6.5レッド
目の前に立ちふさがる、怪人達。
あー、なんて楽しいんだ。
幸せだなぁ。
毎日がこんなに充実してる。
今日は、何の音楽を流そうか。
両耳横には、スピーカーがついている。
俺の願いだ。
〖それだけでいいのか?〗
え、足りない?
うーんじゃあ、頭で決めた曲が自動で流れるようにして。
〖……分かった〗
昨日は、なんとなく"マツケンサンバ"な気分だった。
以外とはまって、スムーズに戦えた。
今日は、第9が何か欲しいんだよね~。
なぜなら新しいレベル 5 の怪人が初出陣!
ヤバい、アドレナリン出まくって、頭おかしくなりそう。
まあ、すでに、おかしいんだけどね。
雑魚を、倒しながら、第9を鼻歌に、少しずつレベル5に近づいて行く。
おや、来たんだ。
後方に、仲間?…がひとり、またひとり、増えている。
俺の邪魔しなきゃ、どうぞ、勝手に、お好きに。
仲間ではない、けして。
お互い会話もしない。
(出来ないんだよね~)
だって、俺が願ったから。
『他に仲間達が後4人作ったから、協力するといい』
え、いらないよ。
『? …奴らは強い、5人集まれば、力は何倍にも…』
お願い追加してよ、お互い干渉一切なしで、よろしく。
『しかし…それでは』
奴は、まだ何か言ってたが無視。
そのせいで、戦いは個人戦だ。
でも、最近は、青の奴が後ろで戦況を確認して動き、黄色い奴は始めから後方支援しかしない。
4人でうまい事回している。
仲のよろしい事で。
俺は変わらず、個人戦。
一番強い奴を倒す。
ほんと楽し~。
*
俺はおかしいらしい。
物心ついた時には、庭で蟻を足でつぶして楽しそうに笑っていたらしい。
おもちゃを与えれば、叩きつけて壊す。
ぬいぐるみは引っ張ってちぎる。
年齢があがったら、おもちゃは壊さなくなったがドライバーを使って全部解体してしまうし、ぬいぐるみはハサミで分解していた。
両親は、困り果て、気味悪がり、下の弟だけを可愛がった。
小学生になると、理解ある担任にあたり、解体だけでなく組み立てもやる事を覚えた。
空手も始めた。
これも、両親に疎まれたストレスで、むやみやたらに同級生を、なぐったり、はたいたり、みかねた空手道場の師範だった叔父が一時期俺を預かって根気よく育ててくれた。
おかげで、普通の小学生になれたと思う。
中学で家に戻ったが、家族の仲は戻らず、一年待たずに叔父のところに戻り空手に夢中になった。
ある日中学の同級生が、カツアゲされる現場を目撃し、思わず手を出してしまった。
相手をかなりボコってしまい、叔父は、学校に呼び出されたが、相手がかなり裏で同級生をいじめていたらしく、最終的にはおとがめなしで終わった。
(まあ、家に帰ってから正座5時間させられたけど。)
同級生達から感謝され、一躍英雄扱いになった。
高校に入ってからも空手で全国目指して稽古にはげんだ。
表では… 裏で、悪人退治をしていた。
悪人退治なんて綺麗事、ようは誰かを殴りたかっただけだ。
初めてボコボコにしたあの時、最高に気持ち良かった!
また、いや、もっとやりたい!
気持ちは、抑えられない。
でも、俺いつまでもガキじゃない。
知恵もついた。
叔父にばれないように、そこは慎重によいこを演じた。
よいこを演じて溜まったストレスを悪い奴らをボコして発散した。
(楽しすぎる!)
しかし、高校卒業間近に叔父にばれた。
叔父に殴り飛ばされて、破門になる。
卒業式が終わると、そのまま荷物をまとめて叔父の家を出た。
住み込みで出来る解体作業専門業者で働いた。
解体は、楽しい。
が、一度覚えてしまったボコる喜びには、敵わない。
昼間働き、夜はボコり屋を始めた。
金は取らない。
ただ俺がボコりたいだけだから。
意外と依頼があるので週に一度か二度、俺の気持ちは満たされた。
もう何人の人間を再起不能にしたか、わからない。
しかし、2年ほどで、警察に捕まって、刑務所にいれられてしまう。
刑務所の中てはボコれず、ただストレスだけが溜まる。
(早くここから出なくては…早くボコりたい。)
模範囚のふりで、予定より早く刑務所を出る。
その後俺を引き受けた工場で、金ある程度稼いだら逃亡しようと思っていたが、俺の予想外の事態になる。
初日仕事終わり、住み込みの寮でボスらしい男と、その下っぱ5人。
お決まりの新人いじめがどうやら始まるらしい。
一発だけ殴られてやった。
俺も一発だけ、返してやった。
奴は、一発KO。
他の奴らもやろうかと、思ったら、
「…やったー!!!」
皆拍手喝采。
工場長も隠れて様子を見てたらしく、
「よくやった。」
なんて、頭をぐしゃぐしゃに撫でられた。
この日、工場を支配するボスが倒れた。
「いや、お前ならやってくれるんじゃないかと思ったよ、さすがだな」
どこからか、皆集まり、拍手、抱きあって喜び、鳴き声も聞こえてくる。
さっきまで隣で偉そうにしていた下っぱも「やっと解放される~」と、泣いている。
どうやら、伸びてるこいつに困り果てていた工場。
俺を雇う話しが出た時、こいつならなんとかなるんじゃないかと策を練ったらしく、何パターンか作戦を立てていたが、まさかの初日で解決したので、みんな大喜びしている。
「まあ、面会した時、思ったよりまともな奴だと思ったしな、お前ならいけるだろうって」
みんなに感謝され、握手を求められて、俺の中にあった
ボコボコの後にくる気持ちいい感情が、久しぶりに戻ってきた。
(一発じゃあ足らんが…、まあいいか、しばらく好い人キャンペーンで金稼ごう)
…ところが
この工場の連中、滅茶苦茶いい奴らばかりだった。
ボスだった奴はおとなしくなり、しばらくしたら辞めちまうと思ったのに、工場長が滅茶苦茶いい奴で側について話し合い、なんと全員に謝罪して真面目に働きだした。
(…まあ、俺の事は避けて通るけど…)
みんな、ここを辞めても他に行く場所なんてない奴らがこの工場に拾われて、最後の砦なんだと、先輩が教えてくれた。
俺みたいな刑務所出が、全体の3割くらい働いている。
他の奴らも、刑務所に行ってないだけで、似たり寄ったりの奴らばかりだった。
そんな中で、すっかり、いや、うっかり全員に気に入られてしまい、働きやすく、食堂の飯も上手い、寮もボロいが新人は3人部屋で、ルームメイトも二人ともいい奴で
初めて楽しい…って いやいや、ボコり計画は?
仕事は重労働で体力を削られ夜遊びする体力は残らない。
どうやら適材適所で働き方を変えているらしい。
体力ない奴には軽作業、それぞれ得意分野を見極めて仕事を与えていた。
俺は、重労働。
工場長に、「そんなけ疲れたら夜遊び出来んだろ。」と言われた。
俺の事よく調べてやがる。
飯は旨くて、仲間は良い奴ら。
毎日、充実して、俺はすっかり腑抜けた。
同室の同僚。
達哉は、30歳、ハッキングで捕まった。
将は、28歳、盗み。
なんかうまく言えないが始めて会った日からウマがあった。
達哉は、パソコンオタクで自分の実力を試したくて、ハッキングも楽しくて仕方ないと言い、将も開けられない鍵なんぞ俺の辞書にない!と豪語する。
よく3人で飲みに行き、くだらない話で盛り上がった。
お互いの話もよく話、始めて俺の全てを肯定し、理解してくれる友達が出来た。
しかしそんな生活が1年すぎた頃、幸せにヒビが入った。
工場長が騙されて、工場が閉鎖の危機になったのだ。
工場長は、「大丈夫だ俺が何とかする!」といろんな所に金策に走っているが、日に日に痩せていく。
皆もここがなくなったら、行く所がないのがわかっているから何とかしたいが、何も出来なくて、そんな日々が続いた。
「なあ、俺達で何とかしないか?」
ある日、将が部屋で俺達に話し始める。
「お、奇遇だな、俺はすでに情報収集してるぜ」
達哉は、自前のパソコンなでる。
「俺もどうにかしたいが、出来る事はボコるくらいで…」
「それでいいんじゃね。」
「再起不能にしないと、他にも被害に遭ってる会社あるみたいだし、ほとんど泣き寝入りだ。首つったやつもいる。警察はうごいてないしな。」
「…やる!」
「よし、俺達3人なら出来る。と言いたい所だか、協力者がいる。今呼ぶ」
達哉がラインをすると、ドアがノックされて、事務長が入ってくる。
事務長は、58歳。18からこの工場で働いているベテラン従業員だ。
「あんた俺達の事嫌いだろ」
将が事務長に冷たい目をむける。
この工場の古参の従業員は半数いるが、一部の人は、俺らみたいな刑務所あがりの奴を働かせる事を反対している。
いつも、挨拶くらいしかしない。
「あんた達みたいなのは、確かに嫌いだ。でも工場長を助けたいんだ。」
事務長は、膝をつき俺達に頭を下げる。
「どうか力を貸してください。」
達哉は、俺達に目線をむける。
「俺は、すでにやると決めている…」
「もちろん!俺も…」
「待て、まだもうひとつ、話してない事がある。この話に乗ったなら、計画達成後、俺達はこの工場から消えなくてはいけない。」
「…そうだな、そうだよな。俺元々金ある程度稼いだら逃げ出すつもりだったし。やるなら死なないギリギリまで徹底的にやりたいし。多分久しぶりなんで手加減出来ないな。うん。俺は、奴らをボコしてそのまま消えるよ」
「…まじか、わかるけど…せっかく今お前らといて楽しくて仕方ないのに」
将は、うつむく。
「…お前らと毎日楽しかったよ。もし一人残っても、つまらん。それより、この3人でやりたい!」
「よし、決まりだな!」
事務長から、詳しい話を聞いて、3人で夜遊びしに行くふりしながら情報収集をし、1週間後に決行した。
達哉が詐欺グループのパソコンに侵入して全ての情報を盗み、最終的には情報を移したUSVを警察に届けた。
届け先は達哉が昔大変お世話になった信用できる刑事さん宛にしたそうだ。
「封筒見れば俺からだってわかるように秘密の暗号があるんだ、ふふ、佐々木さんが頭を抱える姿が目に浮かぶよ。きっと、「あいつまたやったのか!」ってね。あ~楽しみだなぁ」
達哉はそう言いながら楽しそうだ。
俺達は詐欺グループの事務所に乗り込んだ。
大きめのマスクと、帽子を深く被る。
将が、鍵を開け、俺が中にいた3人をボコし、達哉がガムテープで拘束する。
将が金庫から工場の契約書を盗み出した。
他にも、いくつか契約書を抜き取る。
「工場のだけなくなったら疑われるからな」
事前に達哉から指示されていた。
達哉は、奴らのパソコンにウイルスも流す。
一人のボコした奴から携帯を拝借して、他の2人の携帯は水槽がみえたのでそこに放り投げてバラバラに一軒目を出る。
その足で近くで待ってた事務長に盗んだ書類を預けた。
事務長は、俺達に深く頭を下げ、踵をかえす。
明日になったら工場長も、俺達がいない事に気づく。
じきに、俺達が何かした事にも気づくだろう。
事務長は、詐欺グループの捜査が入ったら、工場長に全て話、責任をとって引退するそうだ。
まあ、工場長に引き留められるだろうな。
「正直びっくりするくらい簡単な金庫で罠かと思ってドキドキしたわ、セキュリティも体したことなかったし、つまらん。」
外に出た将はあまりにもあっさりだったので、ブーブー文句を言う。
「まあまあ、これからだ」
次の詐欺グループの事務所。
俺がそこにいた5人をボコしていき、将が金庫を開け、達哉がさっきと同じ作業を繰り返す。
「ほどほどにしとき、まだあるんやから」
と、将に止められて、何とかギリギリ生きてますくらいにとどめた。
作業をおえて2件目の外に出て、3人バラバラの方向に歩き、集合場所の小さな公園に落ちあった。
俺は驚いていた。
「…始めてかも。」
「何が?」
「…将の声、聞こえた…」
「おいおい、お前耳聞こえんかったんか?」
「そうじゃなくて、いつもボコしてる時、誰か止めてたらしいんだけど、自分の世界に入ってて、止める声なんて全く聞こえないんだ。」
「なるほど、俺も集中してると、周りみえへん。捕まった時も、難しい鍵に苦戦しすぎて周り見えなくなってたし。」
「うまく言えないけど、この1年で、…俺ちょっとだけまともな人間になったかも知れない」
「お、よかったやないか。」
将が俺の背中をバンバン叩く。
「それなら俺達のこの1年、宝物だな。」
達哉がパソコンをカタカタさせながら、チラッとこっちを見る。
「…だな。」
俺も将の背中を叩きたかったが、手が返り血で汚い。
上げた手が宙に浮く。
「そういうときは、こうじゃ」
将が右手をあげ、肘をつき出す。
「そっか」
お互いの肘をぶつける。
「いって~!」
「いやいや、俺も入れてよ、てか、手洗えば?」
達哉も混じって3人で肘をぶつけた。
そのまま次の場所へ。
3件目は、ボスのヤクザ事務所。
ここからは、俺1人。
さすがに全員相手出来ないので、将が陽動作戦をしてくれる。
最初の携帯でわざとらしい感じで、「し、しゅうげきされ…うぁ」で、電話を切る。
事務所があわただしくなり、何台か車が出て行く。
「これで残りは6人」
襲撃された情報をわざと流したのだ。
入り口に2人。
二人とも一撃で倒す。
中に入って
3人を倒す。
そのまま、親分にも一撃。
椅子から倒れた顔面に追加で何発か入れる。
(昔ならあと3発は入れてたな)
しかし、今回は捕まる訳には行かない。
裏口に回るとそこから脱出。
将が開けておいてくれている。
達哉が作ってくれた逃走ルートにそって裏道を走った。
駅の近くで将と達哉と合流して、拳についた血を拭い、服を全部着替え違うキャップを被り荷物を受けとる。
二人も既に着替えている。
「…」
将が肘を出す。
いやこっちだろ、俺は拳を出す。
「…」
将と達哉はニコニコしながら拳をぶつける。
そのまま3人、違う方向へ歩き出す。
「…いって~」
数歩歩いた将が小さく呟いた声が
…俺達の最後だった。
*
(あれから何年たったかな?)
あの後、詐欺グループは捕まり、工場がつぶれた話も聞かない。
俺達が、指名手配された様子もない。
そもそも、俺は、逃亡中で偽名を使ってその日暮らしをしていた。
携帯も持ってない。
働いて貯めたお金は、既に全額引き落とし済みだ。
工場は、東北だったので、逃亡先は東京にした。
人混みに紛れるのが、一番だし、実家は岩手で都会に知り合いなんていない。
あの日、短期の仕事でたまたま茨城県にいた。
「ん、おい、あれなんだ?」
建設現場で誰かが発した一言。
近くにいた作業員が、上空を見上げて指を指す。
「え、なんかやばくないか?」
その指差した物体は、少しずつ大きくなる。
「ヤバいぞ、おい、皆伏せろ!!」
俺もあわてて地面に伏せた。
!!!!!
恐ろしいほどの衝撃に、地面が激しく揺れ、建設中の建物が倒壊。
おびただしい数の叫びごえ、悲鳴
何とか、命は助かったようだが、震えてうまく立てない。
辺りを見渡せば、建物が反対側に倒壊したのが命拾いした。
近くにいた他の作業員もほぼ無傷だが、皆その場から動けずにいた。
なぜなら、
(…怪獣!)
あの何かが落ちた方向に、謎の怪獣がみえたから。
その怪獣が火を吹き出し、あっという間に辺り一体が燃えて
「逃げろ!」
誰かの声で、皆何とか立ち上がり走り出す。
もうこうなると、人命救助なんていってられない。
自分の命が一番大事だ。
(怪獣って…ウル○ラマンかよ)
走りながらチラチラ後ろを確認していたが、しばらくして立ち止まる。
(…すげえ~、あいつらにも見せてやりたいなぁ)
二人の顔が浮かぶ。
周りはもう火の海。
逃げ場はない。
「これで終わりか~、意外な死にかただなぁ。」
覚悟を決めて怪獣を見上げる。
「なあ、お前ら強いのか?、どうせなら最後にぼこらせろよ!」
その時
(!!!)
さらに巨大な生物が怪獣と俺の間辺りに落ちてきて、また激しく地面が揺れ風圧で俺は吹き飛ばされた。
(!…………いっ…て~、でも助かった?)
火も消えている。
俺は何とか立ち上がろうとしたが、立てない。
どうやら足が折れてるようで変に曲がっていた。
(くそ!)
近くで怪獣と巨大生物の戦いが始まり、動けないおれは、何とか足を引きずり手で這って進み、近くの木の下に行く。
戦いの場所がさっきより東にずれたのか、奴らの姿は見えないが、相変わらず地響きがすごい。
「はぁ、はぁ、いてぇ…」
そこで、意識は途切れた。
(で、意識なくして倒れてた所にさらに奴が倒れこんできて、俺は潰された、と)
あのバカ巨人は、戦いの最中に力尽きて倒れついでに俺を潰してくれた。
〖すまない、潰してしまったようだ。さらにすまないが、わたしのかわりに戦かってくれないか?〗
(やる)
〖かわりになにか願いを、…え、即答?、やってくれるのか?〗
(あの怪獣ボコれるんだろ?、やる。むしろやりたい!!)
〖ボコれる…はい、では身を守る防具と想像で出せる武器をあたえよう。〗
(武器なんて、いらないけどまあいいか。それより音楽だな、音楽流したい)
〖おんがく…はぁ、…それが君の望みなら〗
そんな感じて、俺は生き返った。
気がつけば、どこかの街中に立っていて、背中には唯一の持ち物のリュック。
(リュック、建設現場においてきたやつ…、中身ちゃんとある。それより…)
そのまま身体中を確認し、屈伸をする。
どこも痛くないし、足は元通りになっている。
そして左手で、なぜがスマホを握っていれる。
元々スマホなんて、刑務所出てから持っていない。
電源を入れてみる。
すると、突然電話が、かかってきた。
画面には "将"
(へ?、将?)
おそるおそる通話ボタンを押す。
「…お前、誰だ?」
(この声!)
「将なのか?」
「なんやいきなりスマホの画面が光って、お前の名前が表示されて、勝手に動いて、勝手にかけてんねん、どないなっとるん?!おい、テレビ電話にしろ!」
画面の向こうに懐かしい顔が映った。
すると、また電話がかかってくる。
「ちょっと待って、また電話、って今度は達哉?!」
一回切って、"達哉"と表示された電話にも出てみる。
「…もしもし。」
怪しむ電話の声、達哉の声だ。
「達哉か?」
「うん、そうだよ、なんかすごい事がおきたよ、スマホが突然光ってさ」
「うん、さっき将にも同じ事言われた。」
「一体、何が、起こったの?」
「…そうだな、不思議現象かな」
(…あのやろう、勝手に俺の思考読んだな。とんだおせっかいやろうだ)
俺の本当の願い、将と達哉にもう一度会いたい。
(まさか、叶えてくれるとは…)
「とりあえず、三者通話で話そうぜ」
**
「よっしゃ~レベル4終了!!」
俺の前にレベル5と思われる怪獣が現れる。
(あいつら見てるかな?)
二人には事実をはなし、ここから出られなくなった俺の為に将は名古屋から、達哉は広島から食料とかテントを持って駆けつけてくれて、3人で会う事が出来た。
「はー、お前死んだん?、いや本当嘘みたいな話やな」
将が俺の身体中バンバン叩きながら「宇宙人に乗っ取られたんちゃうん、青い血流れへん?」身体中を確認している。
「とりあえず簡易テント、これ持ち運び便利なの買ってきたから、まあこれだけ混乱してたら、避難所でも大丈夫かもしれないけど念のため」
二人ともしばらく話して、戻っていった。
「また会えるだろ」
「俺達がくるんかい!、まあ、しゃーないな!、落ち着いたら電話しろよ」
それから週に一度くらいの三者通話は、しばらく続いた。
(初戦の時は、二人ともおお盛り上がりで3時間くらい話してたんだよな)
そこで気づいた。
不思議な事に、俺のスマホは充電が常に満タンで減らない?不思議スマホだ。
考えたら充電器もない。
さらに三人でいくら電話しても料金はかからない。
「元々、電話する相手なんていなかったから、3時間話してすげぇ電話料金だろうなぁ、って思ったら、この3人での電話料金かかっとらんのよ、また不思議現象や。」
「すごいな巨大生物!」
その頃には、俺も棲みかを見つけていた。
あのタワマンと、アパートだ。
最初タワマンの前に行ってみた。
鍵も持ってないのに、エントランスが開いた。
さらに先に進んでエレベーターにのり最上階に、いってみる。
(開くわけないか)
軽い気持ちでドアを開けたら、あっさり開いた。
(ええー!)
試しに他の部屋も全部試して見たら、最上階と7階の一部屋ずつが、開かない。
それ以外は、全部開いた。
(なんとなく、ここも不思議タワマンかな)
せっかくなので、最上階にしばらく滞在した。
が、飽きた。
家具も何もない、広すぎて落ち着かない。
次に近くにあるアパートに移動する。
ここも8部屋のうち開かないのは1部屋だけだったので、
そこから一番離れた部屋にはいった。
(ここも不思議アパート、狭くて落ち着くわ)
そして、来々軒。
(至れり尽くせりなのか?)
食と住さえあれば何とか生きていける。
後足らないのは、金だけか…。
(どうせなら永遠に金の減らない財布も欲しかったな。)
最初の頃は、炊き出しまで歩いて行っていたが、何せ近くではやってない。
5キロ先でやっていたのだが、次第に10キロ先になり、物理的に行けなくなった。
近くの避難所は、危険だからと移動してしまったのだ。
(金かからなくて助かってたのに…。あー、仕事もないから残金少ないんだよな~。)
最後にやってたあの仕事、時給良かったから、残念だ。
仕方無しに安い材料を、遠くのスーパーまで買いに行き、1日一食で何とかやり過ごしていた。
が、ある日。
「?!、…うわぁ~、めっちゃいい匂い…」
漂ってくる、醤油と油の匂いに、ふらふらと来々軒の扉前に来てしまった。
(いやいや、駄目だろ、入ったら1000円は飛ぶ!)
せっかくだから、思い切り匂いだけたっぷり嗅いで、帰ろ。
クンクンしてると、
「へい、らっしゃい!待ってたよ、お客さん!さぁどうぞ!」
扉が開いて、中から中年の親父が出てきて手招きされた。
「あ、いや…」
言葉とは裏腹に足がかってに店に入ってしまった。
「まあ、座って!。と、いってもラーメンしか今出来ないんだけど、それでもいいかい?」
「あ、でも、俺金が…」
「後でいいよ、とりあえず食べていきな!。おい、ラーメン一丁!」
「あれ、お客さん?、珍しい。ちょっと待っててね。」
2階から若い店員が降りてきて、厨房に立った。
しばらくすると、
「はい、お待ちどう。野菜たっぷり醤油ラーメン、召し上がれ」
温かいラーメンが目の前に置かれ、「グー」腹が鳴る。
「いただきます」
スープをひとすすり。
(うま!!)
無我夢中で食べ進めあっという間に完食した。
「ごちそうさま。いくらですか」
財布を出して中をみる。
中身は最後の一万円が一枚と少ない小銭しか入っていない。
「いいよ、今日は。また来てよ!」
親父さんは受け取ってくれず、頭だけ下げて店をでる。
(旨かった…、ヤバい、こんなに旨いもの一度食べたら…)
…次はチャーハン食べたくなるだろ…
仕方ないので、少し遠いところでも何とか仕事を始めて、週一で来々軒に通い始めた。
今じゃ、1日2食、毎日来々軒だ。
(まさか、あいつらが、他のメンバーだとは。)
店員は毎日会っていたからなんとなくそうじゃないかと思っていた。
なぜなら戦いの次の日、いつも疲れた顔してるから。
(一時期、親父さんもそうなんじゃないかと思ってたが、やはり違ったな、ありえん。)
一人は、同じアパートに住んでるサラリーマン。
奴は、朝仕事に行き、夜まで帰ってこないので分かりやすくて助かった。
あえて顔合わせないようにしてたので、始めて来々軒で遭遇した。
向こうは、同じアパートに住んでるなんて、思ってもいないだろう。
俺は寝にかえるだけだし、静かなもんだ。
もう一人は、タワマンの15階の住人。
こいつは以前タワマン生活してた時にリサーチ済み。
普通に生活してたからすぐにリサーチできた。
7階は、まったく部屋から出て来なかったので、今日、あんなひょろい奴なので驚いた。
(まあ、あいつがイエローだな、どうりで前線にはこない訳だ)
今の所、イエロー以外は戦いに来ている。
レベル5の怪人を、目の前にして皆さすがに躊躇している。
レベル5の怪人は、自分達の5倍くらいデカイ!
(始めてみた奴らは、もっとでかかったなぁ。はぁ、早くやりてぇー)
怪人が口を大きく開けた
「やば!!」
とっさに左に避けながら転がる。
怪人の口から、何かが、飛んでいった。
「まさか、ビーム的な?!」
さっきまでいた所は大きくえぐれていて、巨大なクレーターが出来ていた。
(くそ、これじゃ接近出来ない、接近しないとボコれない!)
他のメンバーも、避けるのに手一杯で、攻撃出来ていない。
(こういう時こそ、遠距離攻撃、イエローの出番だろ!)
何とかしのいでいるが、そろそろ限界だ。
今じゃ、ブルー、グリーン、ブラックは、後方に下がり
武器を弓と、ボウガン、槍、ブーメラン、拳銃から、機関銃、飛び道具を形成して奴に浴びせ始めた。
(お、いいね!、がんばれ皆さん、最後のとどめは俺が…って、うわぁ!!)
怪人のしっぽが激しく回されて、俺に直撃!、挙げ句吹き飛ばされて、ブラックに直撃。
ブラックのボウガンが、ぶっ飛びグリーンに直撃し、グリーンの機関銃が、乱れ飛び、ブルーを襲って、逃げるブルー。
(いてー、なんか最悪じゃん…、さてどうするか…)
ブラックの上でどうしようが考えていたら、先にブラックが起き上がり、俺に手を差し出してきた。
「…」
会話は出来ないから無言だ。
手を掴んで立ち上がる。
向こうでもグリーンがブルーにペコペコ謝り倒している。
(さて、本当どうしたもんか…)
流石に、打つ手なし!俺達はここまでか?
そこへ、黄色い光が俺達の間に現れる。
かなり遅れて来たイエローがやけくそのように叫んだ。
「豚骨ラーメン!!!」
全員の脳裏に"豚骨ラーメン"の白いスープと、細い麺、青ネギ、紅しょうが…
全員のイメージが一つになり、思いが一つになった。
(豚骨ラーメン!食べたい!!)
その瞬間
俺の身体の中から、凄い力が産まれ赤い光りとなって放たれた。
*
あれから1年が過ぎた。
あれから俺達の電話は、二者通話になっている。
あの5色の光が東の空に輝いた後、すぐにあいつに電話しようとしたが、コールさえしない。
仕方なく達哉に電話したが、達哉も同じ状態だった。
とりあえず、一度行って見ようと、千葉まで行った。
あいつが寝床にしていたアパートの中に入る。
ここも"不思議アパート"らしく俺達がいつ来ても鍵は自由に開く。
荷物はあるが、姿は見えない。
俺はちょうど暇だったので2.3日滞在、達哉は広島に帰って行った。
それから月1くらいでアパートに様子をみにきて、話しに聞いてた来々軒にも寄る。
やはりあの日以来、来てないらしい。
何度か通ううちに来々軒の常連になり、仲良くなって最近ここの店主がグリーンだったと知った。
おまけに、ブラックの奥さんも紹介されて、尚且つ同じアパートに住んでて驚いた。
俺も、レッドの友達だと話して、あの最後の日、何があったか知った。
達哉も呼んで、来々軒で店主の奥さん夏実さんと、ブラックの奥さんさくらさんと俺達で、情報交換という名の飲み会をした。
最初はいろいろ驚いたが、実際に親父さんが冷蔵庫の前で消える所を目の前で見てしまうと、信じるしかない。
「来々軒は希望なのよ」
二人そろってビール片手に、頼もしい奥さん達だ。
俺は、あいつが帰ってくるまであの部屋にいる事に決めた。
「うふふ、不思議アパートにお隣さんが、よろしくね、将君。」
ほろ酔いのさくらさん。
「あそこ、凄いわよ~、電気なんでつくかわからないし、水道なんででるかわからない、家賃もどこに払ってよいやら。うふふ」
「そりゃ助かる。もうあっち引き払って、移住しよ」
「そうしなさい、家賃もったいないって」
「いいなぁ、俺もそうしたいけど…」
達哉は、何年か前から妻がいる。
籍は入れてないが、高校から付き合ってた彼女が両親の反対を押しきって、達哉を追いかけて広島まで来たのだ。
何度も説得したが、彼女は諦めず、達哉も折れた。
一度だけ彼女のご両親と話し合いをしようと訪ねたが、
彼女の残りの荷物を渡され、塩をまかれて追い返された。
「二度と家には来ないでくれ。娘とも縁を切る。」
親父さんに冷たく言われ、その後ろでお袋さんは泣いていたらしい。
達哉と彼女は頭だけ下げて広島に戻った。
まあ、いろいろあったが、今二人は子供も産まれて幸せに暮らしている。
「いいなぁ、嫁さん。俺も欲しい~。」
俺はすでに酔いつぶれて畳に寝転がってしまった。
「はぁ、はよ帰ってこいや~!」
「本当それ、遅いぞ~バカ~!」
夏実さんが、思い切り叫ぶ。
「近所迷惑気にしないとこが最高よね、いつまで待たせるきだ~!」
さくらさんいつの間にか焼酎に変わって、ってロックで飲んでる。
夏実さんは、日本酒だし…、この二人ヤバイんちゃうか?。
達哉は、すでにギブアップで机に突っ伏して眠っている。
(…はぁ、はよ帰ってこいよ~、俺の肝臓持たないよー)




