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第6話 来訪の決意
雪が、激しく吹き荒れていた。
辺境の屋敷は静まり返っている。
月は高いのに、森には光が届かない。
――セイラ様、軽傷。
その一言だけで、十分だった。
胸の奥が、ざわつく。
「……二度と会わないと、決めたのに。」
エリシアは、ヴァルセリオン王国の方角へと視線を向けていた。
距離を取り、連絡を絶てば。
運命から逃れられると、思っていた。
手にしていたのは、古びた銀の指輪。
「……行かなくてはならない。」
その指先が、わずかに震える。
扉が静かに開いた。
「私のいない場所で、終わるのは許さないわ。」
リュシエンヌが入ってくる。
黒髪を高く結い、紅い瞳が揺るがない光を宿していた。
「リュシー……」
「あなたの望みはわかっているわ。でも、私の前で、よ。」
一歩、距離を詰める。
「だから、共に行くわ。」
「危険すぎるわ。」
「セイラの状態を見て、共にここへ帰りましょう。」
一瞬だけ、言葉が途切れる。
それでも、迷いなく続けた。
「あなたを、運命から逃がすために。」
その言葉に、エリシアの指先がわずかに止まる。
エリシアは窓の外を見た。
月が雲に隠れても、決意は揺らがない。
「ヴァルセリオン王国へ。」
――運命を、切り離す。




