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虫から始める魔王道  作者: 稲生景


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21話 カブトvs女王蟻

「ギシャアアァァァァァァッ!」


 アントクイーンの咆哮が洞窟に轟いた。その瞬間、私たちは一斉に攻撃を開始した!


「喰らえぇッ!」


 私は真っ先に突撃する。鋭く踏み込んで角を構えた、が――


「ギシャアッ!」

「ぐっ……があああっ!?」


 女王の前脚が鋭く振るわれ、私はもろに弾き飛ばされた! 背中から壁に激突し、肺から息が抜ける!


「殿ぉ!? このっ、よくも殿をォォッ!」


 ガタクが叫び、怒りのままに跳びかかる!


「《鎌鼬》ッ!」


 鋭い風の刃が女王の甲殻に直撃――しかし、


「ギシャアァ!」


 女王はわずかにのけぞっただけ。まるで効いていない!


「ぬうっ!」


 ガタクが右前脚の一撃をギリギリで回避――だが、左の前脚がさらに襲いかかる!


「ぐわあああああッ!」


 鋭い一撃に吹き飛ばされ、ガタクは地面に叩きつけられた!

 私はすかさず《鑑定》を発動し、女王のステータスを確認する――!









【ステータス】

 名前:不明

 種族:アントクイーン

 レベル:39/40

 ランク:C+

 称号:統率者

 属性:地

 スキル:怪力鋏

 エクストラスキル:昆虫の重鎧(ヘヴィアーマー)、酸の息吹(アシッドブレス)








 ――強い。だが、勝てない相手ではない。


「パピリオ、テザー! ミミズさんたちの救出を優先しろ!」


(分かりました!)

(俺、わかった!)


 パピリオが捕らえられていたミミズさんたちに糸を巻き付け、テザーがそれを力任せに引っ張る!


(ふんッ!)

「うおおっ!?」

「ぬおおおおっ!?」


 勢いよく引き寄せられ、ミミズさんたちは女王の近くから一気に引き離された!


(非常食さん、大丈夫ですか?)

「うむ、だが“非常食”扱いはやめろと何度言えば分かるのじゃ!」


「非常食?」と、ドワーフが首をかしげる。


「気にするな! おい、テザー! この糸、切ってくれんか!」

(俺、しかたなく分かった、言う)

「“しかたなく”って、どういうことじゃあッ!」


 ミミズさんたちは無事だ。次は――アントクイーンだ。


「ギシャアアァァァァァッ!」


「ガタク! 関節を狙え!」

「了解で御座る!」


 ガタクが跳躍し、女王の真上に回り込む!


「《鎌鼬》ッ!」


 風の刃が前脚の関節を正確に斬り裂く!


「ギシャアアァァァァァ!」


「今で御座る、《斬撃》!」


 もがくアントクイーンに、ガタクが鋭い斬撃を浴びせる! 前脚の関節に深々とヒット!


「ギシャアッ!」


 だが、それでも脚は切断されない。関節部が鉄のように硬い――!


 女王の左前脚が大きく振るわれ、ガタクを再び吹き飛ばす!


「ぐっ……おおおおおッ!?」

(くらえッ! 《斬撃》!)


 ソイヤーが間髪入れず、同じ関節を狙って突進! だが、それでも届かない!


 その瞬間、吹き飛ばされたはずのガタクが戻ってくる!


「ソイヤー! 同時に行くで御座る!」


(はい! 師匠!)


 二人が同時に跳躍――


『《《斬撃》》ッ!』


 風を裂く双撃が、右前脚の関節を斬り裂く!


「ギ、ギシャアアァァァァァァッ!?」


 ついに、右前脚が切断された! 苦痛に悶えるアントクイーン!


「今だあああッ!」

「ギシャアアァァッ!?」


 私は全力で突進し、角を構えてアントクイーンの腹部へ突き刺した!


 角が厚い外殻を貫き、女王の身体が激しく痙攣する!


「ギ、ギシ……ギボロォォォォォォッ!!」


 女王の口から、突然、粘性の液体が噴き出した!


 着弾地点には――スティンガー!


「スティンガーッ! 避けろッ!」

(うわぁぁッ!?)


 スティンガーが寸前で飛び退く! 地面に命中した液体が、ジュウゥ……と音を立てて溶け崩れる!


 ――これは、さっきステータスで確認した《酸の息吹》だ!


「ギボロォォォォォォ!」


 二発目が来る! 私たちは間一髪で飛び退き、回避した!


「ギチチチィィィ……!」


 そこへ――後方から、アントコマンダーたちが追い付いてきた!


「ギチチチィィィ!!」


 アントコマンダーの咆哮と共に、無数のアントたちがこちらへ殺到してくる!


「邪魔だぁッ!!」

「ギチチチィッ!?」


 私は咄嗟に突進し、前方のアントたちをまとめて吹き飛ばす!


 甲殻が砕け、アントたちの身体が宙を舞う。


「ギボオォォォォッ!!」


 そこへ頭上から、アントクイーンの《酸の息吹》が降り注いだ――!


「くっ……!」

「ギチィァァァ!?」


 私は紙一重で飛び退いた。

 だが、間に合わなかったアントたちは、女王の攻撃に巻き込まれ――断末魔の悲鳴とともに、溶解していく!


「ギチチチィッ!!」


 アントコマンダーが、私めがけて突進してくる!


「どけぇえッ!!」

「ギチチィィッ!?」


 私はクロカブトの角を思いきり振り抜き、アントコマンダーをアントクイーンの方へと弾き飛ばした!


「ギボロォォォォォッ!!」


 クイーンが再び《酸の息吹》を吐き放つ――!


「ギチィアアアアアッ!?」


 哀れ、直撃を受けたアントコマンダーは悲鳴を上げながら、ドロドロと溶け落ちていった。

 なおも止まらぬ酸の奔流が、こちらに迫る!


「うおおおおっ!? 降ってくるぞ!?」

「驚いてる暇はないぞ! 逃げるのじゃ!!」

(きゃああああっ!?)

(オレ、逃げる、言う!)


 ミミズさんたちが、全速力で酸を避けながら走る!


「ギボロォォォ……」


 アントクイーンが、再びミミズさんたちに狙いを定めた――!


「させるかあああっ!!」


 私は咆哮を上げながら、クロカブトを駆ってクイーンの腹部へ突進!


「ギボロォォォォォッ!?」


 直撃を受けたアントクイーンは体勢を崩し、誤って別方向に《酸の息吹》をぶちまける!


「ギチィアアアアアッ!?」


 巻き添えを食らったアントたちが悲鳴を上げながら溶け落ちていく――!


「ソイヤーッ! もう一撃いくでござるよ!」

(了解です!)


 ガタクとソイヤーが息を合わせ、空中からアントクイーンに襲いかかる!


『《《斬撃》》――!!』

「ギシャアアァァァァァッ!!?」


 二人の斬撃がクイーンの左前脚を斬り裂いた!

 だが――切断には至らない!


「ギシャアアアアアアアアアアアアッ!!」


 怒り狂ったアントクイーンが、地団太を踏み鳴らす!

 凄まじい衝撃に、私たちはまとめて吹き飛ばされた!


「うわあああああっ!?」


 地面に叩きつけられた私の体が軋む。

 だが、視線を上げたその瞬間――最悪の光景が目に飛び込んできた。


「ギボロォォォ……!」


 アントクイーンが口を開き、こちらに《酸の息吹》を構えている!

 この体勢じゃ、避けきれない――!


 その時だった。クイーンの背後に“影”が現れる!


「ジィィィィィィィィィ!!」


 壁に埋まっていたオ・ケラが、突如跳び出した!

 その前脚が閃光を帯び、クイーンの背中へと――一撃!!


 直撃と同時に、爆発が起きる!


「ギシャアアアアアアアアッ!?」


 背後からの衝撃に、アントクイーンが苦悶の悲鳴を上げた!


「ジィィィィィィッ!!」


 オ・ケラが咆哮する!


 ……あの爆発、どうやらオ・ケラの新たなスキルによるもののようだ。

 私と戦った時より、確実に強くなっている……!


「ギ、ギシャアア……」


 アントクイーンの身体が、ぐらりと傾いた。……限界か?


「よし、今だ! みんな畳みかけるぞ!!」


 私はトドメの一撃を放とうと、前に出た――だが!


「ギ……ギシャアアァァァァ!!」

「な、なんだ!?」


 クイーンが絶叫した瞬間――その身体が発光を始めた!


 一体、何が起きて――!?


「気をつけろッ! アントクイーンが進化するぞ!!」

「進化だって!?」


 ミミズさんの叫びが響く!


 光が収まったとき、そこに現れたのは――全長四メートルを超える“怪物”。


 全身を覆う黒い外殻は、より分厚く、禍々しく……

 そして、失ったはずの前脚が――再生している……!


 私は《鑑定》を発動し、その正体を確認する。









 ステータス

 名前:無し

 種族:アントエンプレス

 レベル:1 / 45

 ランク:B-

 称号:支配者

 属性:地

 スキル:怪力鋏

 エクストラスキル:昆虫の重鎧

 ユニークスキル:強酸の息吹









 ランクが跳ね上がり、ユニークスキルまで獲得している……!

 これが、Bランク魔物の力――初めての対峙になる。

 勝てるかどうかは分からない。


 それでも――やるしかない!!


「ギシャアアアアアアアアアアッ!!」


 アントエンプレスが咆哮を上げると同時に、私は突撃した!


「行くぞぉぉぉおおおッ!!」

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