この世界、主人公に優しくない
街が一つに戻った翌日。
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悠斗は、完全に疲れていた。
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「……もう嫌だ」
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朝から本音が漏れる。
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昨日は街が二つになった。
その前は自分が増えた。
さらにその前は店が消えた。
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異世界生活というより、不具合報告会である。
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「悠斗♡ 朝ですよ♡」
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「知ってる……」
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アリスは相変わらず元気だった。
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「今日はどうしますか♡」
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「何もしない」
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「おお」
ユイが少し驚く。
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「ついに壊れた」
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「壊れてない!!」
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ミナが笑う。
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「でも分かるよー」
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「今日はゆっくりしたいよね」
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「そうだよ!!」
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エリナが頷く。
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「休息は重要です」
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「やっとまともな流れ……」
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「では筋トレしましょう」
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「なんでだよ!!」
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ミルフィーナが手を上げる。
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「鬼ごっこしよう!」
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「休ませろ!!」
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シオンだけは静かだった。
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「……今日は来る」
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「何が?」
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「面倒なの」
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「ふわっとしてるな!!」
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その時だった。
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ドンッ!!
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空から何かが落ちてきた。
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「うわぁぁぁぁ!?」
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土煙。
衝撃。
爆音。
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「またかよ!!」
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悠斗は叫ぶ。
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煙の中から、人影が立ち上がる。
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銀髪。
長いコート。
そして――
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「見つけた」
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女だった。
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だが。
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一番問題なのはそこじゃない。
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目が怖い。
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完全に獲物を見る目だった。
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「……誰だよ」
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「あなたを回収しに来た」
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「宅配みたいに言うな!!」
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女は悠斗を指差す。
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「観測番号・零番」
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「急にSFっぽくなるな!!」
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ミナが小声で言う。
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「新ヒロイン?」
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「違う気がする!!」
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ユイが呟く。
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「でも女」
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「判断基準が雑!!」
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女は真顔のまま続ける。
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「このまま放置すると、世界のズレが加速する」
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「もうしてる!!」
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「だから回収する」
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「人をゴミみたいに言うな!!」
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女は一歩近づく。
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空気が変わる。
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今までの敵と違う。
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本当に危険な感じがした。
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エリナが前に出る。
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「止まってください」
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「排除対象ではありません」
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「ちょっと安心した!!」
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「優先回収対象です」
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「安心できねぇ!!」
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ミルフィーナが変身し始める。
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「待て!!」
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「こういう時は変身です!」
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「毎回長いんだよ!!」
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光る。回る。長い。
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その間。
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女は普通に待っていた。
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「礼儀正しいな!!」
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「変身中に攻撃するのはマナー違反」
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「そういう世界なの!?」
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アリスがにこにこしている。
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「いい人ですね♡」
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「騙されるな!!」
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シオンが女を見る。
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「……管理側」
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「知ってるのか!?」
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「世界を揃える側」
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空気が少し重くなる。
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女は静かに頷いた。
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「そう」
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「この世界は、本来もっと静かで安定している」
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「いや今めちゃくちゃだけど!?」
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「原因はあなた」
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「また俺ぇ!?」
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女は悠斗を見る。
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「あなたがズレを認識するたび、世界は揺れる」
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「俺そんな迷惑な存在なの!?」
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「かなり」
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「即答!!」
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悠斗は頭を抱えた。
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「……つまり俺、何もしない方がいい?」
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女は少しだけ考えた。
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「理論上は」
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「最悪だ!!」
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その時だった。
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「でも断ります♡」
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アリスだった。
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「……」
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「悠斗さんがいないと、つまらないので♡」
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ミナが笑う。
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「それは分かる!」
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「うるさいけど必要」
ユイが言う。
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「騒がしいですが、大切です」
エリナが言う。
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「ツッコミ役必要!」
ミルフィーナが言う。
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全員が頷く。
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「お前ら……」
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ちょっとだけ嬉しかった。
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だが。
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「だから余計に危険」
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女が言う。
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「絆がズレを固定している」
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「重い設定ぶち込むな!!」
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風が吹く。
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女は静かに悠斗を見る。
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「近いうちに、また来る」
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「来なくていい!!」
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「その時は、強制回収する」
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「怖ぇよ!!」
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次の瞬間。
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女の姿が消えた。
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「……」
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静かになる。
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悠斗は空を見上げた。
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「……なんなんだよ、ほんと」
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すると。
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「でも悠斗♡」
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アリスが笑う。
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「主人公っぽくなってきましたね♡」
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「嬉しくねぇ!!」
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その日。
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悠斗は改めて理解した。
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この世界。
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本気で、自分に優しくない。
第17話を読んでいただきありがとうございます。
今回はついに、“世界を管理する側”の存在が登場しました。
これまで起きていた異常やズレにも、少しずつ理由が見え始めています。
そして悠斗自身も、ただ巻き込まれているだけではなく、この世界の中心に近づき始めました。
とはいえ、この作品はシリアス一辺倒にはならないので、これからもコメディとカオスは全力で続きます。
ここからさらに物語は大きく動いていきますので、引き続き楽しんでいただけると嬉しいです。




