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1話 はじめまして

 小説になろうでは初投稿です。


 第一話。

 戦闘はお預けです(うずうず……)。


 よろしくお願いいたします。


「──────俺は反対する」


 立ち上がり宣言する。

 騒がしかった部屋が静まり返る。


 大広間の大テーブル。長方形の末席に座る自分に目線が集まる。

 会議とは名ばかりの出来レースをしていた上座の連中が立ち上がる。

「成りあがり」「新参者」「冒険者風情」指を突きつけ、口角泡を飛ばして非難する。

 あまりに意味のない内容。会議は踊る、されど進まず。そんな言葉を思い出した。


「初めから結論が決まってるのは分かった。だが、せめて議論をしろ」


 立ち上がっていた連中が押し黙る。

 座ったままだった連中と共に言い訳めいた事を小声で話す。


 正直やってられない。

 そう思い、立ち去ろうと背を向ける。


「──────お待ちください」


 声を掛けられる。

 紅一点。誰が発言したかは振り返らなくても分かる。


「申しわけありませんテラ様」

「いや、こちらこそ。無礼を働いて申し訳ない」


 振り返る。

 白銀の長髪と蒼穹の双眸を持つ地上の女神。

 氷の女。女軍務卿。未来の女宰相──────ウラジーミル大公女オリガ。


「単刀直入に言おう。俺に、俺たちに何をさせたかったんだ?」

「貴方と貴方の協力者がいつもやっている事ですよ」

「なら断る」

「そうでしょうね」

「悪いな、姫さん」

「構いませんよ。英雄」


 ──────頬を緩めて苦笑い。

 宮殿で見かける時はいつも無表情だった彼女が見せる初めての顔。

 無表情の次に見た表情が苦笑いなのは不満だが、それすら美しい。


 罵声。

 気安く呼びかけた事への非難。


 猫なで声。

 組織のノウハウを生かせる。利益になる。損はさせない。


 ──────小さく眉をひそめる。

 なんだ。思ったより表情豊かじゃないか。

 こんな事なら、一度でいいから話しかけるんだったな。


「申しわけないが、この件に関して俺は協力しない。

 俺が作った財団のポリシーから外れるからな。

 支援や物資、ノウハウについては財団職員に一任する──────以上だ」


 改めて踵を返す。

 面倒事に付き合わされるのは御免だ。


 背後から聞こえる声。

 この場に帰ってくるつもりはない。


「負け犬の遠吠えとでも思ってくれ。

 勇者でも何でも召喚すればいい。だが、手に余るものを呼ぶんじゃないぞ」




 この世界には、稀に異界からの『来訪者』が現れる。

 それは、新たに生を受ける『転生』と着の身着のままで突然現れる『漂流』、目的を以って呼び寄せる『召喚』の三通りがある。

 転生で現れた人を『転生者』、漂流なら『漂流者』、召喚なら『被召喚者』と呼ぶ。


 転生者である自分は冒険者の仲間と共に来訪者の保護を行う組織を作り、自分の二つ名からプルートーン財団と名付けた。

 来訪者の保護以外に、集めた来訪者の知識や技術と『神秘』と総称される超常の力を組み合わせて食糧生産をしたり、『冒険者』の支援をしている。


 突然だが、この世界で大陸を統一した『帝国』では皇太子に箔をつける為に『勇者を召喚する』という風習がある。


 先に財団では来訪者の保護を行っている、と書いたが我々は来訪者を召喚したいわけではないのだ。

 異世界召喚なぞ、彼らにとっては災難でしかない。

 だから「関わらない、反対する」そう宣言した。


 それに、自分が関わらなくても姫さま──────女軍務卿が何とかしてくれるだろう。

 勇者は来訪者であるが、前提として戦力である以上は軍が管理・保護すべきである。

 冒険者としての指導も訓練の内だし、食料だって軍事の一環とも言えなくはない。

 まぁ、軍隊生活を強いるわけだから、召喚される勇者にとっては災難かもしれないが。


 英雄と称えられる活躍をして貴族に成り上がったとは言え、所詮は冒険者。住所不定で武装した不審者に毛が生えたようなモノだ。

 そんな自分が『帝国』の宮殿に何度も招待したのは彼らにとっての下準備。目論見が見抜かれている事を打算に入れての行いだろう。


 成り上がられた側にとっては堪ったもんじゃないだろう。

 だから爵位は下賜しても職も領地も下賜なんてされない。

 こちらとしても面倒事はゴメンだ。別口で誘われたりもしたが全て断った。


 ──────じゃあ、俺は何のために『帝国』にいるんだろうか?


 ふと、そんな疑問が頭を過る。

 状況を整理する。


 自分は冒険者。巷では英雄と呼ばれ、成り上がりで貴族になった。

 そんな中、『帝国』の方針に真っ向から反対し、会議を勢いで飛び出した。

 おかげで『帝国』に居辛くなった。


 ──────よし。


 それならば仕方ない。ほとぼりが冷めるまで姿をくらますとするか。

 せっかくの機会だ。外国にでも行ってみるか。バカンスとしゃれ込もうじゃないか。



 †



 それは三年前の冬の暮れ。

 勇者を召喚する予定日が間近に迫ったある日の事。


 そうして、一人の冒険者が新たな大地に旅立つことを決意した。


 ──────彼には後悔があった。


 そのことに気付くのは、しばらく後の話。



 †



 ──────体が痛い。

 唐突に意識が覚醒する。


 体を伸ばし、こわばった体を解す。

 定期連絡を送り終え、気を抜いていたら眠ってしまったらしい。

 後は寝るだけ、と思っていたのが原因だろうか。

 部屋の温度と湿度は自動で調整されるから、椅子に座ったまま、朝まで寝ても構わなかったのだが。


 まぁ、結局のところ、することは無いのだから眠ってしまおう。


 喉が渇いていたので少し水を飲む。

 力を抜いて、ベットに体を投げる。

 背中から心地よい振動が伝わってくる。特等車両の個室に備え付けられたベッドの柔らかさと合わさり乗客を眠りに誘う。


 やはり列車は良い。

 電車でも汽車でも、何なら魔導機関で動いていても構わない。枕木の上に敷かれたレールの上を車輪が運動する。ソレに人が乗り、誰かと出会い、別れる。これだけなのにロマンが溢れている。

 それも、長距離移動用の大型列車に乗っているのだ。列車中を探検したくなる。


 最も、ここまで贅沢な列車旅が出来るほど裕福ではなかったが──────前世では。


 第二の生を受けて50年くらいだろうか。

 ステータスや迷宮。複数の雲上庭園に住むとされる龍族や地球にない創世神話にその教徒と神官に神々の加護。魔術師や騎士、皇帝王族貴族に冒険者までいるテンプレそのものの異世界。

 異世界と言っても、パンや米どころか味噌や醤油、マヨネーズにケチャップすらある。武器や奥義の名前に地球での神話や伝説の影が見える。

 前世の記憶を持っている人間───あるいは生物───も珍しくはあるが居ないわけではない。ついでに、地球からやって来た人物も転生したり、迷い混んだり召喚されたりする。

 前世で何をしたかはあまり覚えていない。エンジニアとして定年間近まで働き、両親よりは後に死んだ。

 結婚はしていなかった。機会がなかったことは無いが、色々な柵が面倒だったのだ。


 柵が面倒、というのは今も変わらないか。

 今だってそうだ。

 若い頃は迷宮───時空や因果が捻れている建造物。特異な神秘を宿したアイテムの他に、異世界の道具が紛れ込む事もある。内部で死亡した場合、入口などで復活する───に潜り、転生者特有の異様に高い知識(INT)精神(MND)を活かしてレベルを上げ、かなりの財産と名声を手に入れた。

 余裕が出来てからは世界を放浪し、パーティーを結成し、幾つかの功績を上げ、貴族の地位を貰ったりした。貴族の地位は幾つかの特権の他、幾ばくかの年金が貰える。年金だけでも派手過ぎる無駄遣いをしなければ何もしなくても生きていける。

 貴族になった直後は、屋敷を構え貴族として暮らさないか、という誘いが幾つもあったが断った。

 識字率が日本ほど高くはない世界。異様に高い知識(INT)精神(MND)のおかげで古代文字すら簡単にマスターしている人間は上級貴族の知識人ですら稀であろう。

 王都───首都───の研究機関の職員や役人、地方の領主。果ては教会の上層部まで──────どれも断った。

 冒険者としての暮らしになれた自分にとっては、どうしようもなく面倒だった。


 結局、貴族になった後も冒険者として活動した。

 多くの仲間が出来た。

 新米の冒険者を指導した。

 現代日本の技術を伝えた。

 自分と同じような『異界からの来訪者』を保護した。

 人数が増えたので、自分たちがやっている事を大々的に行う組織として財団を結成した。

 全てが順調なように思えた──────。


 何人かの親友を喪った。

 財団は成長し、自分の助けが要らなくなっていった。


 そうして、一人旅をしている。

 人生の大半を一人で過ごして来た。いまさら変えられない。

 地位や名声を持っていたとしても所詮は冒険者。何時か何処かで野垂れ死ぬ無法者。それで良い。

 適当に旅をして、各地の上手い飯や酒を楽しむ。

 気紛れで人を助け、新しい技術を伝えたりする。

 ならず者の総称である冒険者でもマナーを守れば警戒は解ける。

 たまに難題を片付けて感謝されることも有るが、面倒な柵が出来る前にその地を後にする。


 そんな生活を続けて15年。

 迷宮に潜り過ぎたのか肉体・外見年齢は35歳といったところで外見年齢の老化が止まってしまった。むしろ若返り、成長すらしている。

 このまま死ぬまで冒険者で居続けるのだろう。仮に引退する事があったら伝記でも書こうか。


 ……。

 …………。

 ……………………。


 こんな下らない事をつらつらと思いつくのは何故だろうか?

 寝心地の良い環境に身を置きすぎて、半分寝ているのだろうか?

 それとも正体の分からない胸騒ぎだろうか?──────考えすぎだ。

 やれやれ、酒でも飲んで寝てしまおうか?

 清掃や防音に便利な魔術があるのだ。個室で酔いつぶれても迷惑を掛けないだろう。


 カーテンを開けると満天の星空。

 広大な世界に自分しかいないかのような感覚。

 ──────うん、自分好みだ。

 星を肴に一人酒を飲む。最高じゃないか。

 身寄りのない男一匹。柵のない天涯孤独を楽しもう。


 ──────こうして、一人の夜は更けていく。



 ……何か騒がしいな。



  †


 20分後。


「…………」

 物調面のおっさん冒険者と───


「わぁ、このサンドイッチ美味しいです!」

 ───美味しそうにサンドイッチを頬張る銀髪の少女。


 ──────こうして、二人の夜は更けていく。


 ……どうしてこうなった。

 いや、起こったことは極めてテンプレ。

 ボロきれ───もとい、ボロきれのローブを羽織った身分不詳の少女───が降って来たのだ。天井から。

 直後、車掌から引き渡しの要請を受けるも、腹の虫を聞くまでも無い欠食児童ぶりが余りに哀れだったので子ども一人の運賃と迷惑料を払う事で解決した。

 車掌に(金で)頼み込み、服飾関係の乗客を探し、この部屋に来てもらうように伝えてもらう。

 車掌が去った後、明日の朝食用のサンドイッチが乗った皿をテーブルに乗せる。

 目の前に食料があれば飛びつくと思ったのだが、食べようとしない少女。

 訳を聞くと「許可をもらっていない」と返す。


「全て食べて構わない。その代わり、食べ終わったら話を聞きたい」


 二つの蒼と視線を合わせて話す。

 それを聞くや否や、少女は急いで食べ始める。

 間違いない──────間違いようのない。

 何らかの魔術拘束がなされた首輪が無くても分かる。


 ──────間違いなく厄介ごとだ。


 考え事をしていたら、目の前にあった大人二人分はあるサンドイッチが半分になろうとしていた。

 ──────あ、咽た。

 慌てて食べるからだ。水を飲め。



「──────ありがとうございました」

「どういたしました」


 おっさん、ちゃんとお礼が言える子は大好きだぞー、と頭を撫でる。

 わっ、と少し驚いた後は素直に撫でられている少女。


 マズい、絆された。

 切り替えて事情を聴かなくては……。

 さて、先ずは──────


「先ずは名前だ。真名(まな)じゃなくて良い、君の名前は?」

「私は──────」


 ガチッ───と。口が閉じられる。

 露骨な魔術拘束。


「──────私はR136-a1と言います」

観測上最大質量の恒星(R136a1)かな?」


 首を傾げ「えっ……と?」と少女。非常に可愛らしい。

 取り敢えず「何でもない」と頭を撫でて誤魔化す。

 R136───R136年。今年の年号───から何らかのナンバリングだろう。

 偶然も良い所である。


 名前は意味を持つ。

 故に隠す、奪う、書き換える。

 元の世界───地球───でもよくある考えだ。

 だが、ステータスというルールが存在し、縛っている世界では更なる意味を持つ。

 例えば、名前を書き換えられると一部を除いたステータスが正常に機能しなくなる。

 それ故、犯罪者や奴隷の名前を奪う事は一般的に行われている。


 ──────しかし、面倒だな。

 躊躇は一瞬。こういう時の為に貴族の位を手に入れた。

 首に手を伸ばし「ちょっと失礼するよ」「……え」首輪を破壊する。

 唖然とする少女に、魔術拘束のいくつかは掛かったままだが、時間を掛ければ解除できる旨を伝える。


「えっと、その……ありがとうござい、ます」

「構わない。これがあると今後の話に支障が出る」

「わ、分かりました。でも、どうやって?」

「ステータスに任せて破壊しただけだが、壊し方にコツがある。これくらい出来ないと、迷宮では生きていけん」

「迷宮……」

「俺の」一息「おっさんの事はいい。君の話を聞かせて欲しい」


 少女と目線を合わせる。

 一瞬怯え「私……私は」目を逸らし、俯く。


「質問の方法を変える。最悪、頷くか首を振るだけで良い」


 冷静に振る舞い、告げる。

 肩を震わせる少女に──────


「さっき壊したのは奴隷契約の首輪だ。逃げて来たのか?」

「──────はい」


 肯定の返事は消え入るように。


「戻りたいか?」

「──────いいえ」


 ──────拒否。

 まぁ、当たり前だ。ついでに奴隷契約の首輪は術式ごと破壊してある。

 基本的に壊せないが、例外はある。

 壊したら罰則があるが……まぁ、貴族の特権という奴だ。


「それじゃぁ、どうする」

「────────────」


 沈黙。


「──────付いてくるか?」

「え──────」


 困惑を露わにして「良いんですか?」と聞く少女に。「別に気ままな一人旅だ。途中までなら構わん」とぶっきらぼうに返す。


「それで、君の名前は?」


 茫然とする少女に改めて問いかける。


「え……あ。私は──────私はR……私、私は」


 涙ぐみながら、名前を言おうとする少女。

 奴隷契約の首輪は破壊した。新たに魔術拘束を掛けられることは無い。

 だが、先んじて掛けられたモノまでは解呪に時間が掛かる。


「──────ステラ」

「ステラ。お星さま、ですか?」

「そう、星だ。名前を言えなくする呪いを解くまでの仮の名だ。名がないと不便だろう。解呪するには時間が掛かる。暫くは我慢してくれ」


 ステラ、ステラ───と何度か唱え直す。

 戸惑いから安心に。その表情が少しづつ変化する。


「なぜ、この名前なのですか?」

「そこにあって当たり前に輝くもの。名前が有るモノ、無いモノの差は見えるか見えないか──────俺たちに価値が有るか無いかのみ。

 ステラ──────星の名を持つ君が誰かにとって大切な存在に成れますように。──────そして、君にとっての一番星を見つけられるように」


 柄でもない事を言うのは気恥ずかしいものだ。

 全く、何処までテンプレなんだか。


 コンコン、コン──────とノック。


「どうぞ──────って、ああ。ワザワザありがとうございます。すいませんね突然」


  †


 ドアをノックし、部屋に入って来た女性に貨幣を握り込んで握手をする青年。

 一瞬、掌を確認した女性───服飾交易商だろうか?───は態度を軟化させる。

 私を保証した青年が渡した数枚の金貨は節約すれば半年は暮らせる額だ。


 こっそりと渡したが光属性の奇跡を常時発動している私には見えてしまう。

 ──────奇跡が発動する?

 摑まるまで当たり前だった事。少し前まで大きく制限されていた事。

 それが十全とは行かないが、ある程度は使えるようになった。

 恐らくは名前。

 真名(まな)ではない事に変わりはないが、効率を重視した無味乾燥としたモノと願いを込められたものでは価値が違う。

 名前を付ける、という当たり前のことに感謝をするのは初めてだ。

 その行為には大切な価値が有る。


「──────ステラ?ステラー」

「え?はっ、はい!」

「おお、やっと返事した。おじさんは出てるから、お姉さんの言う事を聞くんだぞー」


 お姉さんに、という言葉で我に返る。

 この部屋には私と青年───自称おじさん───の他にもう一人いる。

 ──────気を付けなければ。


「はい!分かりましたお兄さん」


 満面の笑みで少しのユーモアを交えて返す。

 彼はワザとらしく吹き出す。


「おいおい、外でお兄さんはやめてくれよ。恥ずかしい」

「えへへ、良いじゃない。減るもんじゃないし」

「まぁ、悪いもんじゃないがな……」

「来ている洋服は減るけどね。見てく?」

「見てかない。お前も立派なレディなんだから、そこら辺は弁えなさい。おじさんも気を付けるから」


 んじゃ、お願いします。とお姉さん───お姉さん?───に告げ、部屋を出て行くおじさん。

 此方を見て、上出来だ、と口を動かしながら。


「さて、よろしくねステラちゃん」

「あ、はい。よろしくお願いいたします」

「あら、中々に可愛いわね」


 余談だが、私とおじさん───彼女にとっては私とお兄さん───はとてもロマンチックな再会を果たした顔なじみ、という設定になっていた。


  †


 人当たりの良さそうな四十代後半の女性にステラを頼み、車両後部のデッキで煙草をくゆらせる。

 長距離移動用の列車である15両編成この列車の内、一等車と特等車には個室が割り当てられ、2両ある一等車は一車両に四つ、3両ある特等車は車両丸ごとが部屋となっている。それら全てが埋まることはまずない。

 最後尾の車両に乗っているので、誰の迷惑にもならずに景色と煙草を満喫することが出来る。


 ふと、満面の笑みが思い浮かぶ。

 参ったな、完全に絆された。


 父性でも目覚めたか?

 前世は独身で死亡。今世も独身で五十路。

 いまさら、とは思うがあり得なくはないだろう。


 それとも第四の架空第三欲求、人助け欲のリビドーだろうか?

 気ままな放浪生活は禁欲生活だったのか?

 いや、何だかんだで人助けはしてたな。気ままな、という接頭語が付くが。


 考えが纏まらない。

 変な事ばかり考えてしまう。切り替えなくては。


 ステラについて考えないとマズい事は色々ある。

 助けてしまったからには責任が付きまとう。

 差し当たっては装備だ。

 追っ手を始めとした危機が迫ることは十分に想定される。過保護なくらいが丁度いい。

 そんな事を考えながら闇属性魔術の《収納》からアイテムを漁る。


 ──────お、良いの見っけ。


  †


「おお、中々に可愛いな」

「いえいえ、元々が可愛かったのですよ。私たちは本来の良さを出す手助けをしているのですよ」

「素晴らしい。その信念にはキチンと対価を払わなくてはなりませんな」


 フリルの少ないシンプルなワンピースだが、本来の輝きを取り戻した長い銀髪と蒼の瞳を持つ花の(かんばせ)を美しく主張させる。

 先ほどの浮浪児に近い───と言うかそのものの───格好をしていた時は今一つ年齢が分からなかったが、正しい身長や体型が分かり歳に関係なく映える服を着ていると15歳程に見える。

 こうしてみると何処かの令嬢のように見える──────というか、元々どこぞの貴族の娘なんじゃないか?この娘。

 益々深まった厄介ごとの疑い。

 考えても仕方ない心配を心の隅に押しのけ、着ている服やアクセサリー、着替えについての説明を聞き、多めの代金を支払う。



「さて、話の続き──────と行きたいが、今日はもう遅い。長い話は明日以降だ」


 服飾交易人の女性が部屋を去り、この車両から移動して数分。

 先ほどまでの賑やかさは無い。


「取り敢えずは装備だ。これからどうするかに関わらず、最低限の安全は確保しておきたい。

 念のために聞くかど、特に装備しているアイテムは無いね」

「ええ、ありません。装備していたのは先ほど破壊された首輪だけです」

「了解。先ずはコレだ」


 漆黒の穴───闇属性の《収納》───から取り出した箱に入っていたのは深紅の宝玉。

 宝玉を模った美しいソレは冷たく硬く、硬質な外見そのものの感触がする。


「コレは《日華の鎧》というアイテムだ。心臓の上に中ててくれ」


「はい」両手で受け取り、心臓の上に中てる「熱っ───くない?」微かな膨らみを歪めた後、体に入り込み一体化し、体から淡い黄金の光を放たせる「これは、どの様なアイテムなのですか?」


「《日華の鎧》──────これは、何処かの神様だか英雄だかが身に纏っていた黄金の鎧だ。正確にはソレを模したモノ」


 《日華の鎧》──────階梯10/光・炎属性の神秘を帯びたアイテム

 異界の太陽神とその息子である英雄が身に纏っていた黄金の鎧。その光輝を模した鎧。

 この鎧は持ち主と一体化し黄金の光を放つ。持ち主が鎧を纏えば黄金に輝く。

 持ち主を傷つける行為がなされた場合、それが届く前に焼き尽くす。仮に届いても、その効果を大幅に減ずる。


「次にコレだ」絶句するステラに次を渡す。白銀のフード付きのローブ「これは普通に羽織ってくれ」

「は、はい」素直に羽織るステラ。着終わると同時に丈が調整され、重厚な白銀が薄い黒に変わり、淡い黄金が隠れる「これもすごい価値があるのですか?」


 《月精の(まとい)》──────階梯10/光・闇属性の神秘を帯びたアイテム

 太陽の光を反射する美しい月。静かに輝く月は太陽の輝きを隠す。月の纏は静かに靡く。

 装備やステータスを隠蔽する効果がある。例え、どんな物を持ち歩いていても不審がられることは無く、その一切を隠し通す。

 脱いでいる状態でも効果は発動し、隠蔽は任意で解除可能。


「こんなモノがあるのですね……」

「迷宮で手に入れたアイテムを迷宮都市の職人に頼んで作ってもらったモノだ。市井にはまず出ないし、王族貴族ですら過保護極まる」


 迷宮、という単語を反芻するステラ。

 そして、意を決したようにして「貴方の名前を聞いても良いですか?」と問う。


「テラ───冒険者のテラだ。もちろん真名じゃないけど」

「テラ」一瞬の間があり「もしや、プルートーン」


「あーいや、そういうの良いから」

「はい?」

「面倒事は嫌いなの。お休みー」

「え……ええ」


  †


 如何にもめんどくさい。そんな風にベッドにもぐりこむ青年──────冒険者テラ。

 暫くすると、寝息が聞こえて来る。

 深く重いソレを確認。眼球の動きを確認した加護による奇跡が寝ていると伝える。


 大きく息を吐く。

 ここまでの展開が急すぎた。

 正直、このまま眠ってしまいたいが、その前に確認しなくてはならない事がある。


 ──────ステータス。

 ステラになった私の今のステータス。

 そして、テラについてのステータス。


 ベットを見る。

 先ほどと変わらず、寝息を立てている。


 冒険者テラ。

 英雄として讃えられ、貴族の位を与えられた生きる伝説。

 プルートーンの二つ名を持ち、その名を冠した財団を立ち上げた。

 食料生産と冒険者指導、異世界からの来訪者の保護を行うプルートーン財団の活躍により、テラよりもプルートーンの方が有名になっている。


 テラの方が気になるが、先ずは私のステータスから確認する。



 『ステラ』 lv.??⇒20 ??歳⇒12歳 女

 職業───???・???

 称号

  被剥奪者

   加護を貫通するほどの呪いにより名前および??を奪われた。

   下の称号によりある程度は軽減されたものの、完全な解呪には時間が掛かる。

  二度目の祝福

   誰もが当たり前に受け取る、一度きりの当たり前の願いを込められた祝福。

   一つきりの祝福を見失ったが、当たり前の奇跡が再び起こった。

   おめでとう。君に二度目の誕生に祝福を──────

 系統───光属性傾倒。力素(エネルギー)系統追従

 加護───トキミヤミナヅキ。階梯?/10⇒3/10

    基本六属性───その内、主に力素(エネルギー)系統───の魔術・奇跡の習熟度を大きく上昇。

    また、光属性に関しては一部の権能行使を可能にする。

    現在は呪いにより加護の力が大きく制限されている。

  HP……1,047/1,865   MP……3,245/3,756

  筋力(STR)……153  知力(INT)……17,984  速度(SPD)……167

  耐久(DUR)……136  精神(MND)……19,308  敏捷(AGI)……196

  魅力(APP)……93  幸運(LUK)……95  器用(DEX)……87



 ──────真名と■■を奪う呪い。


 創世神話に登場する神々の中でも上位に位置する女神トキミヤミナヅキの加護を貫通する強力な呪いの正体は依然として分からないが、真名に近い願いを込められた名前を手に入れた事で呪いが軽減されている。

 相変わらず、呪いによりレベルが大きく下がっているが、最低レベルまで下げられていた状態よりは大分好転した。また、本来の加護に関する封印が軽減されている。

 ステータスの内、MPはレベルに関係するため大きく下がっているが、レベルに関係ない知力(INT)精神(MND)は元の値を保ったままである。

 これなら加護と合わせることで、一度くらいは高位の神秘を発動できる。


 続いてテラのステータス。

 自分のモノを見るのとは異なり、自由に見ることは出来ない。


 だが、何事にも例外はある。

 そのために私のステータスを確認したのだ。

 そう、ステータスを見る為の神秘を発動できるかを知るために──────。


 奇跡を発動するための詠唱を開始──────強い罪悪感。

 勝手に見ることは犯罪行為ではないが、倫理的には禁忌とされる行為である。


 最低限の安全を確保するためである、と自分に強く言い聞かせる。


 ──────称号、二度目の祝福。

 ──────当たり前の奇跡。


 だめだ、考えるな。


 ──────ありがとう。

 ──────ごめんなさい。


「世界を光で包み、万物を流転させた大神トキミヤメイキの眷属たる女神トキミヤミナヅキよ。

 貴女は破壊の災厄により大神が砕かれし後、稲光として別たれた魂魄を運ぶ揺り籠。

 闇に閉ざされた光を運ぶ女神よ。どうか貴女の力をお借りしたい──────《閲覧》」


 光属性の神秘《閲覧》。

 闇属性の《閲覧》とは異なり、現在から最も近い時間に持ち主がステータスを確認した際の映像を時系列をむしして情報を共有する。

 使い手の技量によっては隠されたステータスを見ることも可能であり、これを生業とする人は判定士と呼ばれる。



 『テラ』 lv.152 52歳? 男

 職業───冒険者・準男爵

 称号

  異界からの来訪者

   異世界からの転生者である。

   この世界で産まれながらにして異なる世界の知識を持つイレギュラー。

  深淵を歩く者

   詳細不明。

  楔の破壊者

   詳細不明。

 系統───闇属性傾倒。物質系統追従。光属性使用不可

 加護───プルートーン/異界の冥府神。階梯10/10

    光属性使用不可能。基本六属性───その内、主に物質系統───の魔術・奇跡の習熟度を大きく上昇。

    また、闇属性に関しては一部の権能行使を可能にする。

  HP……18,634/18,650   MP……22,989/23,034

  筋力(STR)……9,346  知力(INT)……19,879  速度(SPD)……10,087

  耐久(DUR)……10,355  精神(MND)……18,976  敏捷(AGI)……11,987

  魅力(APP)……85  幸運(LUK)……91  器用(DEX)……83



 地球という名の異世界からの来訪者。

 冒険者テラ、英雄プルートーンの噂は本当だったのか。


 私は創世神話に登場する女神トキミヤミナヅキの加護を得ている。

 だが、テラの持つ加護プルートーン。それは異世界にのみ存在する、この世界には存在しない神だ。


 神話には由来がある。

 私が加護を受けるトキミヤミナヅキは二柱の創世神、時間と光を司る有翼の男神トキミヤメイキの眷属であり、双子の妹とも娘ともされるトキミヤミナヅキその性質を受け継いだ幻視と稲光を司るとされる。


 地球という異世界から、こちらにやって来る手段は大きく分けて3つ。

 1つは漂流。漂流者と呼ばれる。これは3つの中で最も自然な方法。何かのハプニングでコチラ側に来てしまう存在であり、加護どころかステータスを保有していない事すらある。

 次に召喚。被召喚者と呼ばれる。これは勇者召喚という儀式によって召喚される。言わば被害者である。必ず加護を持ち、ステータスも恵まれている。

 最後に転生。転生者と呼ばれる。これはほとんど確認されていない。一説には、転生者の多くは記憶を失っているため、一般人と区別が付かないとされる。記憶を保持している場合は特異なステータスを持つ。通常、加護は持たない。


 この中で、テラは転生者である。


 彼の噂───もはや伝説と呼ぶべきだが───によると、彼は迷宮で生を受けたらしい。

 母親は不明。冒険者の一団が、迷宮で泣いている赤子を見つけ、保護したらしい。


 異世界の神々の加護を得ることは基本的に不可能である。

 当然だ。存在しないモノから力を得ることは出来ない。

 だから、向こうの世界からの来訪者ではないと異世界の神からの加護を得ることは出来ない。

 勇者召喚で召喚された被召喚者は必ず加護を保有しており、異世界の神からの加護を持っている事がほとんどである。

 だが、異世界で生を受けた転生者が加護を持っている事は稀であるとされる。

 彼の噂によると、彼の持っている加護はプルートーン───冥府の神───である事と関係があるのだろうとされる。


 だが、これらの事は確認しようがなく、今の私の安全には関係ない。


 更なる安全の確保のために必要な事──────真名の確認。

 だが、ソレは出来ない。

 自分が真名を奪われ、新たに名前を与えられたというのに。


 ──────確認すべきだと思う。


 ダメだ、出来ない。

 そこまでする必要はない。

 恐らく可能ではあるが、倫理的に出来ない。


 ──────出来るなら、やらなくてはならない。

 ──────自身の安全を追及するためなら、何だってするべきだろう。


 ……やめよう。

 これ以上、得る者はない。

 閲覧を解除し──────


 ──────なんだ、止めるんだ。


 これ以上、ステータスを閲覧する事のメリットはない。

 これ以上の確認は無意味。詳細不明の欄も同様だ。

 そう、これ以上は……。

 これ以上、これ以上。これ、以上……?

 まて、何かがオカシイ。


 ──────あら、バレた?


 アナタは誰ですか?

 いや、ステータスに仕組まれたトラップ……のようなモノですね。


 ──────そういうコト。

 ──────万が一に備えて仕掛けておいたトラップなんだ。

 ──────コミュニケーションをするのは初めてだから嬉しいね。ワクワクするよ。


 許可なくステータスプレートを閲覧された際、真名を知られないようにする。

 それがアナタですね。


 ──────そういうコト。

 ──────キミが誰なのか。自分にソレは分からない。

 ──────でも、キミが安全を求める『恐怖』と申し訳なさから生じる『善意』で真名の確認を思い留まった事は知っている。

 ──────その当たり前にエールを送ろう。

 ──────君の行先に祝福を。

 ──────…………。

 ──────なお、このメッセージの直後、キミは強い眠気に襲われる。


 …………えっ!?

 そんな馬鹿なって、MPが強制的に消費させられて、急激な、ねむけ、が……。


 ──────ゴメンね。コレ、やってみたかったんだ。


 そうか、お別れなのですね。


 ──────そうだね。

 ──────寝るときはベットでね。


 そうします。

 ありがとう。

 さようなら。


 ──────お休み。良い夢を。


 おやすみなさい……。



 ──────…………。

 ──────改めてキミに祝福を──────ステラ。

 ──────未来より。


 ──────んー……。おじさん、こういうのは気恥ずかしいなぁ。


  †


 目が覚めたら腹の上に温もりを持った重さを感じた。

 何と無しに頭を撫でる。きめ細やかな砂が流れるような感覚。綺麗な銀の髪だ。ステラは「うにゅ……」と猫が鳴くような声を出した。

 少し甘いような。子どもの匂いがする。

 ステラを起こさないようにベットから出る。

 頬を撫でる。くすぐったそうに身をよじる。


 この少女と出会ってから半日も経っていない。

 猫を拾ったようなモノだ。そう思っていたのに、短い時間で随分と絆されたモノだ。


 さて──────。


 ステラが起きる前に、少し『運動』をしよう。


  †


 異様な感覚がして、意識が一瞬で覚醒し──────その気配が警戒する必要が無い事が何となく分かる。

 その気配と同じ匂いに包まれている。その事実に安心し、久しぶりに感じる温かさを持つ安心に身を任せ、再び眠りの誘惑に身を委ねる。

 ああ、この感覚は久しぶりだ。

 まるで、年端のない子どもが親に甘えるような。そういえば、妹が私の膝を──────。


 ──────頭痛。


 ああ、この感覚は久しぶりだ。

 まるで、お父さんに甘えているみたいだ。お姉ちゃんの膝を借りた事もあったっけ。


 ──────。


 欠落感に涙が出る。

 この感覚は嫌いだ。自分が奪われたモノがどれ程大切だったのか。その傷を抉るのだ。

 この感覚は好きだ。自分が奪われたモノがどれ程大切だったのか。その傷を慰めるのだ。

 この感覚を──────私はどうしたら良いのか。私には分からないのだ。


「──────、──────。────────────。

 ──────♪─────────、─────────」


 聞き覚えのない音色と共に、頭を撫でられる。

 波のように。ゆりかごのように。安心させるような暖かで優しい声色。

 ……ああ、そうか。

 これは聞き覚えがないのではなく、この世界の言語ではないのか。


 ──────眠りの誘惑に抗う。


 私は、アナタの事を知りたい。



「──────あら、起きちゃったのか」


 私の頭を撫でている大きな手の向こう側からの声に、昨日であったばかりなのに安心感を覚える。


「まだ眠っててもいいんだよ」


 髪を梳くのは、冒険者と言われてイメージする太く荒れた指ではなく、細く繊細な指。

 丁寧に撫でる指に髪の毛がさらさらと流れ、独特な気持ちよさがある。

 油断すると、本当に眠ってしまいそうだ。


「いま、のは……。異界、の」


 意識を振り絞って、口を動かす。

 手の動きが止まる。離れていくソレに少し寂しさを覚える。


「やれやれ、有名になるのも考え事だな……。おチビにも知られているのか」

「失礼な。私の年齢は──────12歳ですから、そこまでおチビではないのです……」

「五十路のおじさんにとっては12も22も32もガキだよ。……ああ、どうしたどうした。嫌な夢でも思い出したのか?泣かないでくれ」

「子ども扱い、しないでください……」


 そう言うのが精一杯だった。

 自分の歳すら碌に言えない。

 分かってはいたが、辛すぎてならない。


「そう大人ぶっても仕方ないだろ。ゆっくり成長するしかないんだから」


 ──────成長。


「私は、成長できるのでしょうか?」

「勿論さ。これから色々な事を知るキミは、大きくなったら美人さんになるんだろうな」


 早く大人になりたい子どもに言い聞かせるように。


 私の思いは正しく伝わってはいない。

 彼にとっては、私は小さな子供なのだ。

 だが、僅かに救いになった。


 彼は私が知らない事。知りようがない事をたくさん知っている。

 奪われたモノは必ず取り戻す。

 その上で、色々な物を手に入れれば良い。


 気休めのような、しごく当たり前の一言。

 その一言に救われた事なんて思いもしないのだろう。


「……ありがとうございます」

「うん?まぁ、どういたしまして」


 いつか、この気持ちを伝えたい。

 当たり前のように人を救うアナタに。

 真っ直ぐ。正面から。


「さて、朝メシでも食べに行こうか──────ステラ」


 指し伸ばされた大きな手。


「そうしましょう──────テラさん」


 そう答えて手を取る。

 それだけの事が、どうしようもなく嬉しくて。


  †


 顔を赤く染めたステラの表情が、一瞬だけ、12歳のモノとは思えないような大人びたモノに見えた。

 ソレを誤魔化すように。


「んー……テラさん、かぁ……。何となく、違和感が在るなぁ」

「じゃぁ、テラお兄さん、ですか?」

「流石にお兄さんは恥ずかしいな」

「では、おじさんで。テラおじさん、これじゃダメですか?」

「お、良い感じ良い感じ。じゃぁソレで」

「分かりました。──────じゃぁ、行きましょうテラおじさん」

「おう、行こうか」


 参ったな、完全に手遅れだ。

 この娘の結婚式で号泣する自信あるぞオレ……。


  †


 いつか、アナタの事をテラ『おじさん』と呼ばない日が来ますように。


 そんな事を考えながら、私たちは扉を開ける。

 それは隣の車両に通じる扉。

 その事は分かっているのに、ただの扉が希望の未来に続いているような気がした。





用語解説

 ステータス

  魂魄に紐づけられた数値化されたルール。

  優劣を決定づけると言っても過言ではない。

  ステータスプレートで確認可能。一部、不可視の隠しステータスがある。

 HP……ヒットポイント。主に怪我や攻撃を食らった際に減る生命力のような物。

     実は年齢に関係ない。年をとっても減ったりはしない。

     0になると死亡。この場合は蘇生は可能。老衰や病死の場合は蘇生負荷。

     生命力ではなく、厳密には体力ではないので注意。0になったら死ぬ、というルール。

 MP……ミステルポイント。魔術や奇跡を使うと減少する。

     減少すると、独特の倦怠感が発生する。

 筋力(STR)……筋力。主に直接攻撃に作用する。

      重い物を持てるようになる。攻撃力が上がる、というルール。

 耐久(DUR)……耐久力。攻撃を食らった際、その影響を減衰させる。

      HPが減り温くなる、というルール。

 知力(INT)……知力。どれだけ賢いか。魔術の技能に直結。奇跡でのダメージを軽減する。

      レベルアップで上昇しないステータス。地道な努力が必要。

      魔術を強め奇跡を弱める、というルール。

 精神(MND)……精神。どれだけ精神的に強いか。奇跡の技能に直結し、魔術でのダメージを軽減する。

      知識と同じく、レベルアップで上昇しないステータス。神官は総じて高め。

      奇跡を強め魔術を弱める、というルール。

 速度(SPD)……速度。移動速度に直結する。

      持ち物が多いと移動速度は落ちる。当たり前だ。

 敏捷(AGI)……敏捷。反射の敏感さ。回避に直結する。

      速度(SPD)が足りないと避け切れないことも有る。バランスよく鍛えよう。

 魅力(APP)……人的魅力を示す。0~100。レベルアップで上昇しない隠しステータス。

 幸運(LUK)……運の良さの目安。0~100。レベルアップで上昇しない隠しステータス。

 器用(DEX)……どれだけ器用か。0~100。レベルアップで上昇しない隠しステータス。



 という訳で一話でした。

 感想や評価を頂けると大きな励みになります。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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