第22弾
題名「変わり身」
かさこそと落ち葉が風にゆれる。風景が冬の色に染まり始めた。ようやく静かな時が戻ってきた。
「雪は降るかねぇ」
のんびりとした義母の声が縁側から流れてくる。あの時から、義母の記憶は静かにひとつひとつ心から離れていっていた。
「今年は降るかもね。」
少し眠たそうな娘の声が答えている。娘はあの時から眠り続けることが多くなった。
「雪が降ったら、雪うさぎでも作ろうかねぇ。」
2人がゆったりした雰囲気を作り、昼食を作っている私までつられそうになる。
ボーンボーンボーン
柱時計が12時をうつ。と、同時に昼食ができた。
「ご飯、できましたよ!」
表に向かって声をかける。
「おー。」
夫の返事が返ってくる。義父も農具を置いて歩いてくる。それを確認すると、私は縁側へ向かった。
「お昼ですよ。」
そっとささやくように声をかける。義母はやはりゆっくりとした動きで立ち上がる。一方、娘は眠っていた。無理に起こしても仕方がないので、座布団を並べてその上に寝かせ、毛布をかける。
ホッと息を吐いて食堂に向かう。昼食が待っているのだから。
「いただきます。」
4人のふぞろいな言霊。
「ごちそうさま。」
時間もばらばらに発せられる。
午後の時間も個人の世界でしかない。義母は縁側へ。義父と夫は表へ。私は・・・。
10年前、私の孫-娘の娘-が消えた。その父-娘の夫-と共に。どこに行ってしまったのか、警察に捜索願いを出しても、まだわからない。
そう2度と見つからないだろう。2人を探し続けても。
私だけは聞かされた。どこに行くのかを。しかし、誰にも話してはならない。そう、きつく言われた。
「見つけるまでは、戻るつもりはありません。警察に行ってもらってもかまいません。しかし、このことだけは、誰にも!誰にも!話さないでください。・・・ご迷惑だとは承知の上です。・・・しかし、妻には聞けないことですから、探すしかありません!協力していただけますか?」
孫が学校からもって帰った事実を、婿は驚きをもって知った。そして、娘が隠した真実を2人は求めたのだ。
そして、この家から離れて探す決意をした。
真実を探しても、探す向きが違っていると、なかなかたどりつけない。そう、孫がもって帰った事実は、私がひとり知っている秘密。




