はじめてのきゅーじつ
17 はじめてのきゅーじつ
正式な招待状が来たのはあの夜の戦いから二日後だった
日時は三日後、寮の前
二日目の格闘部は聞きつけたオウギ先輩とコラプト先輩が特訓をつけてくれて
翌日の、学園に来てから初めての休日は体が悲鳴をあげて動けなかった
そして今日も、いわゆる日曜日だが
体の節々が痛い
それでも痛くない体をいじめて筋肉をつけることにする
「…チェリー、痛いなら休も?」
「いや…筋肉痛だし、冒険者から逃げてきたのが祟ったわけだし」
いつかはつけることになるなら今つけよう、筋肉
筋肉はうらぎらないって言うじょないか
あれから虎さんは反応がない…
いや、なんか語りかけてくれたのだが覚えてない、夢みたいな…実際夢だろうところで話しかけないで欲しい、でてこいや
本気のラッセルというのが何をしてくるのかは分からない
片鱗はあの時見えたが…何かを言おうとして、その前にビリビリ棒が届いた
スターダストあー…なんちゃら
そして過去の歴史によると星屑の配下を従えるらしい
全て言伝だから眉唾もんだ
てか招待状には一人でこいってあるのに配下いたらずるくね?
明らかに俺不利じゃん、納得いかねぇ!
「いぃじゃぁーん、私とゴロゴロしてよーよー」
俺の介護に疲れたヘラは甘えてくる
可愛い奴め、ツンツンシナイデ、キンニクツウナノ…
「昨日はさぁー『アイツは俺の奴隷だからな、キリッ』って言ってたけど奴隷ならわたしがいるじゃーん、しかも奴隷っぽく使わないからいみないよぉー」
キリッとかいってないしー
「なによ、ラッセルさん好きなの?」
「見た目はどストライクだよ?」
「むうううう!」
ツツカナイデ…
「猶予期間はそこそこにある、体仕上げて、秘密道具を大量に持ち込めば勝ち目もある」
「なによ、スターダスト?の称号欲しいの?名前スターダストチェリーになるよ?」
星屑の童貞…屑な童貞の間違えだろそれ
「別に称号はいらない、勝った上で返還する予定だ」
「はー?なにそれいみわかんない!」
「ふっ…勝者からの情けというやつよ…」
おれかっこいい!
「へたれどーてーが何言ってるの?」
「あー?やんのかー?このー」
ヘラのお腹をさわさわする
「きゃーくすぐったいー!」
「満足した」
「えぇぇ…」
実はラッセルの暴行軽くトラウマになりかけてるの、女性恐怖症助長したわ
「もっと触ってよー、ほら、…もむ?」
「もみたい」
「ほーら、私はチェリーのものでちゅよー」
「あ、結構です」
「なぐりてぇえ…」
残念だったな、奴隷の証だ
こんな感じの意味ではヘラとは随分と距離が近くなった
全力で近づこうとする俺がヘタレて距離をとることをヘラが分かってきたらしい
やめて、わからないで欲しかった
だってヘタレどーてーのヘタレ部分否定できなくなるから
「ところで秘密道具ってなに?」
「フラッシュバン」
「あー、あれ秘密道具なの?よく使ってるから秘密じゃないよ?」
いいのー、猫型ロボの語感が好きなのー
ふらっしゅばん〜ーって懐から出してみたい、不意打ち全否定だからしないけど
「他にも色々あって金に物言わせて投入予定だ、勝ったら賠償金もらう」
「…それラッセルさんのほう破産させない?」
ははは、フラッシュバンの値段はヘラには十倍の値段で吹き込んだからな、そう思うだろ、そうだろう
定価でも破産すると思うぞ
負けたら一文無し…とまでは行かないがヘラの保護者として細々と冒険者生活かな、あ、いや学園で毎晩お金集めに徘徊するのか…
「一人でも物はいいんだ」
「なくちゃやってられんぞ」
本当は戦うの怖いんだからな?
「私も物だよ?」
「え、その発想嫌いじゃないけど戦いたいの?」
「うん!ラッセルは一回ボコボコにしたい!」
なぁに笑顔で言っちゃってんだか
「え、ラッセル嫌い?」
「大っ嫌い!」
「はは、こやつめー…
え、まじ?」
「マジだよー、ご主人様ボコボコにされて平常でいられる奴隷なんかいませんよー」
顔は笑ってるが目はマジだ
「…え、あの空間のこと知ってるの?」
「え?だって私いたし」
「…」
「…?」
「どこに?」
「星屑の空間」
「じゃなくて、場所」
「二階部分?下に透明な床があって降りれなかったの」
宙に浮いてたってこと?ぱんつ見放題じゃん、ちがう
「階段とかなかったのか?」
「あったらラッセル殴ってるよー」
アハハと笑うヘラ
「あとずっとスターダストドラゴンとやり合ってた」
…あぁ、通常の召喚獣は敵と認めたのには追従するとレックが教えてくれたが、あの時俺が追従されなかったのはヘラが頑張ってくれてたからなのか
「…ありがとな」
暴行にスターダストドラゴンも加わってたらビリビリ棒のチャンスもなかったかもしれない
「うん、主人公だもんね?」
「がぁぁぁぁあ!」
恥ずかしいセリフ聞かれてるぅぅぅぅ!
「わっはは、あばれないでー忘れて欲しければ私を襲えー」
「だが断る」
「こいつぅう…」
忘れるために襲うとかもうメリットしかない…
その取引波状しておるぞ
◇
「昨日は…というか休日はみんな何してるんだ?」
「うーんとね、外にくりったー?っていうなんか可愛い魔物とスライムが沸いて、あと大きい魔物も出るらしいよ?ソフルは雷の街に買い物に行くって言ってたけど」
「へークリッターって?」
「もふもふで、丸っこくて、耳がちょこんて生えてるの」
ぼうあにめの白いまん丸ウサギかな?
外を見ればそんな姿のあおっこい魔物がピョンピョコしてた、意外とでかい
「あぁ、あれか、可愛いな」
「それをドスッてかんじで」
あらやだこわい
「ピャーって消えるの」
なにそれこわい
「私もドスッてして欲しいな…?」
なんだその擬音は、紐は、ムチは
「いや、それは武器でしょうが」
パラジウムの鉄紐とムチて
「そうだよ?」
「しぬよ?」
「縛って?」
どこで覚えてきたの?
「やだ」
「へたれ」
しってる
「じゃあ乱雑に扱っていいから…」
「誰に吹き込まれたの?」
「ないしょー、襲ったら教えてあげるー」
「じゃあいいや」
「むうううう!」
◇
もうすぐ日が落ちる頃
「お昼のときなに飲んだの?」
「魔力増強剤」
「なにそれ」
「しらん、エリンシアさんが勧めてくれた」
まぁ名前の通り魔力増やすやつだろう
「どんな効果なの?」
「代謝が良くなる」
変な汗が止まらん
「ふーん、私も飲んだら体拭いてくれる?」
「それならいいぞ」
「わーい、じゃあ飲もー」
どうやらヘラも渡されていたらしい
いや、じゃなくてね?
あれ?なんかおかしいぞ?
「ヘラってそんなにえっちな子でした?」
「えっちなこはきらい?」
いや好きだけど
「なんかちがう…恥じらいがないからか?」
「ありますぅ」
「じゃあ風呂一緒に入るか?」
「言質とった!」
ポイとコロコロソファーに転がされる
「わっ!?おい」
だだだっと風呂場にポイされる
「あ、ちょうど湯船沸きましたよー」
「エリンシアさん!ナイス!」
怒涛の展開でヘラと風呂に入ることになった
…背中を合わせて
「…風呂ってこうやって入るんだっけ?」
背中にあたるヘラの背中、女性特有のやわこい肌が心臓を高鳴らせる
あとせまい
「…うるさい、黙って入ってなさい」
押せ押せモードじゃなくなったようだ
「怖気付いた?」
「つっ!」
ぱしゃんと音がする
「べ、べっつに!?怖気付いてなんかないですけど!?」
なに?ツンデレ?かわいー
…デレは?
「……落ち着くなぁ」
こんな異常な状態で
しかしどうしてか、心がリラックスしたのか、不意にそんな言葉がでた
「えぁ?心臓うるさいんですけど!?」
え、そんなに?
リラックスしてないかも
「…いや、ヘラも一緒に戦ってくれるんだろ?」
そう思ったらな
言ったら本当に怖気付いてしまうから言わないだけで、怖くないわけが無い
本気手前のラッセルであの気迫、もはや別人で
加えてあのドラゴンだ
初めはエビなんかとバカにしたが
最後の姿は正しくドラゴン
虎さんいなかったらあの長い体が貫き続けるのだろう
精神が持つとは思えない
スターダストドラゴンにフラッシュバンは効かなかった
そもそも召喚獣は属性しか効かないとかいうインチキがあるらしい
なんだよ、属性って、魔法って言えよ
どうやら熱された剣でも効くから研究中だとか何とか
さいですか
…勝てなくてもいいとはどこか思っているが
すると頭をよぎるのは泣き崩れたラッセルとはにかんだラッセル
どうしてか勝てと囁いている気がする
「…私は奴隷だからね」
不意に返事を返された
「あんたの代わりになんでもやってあげる」
「ふーん、そーぷぷれーとか?」
「そーぷ?やらしいこと?」
「…あ、あぁ」
「チェリーが望むなら…本音は?」
「ありがとう」
「…へ?あ、いやそっちの本音じゃなくて!ぃゃ…そっちも嬉しいんだけど…」
最後はぶくぶくして聞こえなかった
あぁ、ヤラシイことをして欲しいかどうかの本音か
思考が混じってたから…
本音は?のフリはちゃんと本音を答えないとな
ざばぁと風呂からでる
「ヘラは俺の物だからな…一緒にラッセルボコるぞ」
物ならノーカンだ
「へ?は、わわ!前かくせぇ!」
「ごふうっ!?」
容赦ないパンチが脳を揺らした
次回予告詐欺しました…ごめんなさい…
決戦前夜的な、ね?うん、書きたかったんじゃないかな、この作者は、この頃?




