2話
桜が舞う門の前で、シンシアは足を止めた。
淡い花びらが、白い石造りの校舎を包む。
――ここが、リュミエラ学院。
革命のあと、新しく建てられた学び舎。
まだ新しい石壁の匂いが残っている。
人々の前に立たされ、見世物のようにされていた少女とは、違う。
そう言い聞かせる。
(今日から、始まる。)
⸻
「シンシア!」
鈴のような声が後ろから聞こえた。
振り向くと、金色の髪が揺れる。
「クラリス様!」
次の瞬間、彼女はシンシアに勢いよく抱きついた。
「本当に久しぶりね! 会いたかったのよ!」
笑顔でまっすぐな言葉に、胸の奥があたたかくなった。
「私も、お会いしたかったです。」
「もう、敬語はなしよ!」
クラリスはぷくーっと頬を膨らませる。
「クラリス、礼儀は弁えろ。せめて、人前ではな。」
低く落ち着いた声が響く。
この国の第二王子、レオンハルト・ヴァルセリオン。
かつては、シンシアの護衛騎士だった。
「久しぶりだな。」
「お久しぶりです、レオンハルト殿下。」
「ここは学園だ。俺のことはレオンでいい。お前には許す。」
蒼灰色の瞳が柔らかい。
「さあ、挨拶は終わりにして講堂に行きましょう! 入学式に遅れてしまうわ!」
クラリスはシンシアの腕を取り、歩き出す。
その後ろをレオンハルトとリリアナが続く。
桜の花びらが、四人を包む。
始まりの鐘の音が鳴った。
物語が、静かに動き出す。




