れたものは、不幸と幸福だった・・・。




