第24弾
題名「赤い海」
「約束しよう」
声を響かせ、衣耶麻は右手の拳を心臓の上に置いた。石積みの壁に描かれた騎士の姿に、酷似した仕草が雰囲気にあっていて、時代をさかのぼってしまったよう。
「衣耶麻。君だけに未来をゆだねることはとても心苦しい。しかし、君だけがイグドアに選ばれてしまった以上、この道をたがえることはできない。頑張ってくれ。・・・いや、気負わず出来ることをしてくれ。」
灰色の上下服は戦闘用らしい。衣耶麻と同じ姿をとって話す男は、衣耶麻の笑みを見て自分の言葉の愚かさに気付いた。
「すまない。・・・・俺も一緒に行けたらいいんだが・・・。」
「その気持ちだけでいいさ。・・・なに、生きて帰ってくればいい。」
明るい声が男の涙を誘う。衣耶麻は、じゃあと言ってイグドアへ向かっていった。
「未来のために・・・死んでくれ。」
男は衣耶麻が去った後、静かに笑った。
「君が最後のいけにえだ。」
衣耶麻はイグドアの前に立った。その顔には、誰も間違えようのない笑みが浮かんでいた。
「イグドア、俺は死なないはずだ。お前は俺を殺せない。そうだな?この戦争はお前のせいじゃなく、“ガキ”達のせいだろ?俺は奴らをお前とともにここを去らせる。だから、手伝え。ここは元々、お前だけの土地なのだから。」
一夜にして
海となりしアドラ
赤い海の底に
眠りしアドラの人々
眠り人を起こすことなかれ
血に飢えた獣のごとく
戦いを望む者達なれば
赤い海は死神を
その身に封じ
イグドアのゆりかごになる




