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設定集その1 下車前

 注意!


 設定集は作者目線で書かれている為、メタ的な事が大量に書かれております。

 ステラかわいいヤッター!を合言葉に、頭を空っぽにして呼んでください。


 それではどうぞ。


『世界観』


 ステータスや迷宮。複数の雲上庭園に住むとされる龍族や地球にない創世神話にその教徒と神官に神々の加護。魔術師や騎士、皇帝王族貴族に冒険者までいるテンプレそのものの異世界である。

 異界(異世界から見た異界。主に現代日本)からの来訪者が確認されており、少なくとも味噌や醤油、ケチャップやマヨネーズが存在している。(以上1話より。一部改変)


 ステータスが存在しており、原則、このステータスに従って物事が進む。

 敵を倒すなどの行動でレベルが上がり、HPが0になれば死ぬ。ただし、HPが0になっても限定的な方法で蘇生することが出来る。


  †


『人物紹介』


 1話初出


・ テラ

 主人公その1。外見上は20代後半の男性。

 闇そのもののような黒々とした髪と瞳、白い肌と細長い指。暗い場所で黙っていると、幽霊と間違われそうな見た目をしている。

 重病人、あるいは死人のような外見に反して、騒がしく羽目を外すコトが大好きな遊び人である。


 外見と内面が一致しない奇妙な男。

 彼の正体は異界(異世界から見ての異界。現代日本)からの転生者である。

 外見上は20代後半と書いたが、身体年齢は50代。前世を合わせると100歳を優に超える。

 プルートーン財団(後述)の創設者。財団内の影響力は極めて強い。

 人生の大半を第二の生の始まりである『迷宮都市』で過ごし、探索者として《迷宮》を踏破していった。15年前、ついには最終目標たる『根幹迷宮』と突破した。

 その後、『迷宮都市』から旅立ち、冒険者として活躍。『帝国』中を巡り英雄として讃えられ、爵位こそ低いが貴族に序された。

 3年前の春。勇者の召喚に反対した彼は、ひそかに『帝国』を去った。

 そして現在。『帝国』に帰って来た英雄は一人の少女と出会う──────。


 ───現在公開しているステータス───


 『テラ』 lv.152 52歳? 男

 職業───冒険者・準男爵

 称号

  異界からの来訪者

   異世界からの転生者である。

   この世界で産まれながらにして異なる世界の知識を持つイレギュラー。

  深淵を歩く者

   詳細不明。

  楔の破壊者

   詳細不明。

 系統───闇属性傾倒。物質系統追従。光属性使用不可

 加護───プルートーン/異界の冥府神。階梯10/10

    光属性使用不可能。基本六属性───その内、主に物質系統───の魔術・奇跡の習熟度を大きく上昇。

    また、闇属性に関しては一部の権能行使を可能にする。

  HP……18,650   MP……23,034

  筋力(STR)……9,346  知力(INT)……19,879  速度(SPD)……10,087

  耐久(DUR)……10,355  精神(MND)……18,976  敏捷(AGI)……11,987

  魅力(APP)……85  幸運(LUK)……91  器用(DEX)……83


 ───作者からのコメント───


 ステータスから分かるように、作者渾身の厨二キャラである。


 転生者。経験を積んで冒険者になり、ついでに貴族にもなっている。戦闘力は異常に高く、持ち運べる道具の限界がなく、空を飛べて空間移動すら出来る。

 レベルは上限を越しているし、詳細不明の称号が有ったりする。外見年齢と実年齢の差が大きく、転生前の経験を加えると5倍近い差がある。

 様々な冒険を終え、新たな天地に旅立った英雄が帰って来た──────。


 ──────黒歴史のオンパレード。厨二要素盛り過ぎである。

 前作主人公のような、という比喩をしているが正に前作主人公そのものである。

 この後の展開で、IQが250あったり円周率を数万桁言えたりするとかの(そこそこイタイ)設定が加えられたとしてもインパクトに欠けるだろう。


 武器などは登場していない。

 外見的には『名前と死因を書き込むと、書いた内容が現実となるノート(を渡す)』とか『聖堂の銀十字を溶かして作った弾丸を撃つ白銀の拳銃と「パーフェクトだ」な黒鉄の拳銃の二丁拳銃』とか使いそうである。

 漆黒のロングコート(厨二仕様)を羽織っている描写があるが、どの様な効果を持つアイテムなのかは書かれていない。


 その他の持ち物については不明である。

 闇属性の魔術《収納》によって持ち運べる量は不明。取り敢えずピザ窯は入っている。


 (しがらみ)が嫌い。かつ、少女を拾って溺愛。

 思いっきり矛盾しているが気にしてはいけない。イイね。

 ただでさえ黒歴史てんこ盛りでカロリーオーバーなのに、ロリコンまで載せたら胸焼けするから仕方ないね。ほらソコ、子どもに甘いからショタコンを併発しているかも知れない、とか言わない。


 プルートーン財団の創立者。

 コイツ、本当に柵が嫌いなのか……?

 プルートーン財団の活動は、冒険者の指導、神秘を用いた食糧の大量生産。そして来訪者の保護。

 これらの活動は財団創設前に個人レベルでやっていた事である。

 財力と権力に任せて財団を設立した事で、組織レベルで活動を行えるようになった。

 財団だけで活動が出来るようになってからは冒険者としての本業に専念できるようになった。

 その結果、強大な組織力を持つ団体をスポンサーに持つ冒険者(個人での戦闘力もチート)が誕生した。加減というモノを知らないのかコイツは……。


 彼の持つ加護はプルートーン。

 ギリシャ神話のにおける冥府の神ハデスの異名であり、プルートーンは冥王星の由来であるローマ神話の冥府神プルートの語源である。

 プルートーンは『富める者』の意味であり、地中にある全ての財産はハデスが管理していることに由来している。



・ ステラ

 主人公その2。外見は10代半ばの少女。

 蒼の瞳を持つ白銀の長髪の少女、どことなく猫のような雰囲気を持つ。

 後述する呪いのため名前を失っており、仮にステラと名乗っている。


 テラが出会った少女。共に旅をする事になる。

 重度の呪いに侵されており、テラが出会った直後は『奴隷契約の首輪』すらしていた。

 それらの影響からか、強迫観念じみた自己犠牲が刷り込まれている。

 首輪を破壊し、身分を保証し、名前を付けてもらい、時たまからかいながらも自身をひたすら甘やかすテラに懐いている。好意を向かられたテラ本人は『刷り込みだろうか?いや、こんなに懐くはずは無い。現代日本なら誘拐犯だからな……』と疑問に思っている。もげてしまえ。


 ───現在公開しているステータス───


 『ステラ』 lv.??⇒20 ??歳⇒12歳 女

 職業───???・???

 称号

  被剥奪者

   加護を貫通するほどの呪いにより名前および??を奪われた。

   下の称号によりある程度は軽減されたものの、完全な解呪には時間が掛かる。

  二度目の祝福

   誰もが当たり前に受け取る、一度きりの当たり前の願いを込められた祝福。

   一つきりの祝福を見失ったが、当たり前の奇跡が再び起こった。

   おめでとう。君に二度目の誕生に祝福を──────

 系統───光属性傾倒。力素(エネルギー)系統追従

 加護───トキミヤミナヅキ。階梯?/10⇒3/10

    基本六属性───その内、主に力素(エネルギー)系統───の魔術・奇跡の習熟度を大きく上昇。

    また、光属性に関しては一部の権能行使を可能にする。

    現在は呪いにより加護の力が大きく制限されている。

  HP……1,865   MP……3,756

  筋力(STR)……153  知力(INT)……17,984  速度(SPD)……167

  耐久(DUR)……136  精神(MND)……19,308  敏捷(AGI)……196

  魅力(APP)……93  幸運(LUK)……95  器用(DEX)……87


 ───作者からのコメント───


 ステラかわいいヤッター!(テラのステータスから横着コピペする際(に操作を間違えて切り取りにしたことに気付かなくで後でひどい目に遭った)に、冒頭の”ステータスから……”の”ステ”が残っていた事から発生した発作。手遅れなので安心して欲しい)

 元・お嬢様疑惑のワケあり美少女。ツンデレとクーデレを併発しており、主人公に出会ったばかりで好感度がほぼ最大になる。残念ながら、こちらも厨二キャラである。


 チート防具などを装備しているが武器は未定。ホントダヨ。

 今のところはミーム汚染が最大の武器かもしれない。ステラかわいいヤッター!


 彼女の加護はトキミヤミナヅキ。

 異世界の神話に登場する女神。詳細は省略。


 正直、今書ける範囲では『ステラかわいいヤッター!』くらいしか書くことがないのである。



・ 車掌

 大陸横断列車の車掌の一人。今後、同名の名無しキャラが大量に登場すると思われる。


・ 服飾交易人の女性

 人当たりが良さそうな40代後半に見える女性。ステラかわいいヤッターの主犯格の一人。よくやった。



 2話初出


・ ワイバーン騎乗者(ライダー)

 騎乗していたワイバーンがテラに瞬殺された可哀そうな男。

 今後の登場は不明。


・ 乗客

 食堂にいた乗客。ご飯美味しい。


 3話初出


『勇者陣営』


・ ディアナ

 周囲を圧倒するかのような異常なまでの、概念じみた《美》を持つ20歳前後の女性。

 異界(異世界から見た異界。主に現代日本)より召喚された勇者の一人にして、リーダー的存在。

 血のつながらない義理の兄も勇者として召喚されている。


 保有している加護はギリシャ神話における愛美の女神アフロディーテと不和の女神エリス。

 偽名の由来はローマ神話における月の女神ディアーナ。

(余談だが、現時点で彼女だけ加護と偽名に関係性がない。1人目から例外である。本来ならアフロディーテに対応するのは金星であり、ローマ神話ならヴィーナスが該当する。それ以外にはイシュタルやイアンナ、アスタルテなどであろうか。

 これは加護を決める前に名前を決めてしまった事が原因。作者的に他の名前ではしっくりこないのである。後付けで理由考えます!)



・ トリウィア

 10歳前後の少女。外見が変化する描写アリ。

 異界(異世界から見た異界。主に現代日本)より召喚された勇者の一人。ディアナの補佐。


 保有している加護はギリシャ神話において出産と死、豊穣と贖罪。魔術を司る冥府の女神ヘカテー。

 強大な力を持つ女神であり、文献によっては『あらゆる成功を保証し、他の神に祈る前にヘカテーに祈るとご利益が増す』などと絶賛される事すらある。また、ゼウスによって海洋、地上、天界で自由に活動できる権能を与えられているともされている。

 偽名の由来は古代ローマにおいてトリウィア(十字路の)という形容詞で呼ばれていたことに由来。逸話多いなぁ!



・ アレス

 20歳前後の青年。外面は非常に良い。

 異界(異世界から見た異界ry)より召喚された勇者の一人。

 ディアナとは両親が再婚してことで義理の兄妹となった。


 保有している加護はギリシャ神話の戦神アレス。

 信仰されていた地域がギリシャと仲が悪かったので、不遇な扱いをされることが多い。彼が活躍するのはローマ神話の時代まで待つ必要が有る。ローマ神話において戦神マルスとなった彼は主神ユピテル以上の知名度を誇る。

 彼がアレスのままなのか、それともマルスとなるのか。それは誰にも分からない。



・ ノルン

 20歳前後の女性。背が低く、目立たない外見をしている。少女趣味(?)

 異界(異世界からry)より召喚された勇者の一人。ディアナの側近その1。


 保有している加護はギリシャ神話において運命を司る女神モイライ。

 モイライは複数形の単語であり、クローソー、ラケシス、アトロポスの3人の女神で形成される。

 彼女たちには──────運命にはゼウスですら敵わない。

 加護の絶対性や異世界に召喚された事などによる過度のストレスから精神に負担が掛かり、二重人格として特異な性質を表した。



・ ヒトミ

 20歳前後の巨大な眼帯をした長身の女性。長い髪が美しい。

 異界(ry)より召喚された勇者の一人。ディアナの補佐その2。


 保有している加護についての記載なし。

 ヒトミという偽名や、巨大な眼帯などから目に纏わる上位存在だと思われる。

 美しく長い髪などの符号からメデューサなどが挙げられる。



 以下、名前だけ登場した勇者

・ 担任

・ シグルド

・ オリオン



 以下、名前すら登場していない勇者

・ ヘパイストスの加護を持った勇者

・ アスクレピオスとして覚醒した勇者


『勇者ではない』


・ オリガ

 勇者と敵対した女傑。

 現在行方不明。


・ タチアナ

 名前だけ登場。

 『帝国』皇太子テレイオスの婚約者だった。


・ テレイオス

 名前だけ登場。

 『帝国』皇太子。継承権1位。


  †


『用語紹介』

・ 『帝国』

 大陸(の一部)を統一した。異世界ヨーロッパでOK。


・ 『大陸横断列車』

 『帝国』内を複数の貴族領を横断できる列車。

 列車内は何処の領地でもなく、乗り降りしていない領地の関税などを無視出来る。その分、運賃はお察しである。

 長距離移動のため夜行列車。食堂車と特等車、一等車、二等車、三等車がある。


・ 『迷宮都市』

 『止まぬ歓声の街』の内部にある迷宮だらけの特別区域。

 多くの探索者が昼夜活動し、戦利品や消耗品などの関係で高い技術力を誇る。


・ 迷宮

 膨大な魔力により時空が捻じ曲がっている建造物。

 異世界の道具などが紛れ込み、出土することも有る。

 迷宮内部で死亡しても特定のポイントで復活する、内部構造が変化する事がある等の様々なルールが存在する。


・ プルートーン財団

 通称、財団。テラが創設した組織。テラの欄を参照。


・ 『園』

 およそ500年前から『帝国』に存在する組織。

 魔物や聖獣、もしくはアイテムなどを回収して調査し、以下のようなレポートを作成します。



  ────────────



人魚の鱗器 No.Q004-32

 ※ 最近、内容が更新されました ※


 分類:アイテム 神秘階梯:1~2/3~7


 確保難易度:1/2(副産物)

  確保、あるいは捕獲する際の難易度を表す。

  本アイテムの確保は非常に容易であり、後述する副産物については単体での戦闘力が低いため捜査員単独でも確保は可能です。群れであったとしても少人数のパーティーで確保可能です。

 収用難易度:1/1

  収容する際、および収容違反が発生した場合の鎮圧の難易度を表す。

  本アイテムそのものは脱走しません。副産物に関しても同様です。

 保護難易度:1/3

  対象の保全の難易度を表す。生物の場合は繁殖などを視野に入れる。

  本アイテムは人工的に作成が可能です。副産物についての保管は容易ですが、作業の簡略化のため専用の容器を用意してください。


・ 詳細

 対象は人魚の鱗を加工して作られた器。サイズは大きくても小皿程度である。

 どのような環境下であっても、対象からは一定のペースで特殊な水(後述)が生成される。

 この器は生命活動をしていると推測される。生命活動の活力は不明だが、魔力を生成し水を生み出していると考えられる。


 対象から産み出された特殊な水(以下、人魚水)について。

 人魚水は氷結しない程度の低温(目安は5~15℃)で保存される事が好ましい。

 凍らせたり、加熱することで人魚水の特性は失われる。

 破棄したい場合は煮沸することで人魚水は通常の水と同じ性質になる。


 人魚水の特異性は生物が摂取した場合に発生する。

 摂取した対象の負傷を治癒し、固有の再生力を上昇させる効果がある。

 これらの特異性のメカニズムは、摂取した生命体の組織に人魚の性質を浸食させることである。

 故に、体組織は少しずつ人魚のモノに置き換わっていく。


 人魚水を摂取した場合の特異性は、摂取量が少ない場合ならば時間経過や入浴などで体温を上昇させる事で消去できる。

 だが、ある域を超えて摂取すると特異性が定着する。

 定着してしまった場合は、人魚水を摂取しなくとも体組織が人魚に置き換わり、最終的には種族そのものが人魚に不可逆的に変化する。


・ 補遺1


 人魚の鱗を採取し、本アイテムを作成することに成功。

 実験効率の向上のため、器を量産する事を決定。


・ 補遺2


 再生の力と人魚化の力が失われる条件が異なっている。

 安全に使用できるように検証を行う。


 (中略)


・ 補遺?


 ワイバーンに人魚水を摂取させ続けたところ、人魚ワイバーンの発生を確認。

 足が劣化し、尾の形状の変化が確認された。

 経過確認と共に、繁殖と更なる進化についての研究を開始する。


・ 補遺?


 人魚ワイバーンがワイバーンマーメイドに進化。

 鱗に覆われていた体表面に人の皮膚に似た組織が形成され、ヒトの生殖器に類似した器官が生成されているている。

 まさか、このような生命体が存在していたとは驚きだ。


・ 補遺?


 メリジューヌに進化。

 人魚に竜翼が生えたような姿。人魚特有のヒトに似た毛髪や乳房、生殖器などを持つ。

 ドラゴンメイド(竜に変身できる乙女)やマーメイドに纏わる存在であり、伝承に登場する。


 これは歴史的な発見かも知れない。

 ワイバーンを生み出す『力持つ竜』やマーメイドを眷属とする水妖の祖先が共通であったのかもしれない。

 本個体を収容し、更なる研究を行わなくてはならない。

 これは我々の使命である──────。



 ※ 以下が更新された情報です ※



・ 補遺??


 我々は失敗した。

 水妖は水を操る。


 人魚水の特異性と合わさる事で、どの様な相乗効果をもたらすのか。

 その危険性を理解していなかった。いや、理解していながら見えない振りをしていたのかもしれない。


 すでに手遅れだ。

 この区域は閉鎖する。


 私自身、指に水掻きが生成されペンを持つことが困難になりつつある。

 人魚に変態してしまった人間が元の人格を保っているかどうかを確かめる術はない。

 故に、このレポートは厳重に保管する。

 願わくは、この区域を開放したモノが本レポートを発見し、同じ間違いを起こさない事を願う。



 ────────────



「──────なんだコリャ?」

『どう見ても、元・生存者が書き残したレポートでしょう』

「という事は、この水は人魚水なのか」

『そのようですね。氷点下の低温に長時間晒された事で組織破壊が起きているため、特異性は失われていると考えていいでしょう。仮に特異性を維持していたとしても、我々が保有している加護が人魚水の持つ神秘の階梯を上回っている以上、我々に作用しませんから安心してください』

「分かってはいるが、気分が良いものじゃないな……」

『それなら早めに撤収して、後は実行部隊に処理させましょう。私たちは風呂にでも入りましょう』

「ああ、その通りだ。だが──────」

『ええ──────』


 分厚い氷の奥。

 悠々と泳ぐ無数の影。

 中央で睥睨する有翼の人魚。


 ──────目が合う。


 およそ百年ぶりの獲物に舌なめずりをする人魚の群れ。

 歓喜の笑みを浮かべる、任務に退屈を覚えていた戦士。


『申し訳ないのですが、《電の槍》の使用は許可できません。

 そこで《電の槍》を開放されると大規模な地盤沈下が発生すると思われます。

 極力、儀礼開放。最大でも限定開放までで抑えていただきたい』

「ハッ、誰に言ってやがる。

 この程度の雑魚に手こずるとでも思ってんのか?」

『いいえ、貴方ほどの英雄ならば鎧袖一触でしょう。ですが、万が一という事もあります』

「はいはい。──────まったく、難儀なこった」


 美丈夫は腰に佩いた剣を抜くのではなく、短槍を顕現させる。

 片手で、両腕で、全身で。トネリコの柄を持つ短槍を何度か振り回し調子を整える。


「さて、異郷にて呪死と病魔を司る破軍の魔神の加護を受けた者よ。

 ここまでの案内、大儀である。報酬の前払いに我が武威を見せようか」 


 鮮明な紅蓮に燃える双眸と短髪。

 白銀色に輝く青銅の軽鎧と穂先。

 そして、鍛え向かれた濃密な身体からは神気(オーラ)──────紅蓮の暴風と黄金の稲妻が噴出する。


『それは頼もしい。是非とも貴方の戦いぶりを見せていただきたい』



 天宙神ゼウスの子である戦神アレスを父に持ち、運命神モイライの寵愛を受け英雄となる事を約束された存在。

 英雄が軒を連ねたアルゴーノーツの一員として活躍。槍投げを最も得意とし、アルゴウナイタイ後の競技会で優勝している。

 彼にとって最も有名な逸話はカリュドーンの猪狩りだろう。

 故郷に天罰として遣わされた神獣に止めを刺したのは彼だ。



『不死身にして神獣殺し。血筋と運命に約束された大英雄──────メレアグロス』


 『メレアグロス』 lv.100 ??歳 男

 職業───英雄。被召喚者

 称号───神話の英雄

      運命の寵児

      神獣殺し

 系統───光属性系統。雷属性開放。

 加護───モイライ/異界の運命神。階梯Uncountable/Uncountable

      アレス/異界の戦神。階梯8/8

      ゼウス/異界の天宙神にして最高神。階梯8/Uncountable


  HP……Uncountable/Uncountable   MP……Uncountable/Uncountable

  筋力(STR)……Uncountable  知力(INT)……Uncountable  速度(SPD)……Uncountable

  耐久(DUR)……Uncountable  精神(MND)……Uncountable  敏捷(AGI)……Uncountable

  魅力(APP)……Uncountable  幸運(LUK)……Uncountable  器用(DEX)……Uncountable



 名を讃えられた英雄は獰猛な笑みを浮かべる。

 迸る覇気により、分厚い氷の壁に亀裂が走る。


 罅割れは瞬く間に広がり、水が流れ込んでくる。

 英雄メレアグロスは足元の水に頓着せずに歩く。


 邪な笑みを浮かべる竜翼の人魚。

 水は相手を人魚に作り替える。

 目の前にいるのは男一人。

 溢れる水で飽和すれば負けることは無い。

 ──────そう思っていた。


 英雄から迸る神気(オーラ)が全てを弾く。

 水を弾き飛ばす、もしくは沸騰寸前まで加熱する。

 もっとも、人魚水の持つ神秘では古の英雄が内包する神秘を突破できないのだが。


 必勝を確信していた竜翼の人魚の笑みが凍り付く。

 その様子を見て、嘲るような笑みを浮かべる英雄。


 直後、圧に耐え兼ね、ひび割れの広がりが決定的になる。


 怪物の首領は唄う。謳う。

 外敵を殺せ。全てを覆え。

 我らが水で、押して流せ。

 水は喜ぶ。怪物は応える。

 怪物の王の命に従い、堰を切るかのように目の前の矮小なる存在に殺到する。

 限界を越えて水を貯めたダムには無数の亀裂が走り、今にも決壊しようとしている。下流に住む人間に濁流をもたらす自然災害の体現──────。


 英雄は猛る。笑う。

 戦と殺の意思に迸る神気(オーラ)

 眼光と穂先の輝きが増す。

 彼は今、限界まで張り詰めたゴムだ。導火線に火が付いた火薬庫だ。

 完全に制御下に置かれた肢体。安全装置は解除済み、引き金が引かれた次の瞬間には劇鉄が起こり、神速で弾丸が打ち出されるだろう──────。



 英雄と怪物の戦い。

 それは太古より最も好まれた物語の一つ。

 今ここに、新たる英雄譚の一つが紡がれる──────。



 ────────────



竜翼持つ水妖メリジューヌとその王 No.R136-012


 ※ 過去500年に渡り、自然発生した例は確認できていません。

   本レポートはNo.Q004-32の収容違反により発生した個体について記しています。


 分類:魔物・竜種 神秘階梯:6


 確保難易度:5(単体)/7~9(眷属あり)

  確保、あるいは捕獲する際の難易度を表す。

  自然発生する可能性は極めて稀。若しくは発生しないと考えられます。

  そのため、人工的に作られたモノを改めて確保する場合の難易度となっています。

 収用難易度:4~9

  収容する際、および収容違反が発生した場合の鎮圧の難易度を表す。

  収容は非常に困難ですが、肉体的に欠損を与えれば難易度は下がります。ある程度の時間経過で欠損すら回復するので注意が必要です。

 保護難易度:ー(8)

  対象の保全の難易度を表す。生物の場合は繁殖などを視野に入れる。

  積極的な保護は推奨できません。繁殖は許可できません。

  収容する際は万全の準備が必要です。


・ 詳細

 伝説上の存在メリジューヌ。その王。統率者。


 伝承上の存在であるメリジューヌ。

 本来は竜翼と蛇の下半身を持つ女性であり、ドラゴンメイド───竜に変身できる女性───の伝承やセイレーンの伝承と関連付けられる。


 対象はNo.Q004-32の副産物(通称、人魚水)の作用によって竜種であるワイバーンに魔獣であるセイレーンの属性が雑ざった存在です。

 この発生条件は伝承本来のモノとは異なっているため、本来のメリジューヌとは異なる性質であることが推測されます。


 竜翼をもつ人魚。

 土と風の性質を持つ下級の竜種ワイバーンと水の性質を持つ魔物セイレーンの複合体。

 性質が物質系統に因っているため、力素(エネルギー)系統による攻撃によって肉体を不可逆的に変化させられることに弱い。


 人間に倒される存在。

 火を扱う事が出来る存在──────人間とは分かり合えない。


 本来のメリジューヌは人を愛するが、決別が約束されている。

 対象は初めから人間と敵対する。もしかしたら、本来のメリジューヌより救いがあるのかもしれない。



 ────────────



 本レポートは勇者によって、全体の水没と凍結によって閉鎖された区画を開放した際に発見されました。


 報告は以上です。


 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


 ……。

 …………。

 ……………………。


 えー…………。


 長ぇよ!?(作者渾身のツッコミ)


 筆が乗り過ぎました。

 具体的には、同日公開予定だった新章突入話が投稿できないほどに。


 ごめんなさい。

 忘年会とか卒論で忙しかったんです。許してください。


 来週月曜に投稿できる──────と嬉しいです。自分としても。

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